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2010年10月26日

●真夜中に聴きたい50曲 (21)

(21) Robert Plant&Alison KraussKilling the Blues」(ロバート・プラント&アリソン・クラウス:キリング・ザ・ブルース)

 いや、まったくもって70年代にヒットしたロリー・サリー(Rowland Salley:確かマリア・マルダーと一時期結婚していたはず)の名曲「Killing the Blues」を、ZEPのロバート・プラント、そしてカントリーの新女王、アリソン・クラウスのデュエットで聴けるとは思いもしませんでした。しかも、いいんです、このデュエットが。ハイトーンは代わらないもののちょっとしゃがれ声になったプラントの渋い歌唱と、どこまでも美しく、しかも抑制されたアリソン・クラウスの声とがよくマッチし、独特の穏やかな雰囲気を醸し出しています。個人的には、「泣ける」と言ってよいほど素敵な音楽です。

 ロバート・プラントとアリソン・クラウスによるコラボレーション・アルバム「RAISING SAND」は、2007年に発売された時に、日本でもかなり話題になりました。とは言え、このアルバムに注目した人の大半は、「あの」「ZEPの」…という冠詞付きで、ロバート・プラントがこんな「ゆるい」アルバムを出した…ということに注目したのではないかと思います。まあ、日本ではアリソン・クラウスという女性シンガー(26回ものグラミー受賞歴があるのに!)を知らない人も多いだろうし、それに較べてZEPのロバート・プラントはあまりに有名ですし、プラントのファンというよりもZEPのファンが非常に多いことは言うまでもありません。一方で、アリソン・クラウスのファンにとっては、彼女が本来持っているテイストの延長上にあるサウンドとして、「RAISING SAND」というアルバムを抵抗なく受け入れたと思います。事実、私がそうでした。

 実は、私はアリソン・クラウスが大好きです。先に「カントリーの新女王」などと書きましたが、実際にはもっと幅の広い音楽的バックボーンを持つシンガーです。むろん彼女は、カントリー、ブルーグラスをコンテンポラリーなアレンジで歌い、従来のカントリーファンの裾野をさらに広げたとして高く評価されています。美人で、美声で、フィドルの名手でもあり、まさに大衆に受ける要素を持った現代の歌姫です。一方で彼女は、カントリーという限られたジャンルに留まることなく、ルーツ・ミュジック全般の要素を背景に、とりわけカントリーミュージックにロックやR&Bのビートを取り入れることで、大きな支持を得てきました。このアリソン・クラウスの「ロック・テイスト」は、「RAISING SAND」というアルバム全体を聴けばよくわかります。さらに、Alison Krauss & Union Station名義の2002年のアルバム「Live」を聞けば、このロック的な部分が、かなり先鋭的に出ていることがわかるでしょう。

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