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2010年10月27日

●真夜中に聴きたい50曲 (22)

(22) Glen CampbellWichita Lineman」(グレン・キャンベル:ウィチタ・ラインマン)

 グレン・キャンベルが歌う「ウィチタ・ラインマン」という曲を初めて聞いたのは、ちょうど中学生になって深夜放送を聴き始めた頃。ラジオから流れてくるイントロ部の独特の哀愁を帯びたメロディ、転調をうまく使ったちょっとドラマチックな曲の展開…、まあ言葉で書くとうまく説明できないのですが、要するにある種「日本人好み」のメロディラインにすっかりやられてしまい、いつも口ずさんでいました。
 グレン・キャンベルという歌手が特に好きなわけではなく(別に嫌いでもないけど)、実はまともにアルバムを聞いたことがありません。考えてみれば、グレン・キャンベルの歌で、この曲以外に知っているのは「恋はフェニックス」ぐらい。
 第一、グレン・キャンベルは昔からレコード店では「カントリー」の棚にある歌手なのに、全然カントリーっぽくない不思議な歌手。後から知ったのですが、アーカンソー生まれの彼は、プロを目指してロサンジェルスに出てきて最初はスタジオミュージシャンとして働き、一時期はビーチ・ボーイズでブライアン・ウィルソンの代役を務めていたらしい。その後ソロデビューして、1967年には「恋はフェニックス」でグラミー賞の最優秀男性歌手部門を含む2部門、「ジェントル・オン・マイ・マインド」で最優秀カントリー男性歌手部門など2部門を受賞、翌1968年には彼のレコードがグラミー賞「最優秀録音賞」受賞、そして1969年には「ウィチタ・ラインマン」が全米3位の大ヒットとなり、一躍スターになりました。でも、60年代末から70年代初めにかけての大スターでもあり、現在はカントリーの殿堂入りをしているほどの人なのに、ある意味で「特徴がない、印象が薄い」歌手でもあります。
 一方で、この「ウィチタ・ラインマン」や「恋はフェニックス」を作ったジミー・ウエッブ(Jimmy Webb)は、私の世代にはけっこう馴染みのある人。60年代から70年代にかけてサイモン&ガーファンクルやフィフス・ディメンションに曲を提供していたアメリカン・ポッポス界の名ソングライターです。

 「ウィチタ・ラインマン」のラインマンとは、電話線の保守・管理をする人。歌の内容は、中西部のウィチタ(おそらくカンザス州のウィチタのことだと思います)の郊外の荒涼とした土地をクルマを走らせながら休みもなく毎日仕事に明け暮れ、いつもそんな自分の話を聞いてくれる恋人がいればいいなぁと思っている…というちょっと物悲しい話。そんな歌詞の内容と曲調、そしてグレン・キャンベルの淡々とした歌唱がよくマッチしています。とても「アメリカっぽい」曲でもあります。

 この「ウィチタ・ラインマン」という曲は、私にとっては何だか、音の悪い真空管式のAMラジオで毎晩必死に深夜放送を聴き、洋楽というものに初めて触れた古い昔を思い出す、とても懐かしい曲なんです。私がまだ、成績優秀な「いい子」だった時代です(笑)。高校に入ってからは、しっかり落ちこぼれ、その後ヤクザな人生を歩むことになりましたから…
 いずれにしても、「ウィチタ・ラインマン」は大好きな曲です。いつも持ち歩いているWalkmanには、数百枚のアルバムが入っていますが、グレン・キャンベルの歌はこの「ウィチタ・ラインマン」1曲だけ。でも時々夜中に聴いています。

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