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2010年10月29日

●真夜中に聴きたい50曲 (23)

(23)Robert PlantFalling in Love Again」(ロバート・プラント:フォーリン・ラブ・アゲイン)

 ロバート・プラントは、前々回の(21)でもアリソン・クラウスとのデュエットアルバム「RAISING SAND」で取り上げたじゃないか…と言われそうですが、前々回はアリソン・クラウスの方を書きたかったので、今回はロバート・プラントについて書いてみたいと思います。
 「RAISING SAND」でグラミーを取ったプラントですが、その後も着々とルーツ・ミュージック系の独自路線への歩みを強め、今年(2010年)にリリースしたのが、アルバム「Band of Joy」です。このアルバムを本人と共にプロデュースしたのは、あのバディ・ミラー。オルタナ・カントリーというジャンルでは、いまや絶対的な実力を持つ看板ミュージシャンでもあります。むろん、アルバム中ではギターも弾いています。

 この「Band of Joy」というアルバムを聴くと、プラントは、今やアメリカンミュージックの魂とも言えるカントリー、フォーク、そしてソウルを完全に自家薬籠中の物とし、実に伸び伸びと自然体で歌っています。「Band of Joy」ではしっかりと「ロック」してはいますが、ZEP時代のハードロックとは決別した…と言ってもよいでしょう。
 アルバムはほとんどがカバー曲です。どの曲も素晴らしいけど、中でも個人的に気に入ったのは今回紹介する曲「Falling in Love Again」です。

 これまでに紹介した曲、ミュージシャンを見ればわかるとおり、私はアメリカン・ルーツ・ミュージック系のロックが大好きです。そしてアメリカンロックのルーツとしては、やはり主にブルース、カントリー、ヒルビリー、フォーク系といった音楽に目を向けてきました。中でも、グラム・パーソンズが先鞭を付けたカントリー系のロックに、特に注目してきました。しかし、今回紹介するプラントが歌う「Falling in Love Again」や、以前紹介したパティ・グリフィンが歌う「Up to the Mountain」などを聞くにつれて、アメリカン・ルーツ・ミュージックのもう1つの大きな要素である「ソウル・ミュージック」に目を向けるようになりました。

 「Falling in Love Again」はソウルグループ「The Kelly Brothers」が1966年にレコーディングした曲。まさに、クラシック・ソウルです。The Kelly Brothersが歌っている原曲をYoutubeで見つけて(http://www.youtube.com/watch?v=kN8o2e6l9FQ)聞いてみましたが、実にいい曲。そしてロバート・プラントの歌も、ソウルフルなテイストでは、原曲に負けていません。ハイキーなボイスと独特の軽妙な歌唱は、まるで黒人が歌う本物のソウルです。いや、参りました。長年に渡る音楽界への貢献が認められて英王室からナイトに叙任されたイングランド生まれのロバート・プラントは、今やすっかりアメリカ人になってしまったようです。

 それにしても、このアルバムをプロデュースしたバディ・ミラーもすごい。アルバム全体の雰囲気は、「RAISING SAND」よりも好きです。ロバートプラントはアルバムタイトルと同じBand of Joyというグループでライブツアーをやっており、バディ・ミラーがギターを弾き、パティ・グリフィンも参加しているとのことですから、ぜひ見に行きたいものです。

 しかし、ロバート・プラントがこうなってくると、もうジミー・ペイジと組んでZEPをやる気はないかもしれませんね。プラントはもともと、ZEP時代から実はフォーキーな曲やカントリーっぽい歌が好きだったと、何かで読んだことがあります。また、Band of Joyというのは、プラントがレッド・ツェッペリン結成前の1966年にジョン・ボーナムらと組んだバンドの名前です。プラントは、60歳を過ぎて自分の原点に帰りつつあるのかもしれません。

2010年10月27日

●真夜中に聴きたい50曲 (22)

(22) Glen CampbellWichita Lineman」(グレン・キャンベル:ウィチタ・ラインマン)

 グレン・キャンベルが歌う「ウィチタ・ラインマン」という曲を初めて聞いたのは、ちょうど中学生になって深夜放送を聴き始めた頃。ラジオから流れてくるイントロ部の独特の哀愁を帯びたメロディ、転調をうまく使ったちょっとドラマチックな曲の展開…、まあ言葉で書くとうまく説明できないのですが、要するにある種「日本人好み」のメロディラインにすっかりやられてしまい、いつも口ずさんでいました。
 グレン・キャンベルという歌手が特に好きなわけではなく(別に嫌いでもないけど)、実はまともにアルバムを聞いたことがありません。考えてみれば、グレン・キャンベルの歌で、この曲以外に知っているのは「恋はフェニックス」ぐらい。
 第一、グレン・キャンベルは昔からレコード店では「カントリー」の棚にある歌手なのに、全然カントリーっぽくない不思議な歌手。後から知ったのですが、アーカンソー生まれの彼は、プロを目指してロサンジェルスに出てきて最初はスタジオミュージシャンとして働き、一時期はビーチ・ボーイズでブライアン・ウィルソンの代役を務めていたらしい。その後ソロデビューして、1967年には「恋はフェニックス」でグラミー賞の最優秀男性歌手部門を含む2部門、「ジェントル・オン・マイ・マインド」で最優秀カントリー男性歌手部門など2部門を受賞、翌1968年には彼のレコードがグラミー賞「最優秀録音賞」受賞、そして1969年には「ウィチタ・ラインマン」が全米3位の大ヒットとなり、一躍スターになりました。でも、60年代末から70年代初めにかけての大スターでもあり、現在はカントリーの殿堂入りをしているほどの人なのに、ある意味で「特徴がない、印象が薄い」歌手でもあります。
 一方で、この「ウィチタ・ラインマン」や「恋はフェニックス」を作ったジミー・ウエッブ(Jimmy Webb)は、私の世代にはけっこう馴染みのある人。60年代から70年代にかけてサイモン&ガーファンクルやフィフス・ディメンションに曲を提供していたアメリカン・ポッポス界の名ソングライターです。

 「ウィチタ・ラインマン」のラインマンとは、電話線の保守・管理をする人。歌の内容は、中西部のウィチタ(おそらくカンザス州のウィチタのことだと思います)の郊外の荒涼とした土地をクルマを走らせながら休みもなく毎日仕事に明け暮れ、いつもそんな自分の話を聞いてくれる恋人がいればいいなぁと思っている…というちょっと物悲しい話。そんな歌詞の内容と曲調、そしてグレン・キャンベルの淡々とした歌唱がよくマッチしています。とても「アメリカっぽい」曲でもあります。

 この「ウィチタ・ラインマン」という曲は、私にとっては何だか、音の悪い真空管式のAMラジオで毎晩必死に深夜放送を聴き、洋楽というものに初めて触れた古い昔を思い出す、とても懐かしい曲なんです。私がまだ、成績優秀な「いい子」だった時代です(笑)。高校に入ってからは、しっかり落ちこぼれ、その後ヤクザな人生を歩むことになりましたから…
 いずれにしても、「ウィチタ・ラインマン」は大好きな曲です。いつも持ち歩いているWalkmanには、数百枚のアルバムが入っていますが、グレン・キャンベルの歌はこの「ウィチタ・ラインマン」1曲だけ。でも時々夜中に聴いています。

2010年10月26日

●真夜中に聴きたい50曲 (21)

(21) Robert Plant&Alison KraussKilling the Blues」(ロバート・プラント&アリソン・クラウス:キリング・ザ・ブルース)

 いや、まったくもって70年代にヒットしたロリー・サリー(Rowland Salley:確かマリア・マルダーと一時期結婚していたはず)の名曲「Killing the Blues」を、ZEPのロバート・プラント、そしてカントリーの新女王、アリソン・クラウスのデュエットで聴けるとは思いもしませんでした。しかも、いいんです、このデュエットが。ハイトーンは代わらないもののちょっとしゃがれ声になったプラントの渋い歌唱と、どこまでも美しく、しかも抑制されたアリソン・クラウスの声とがよくマッチし、独特の穏やかな雰囲気を醸し出しています。個人的には、「泣ける」と言ってよいほど素敵な音楽です。

 ロバート・プラントとアリソン・クラウスによるコラボレーション・アルバム「RAISING SAND」は、2007年に発売された時に、日本でもかなり話題になりました。とは言え、このアルバムに注目した人の大半は、「あの」「ZEPの」…という冠詞付きで、ロバート・プラントがこんな「ゆるい」アルバムを出した…ということに注目したのではないかと思います。まあ、日本ではアリソン・クラウスという女性シンガー(26回ものグラミー受賞歴があるのに!)を知らない人も多いだろうし、それに較べてZEPのロバート・プラントはあまりに有名ですし、プラントのファンというよりもZEPのファンが非常に多いことは言うまでもありません。一方で、アリソン・クラウスのファンにとっては、彼女が本来持っているテイストの延長上にあるサウンドとして、「RAISING SAND」というアルバムを抵抗なく受け入れたと思います。事実、私がそうでした。

 実は、私はアリソン・クラウスが大好きです。先に「カントリーの新女王」などと書きましたが、実際にはもっと幅の広い音楽的バックボーンを持つシンガーです。むろん彼女は、カントリー、ブルーグラスをコンテンポラリーなアレンジで歌い、従来のカントリーファンの裾野をさらに広げたとして高く評価されています。美人で、美声で、フィドルの名手でもあり、まさに大衆に受ける要素を持った現代の歌姫です。一方で彼女は、カントリーという限られたジャンルに留まることなく、ルーツ・ミュジック全般の要素を背景に、とりわけカントリーミュージックにロックやR&Bのビートを取り入れることで、大きな支持を得てきました。このアリソン・クラウスの「ロック・テイスト」は、「RAISING SAND」というアルバム全体を聴けばよくわかります。さらに、Alison Krauss & Union Station名義の2002年のアルバム「Live」を聞けば、このロック的な部分が、かなり先鋭的に出ていることがわかるでしょう。

2010年10月25日

●真夜中に聴きたい50曲 (20)

(20)Patty GriffinUp to the Mountain(MLK Song)」(パティ・グリフィン:Up to the Mountain)

 パティ・グリフィンは、最近は多くのシンガーにカバーされ、グラミーにもノミネートされるなど、アメリカでは高い評価を得ている実力派の女性シンガーです。私が好きな、エミルー・ハリスやルシンダ・ウィリアムスなどと並んでオルタナ・カントリージャンルのシンガーとして知られていますが、アコースティックな曲が多いのでフォーク系シンガーと思っている人も多いかもしれません。ジャンルなんてどうでもいいのですが、まあ広義の「ルーツ・ミュージック系」に分類すれば間違いのないところです。第一、彼女のアルバムは未だに日本版が出ていないはずで、これほどの実力派シンガーにも関わらず日本ではあまり知られていません。

 パティ・グリフィンは1964年生まれです。年齢から見ればかなり古くから活躍していてもよさそうですが、音楽シーンに登場したのは、事実上90年代半ば以降です。ファーストアルバム「Living With Ghosts」の発売は1996年ですから、これはもうかなり遅咲きのシンガーですね。私は、1999年に発売されたJulie Millerのアルバム「Broken Things」や2000年に発売されたEmmylou Harrisの「Red Dirt Girl」のコーラスに参加しているということで名前を知りましたが、実際に彼女のアルバムを聞いたのはさらに後の話で、実は2004年の「Impossible Dream」が最初です。その後、「Living With Ghosts」も購入して、とりあえず彼女の動向に注目していました。

 そんな実力派の彼女が、2007年に出したアルバム「Children Running Through」は、聴いて衝撃を受けました。個人的に今世紀に入って新しく聴いた数百枚のアルバムの中でも、おそらく十指に入る素晴らしいサウンドに溢れた完成度の高いアルバムだったからです。

 今回紹介するのは、その「Children Running Through」に収められている「Up to the Mountain」という曲です。この曲は、タイトルに「MLK Song」というカッコ書きがあります。そうです、あのマルチン・ルーサー・キング(Martin Luther King, Jr)が1968年の暗殺直前にメンフィスのメイソン・テンプルで行った演説の中の「I've Been to the Mountaintop(私は山頂に達した)」という言葉を題材にした曲なのです。
 アメリカン・ルーツ・ミュージックに根ざした、イアン・マクレガンのピアノで始まるシンプルで深みのあるサウンド、そしてまるで「祈る」ような彼女の歌声は、曲の題材もあって何だか黒人シンガーが歌うソウルのようにも聞こえてきます。真夜中にヘッドフォンで大音量で聴いていると、歌の世界に完全に引き込まれてしまい、今自分が何をしているのか、自分の存在そのものが無になるような状態に陥ってしまう…そんな「歌力」を秘めた素晴らしい曲です。

 この「Up to the Mountain」だけでなく、「Children Running Through」というアルバムは、パティ・グリフィンのずば抜けた歌唱力、表現力を味わえるだけでなく、ロック、カントリー、フォーク、ソウルなどのジャンルを越えたアメリカン・ルーツ・ミュージックの本質のようなものが溢れており、この種の音楽が好きな人なら必聴とも言えるものに仕上がっています。先に触れたピアノのイアン・マクレガン(Ian McLagan)を始め、参加しているミュージシャンも素晴らしく、「Trapeze」という曲ではボーカルでエミルー・ハリスが参加しています。

2010年10月22日

●GF1+Pentaxレンズ

 PK-m4/3マウントアダプタを使って、GF1+Pentaxレンズの組み合わせで遊んでいます。

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 上の写真は、M50mm F1.4をつけた状態。Pentaxはフランジバックが長いので、当然アダプタも厚めになります。このアダプタにM50mm F1.4をつけるとさすがにバランスはよくありません。しかし、けっこうキレのある画像を撮ることができます。撮影画像を載せておきます。

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2010年10月11日

●いつのまにかGF1が2台に…

 中途半端なフォーサーズにもミラーレスにも特に興味もなく、ここまで個人的には手を出さずに来ましたが、この夏になってパンケーキキットで4万円ちょっととあまりに激安化したGF1を購入してみて、けっこうハマっています。
 何よりも、背面のダイヤルを使った露出補正、そしてfnキーに割り当てた暗部補正を瞬時にコントロールできること。さらに、背面ダイヤルでプログラムシフトを変更できるので、基本的にPモードだけで8割方撮影できます。後2割はAモードです。日常の撮影は、どんなシチュエーションでもよく写る20㎜ F1.71本で十分。付けっ放しで裸でカバンに入れておけるので、快適にスナップできます。モデルチェンジ末期の製品とは言え、非常に使いやすい完成度の高いカメラだと認識を新たにしました。
 パンケーキでスナップを撮るだけで終わればよかったのですが、手持ちのレンズで遊んでみたくて、PK-m4/3マウントアダプタを購入しました。これはPentaxマウント用アダプタですから、50mm F1.4やF1.7、135㎜ F3.5などを付けて遊んでいます。さらに先日、CY-m4/3というコンタックスマウント用アダプタを発注しました。まだ手許に届いていませんが、これは手持ちのTessar45mm F2.8を使おうと思ったから。この有名なパンケーキ、もともとはYASHICA FX-3というボディについたままで友人から譲り受けたもの。あまりGF1につけた話を聞かないし、けっこうサマになりそうだとも思い、マウントアダプタを発注した次第です。
 さて、GF1話はまだ続きがあります。最近では、取材や商品撮影にも手軽なGF1をよく使うようになり、そうなるととりあえず標準ズームの14-45mm F3.5-5.6も買っておいた方が便利だと考えました。でもこのレンズ、安いとは言え25000円ぐらいします。そう思っていたら標準レンズ付きキットが45000円程度で買えるじゃないですか。これを買えば、予備のボディが2万円で手に入ることになります。…というわけでGF1の標準レンズ付きキットを購入してしまい、その結果GF1ボディが2台になりました。後は、仕事でさらに活用するためにLEICA DG MACRO45mm/F2.8を購入予定です。