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2010年04月28日

●アップルのネット通販規制

 ここ数日、アップルがネット通販規制に乗り出した件で、様々な憶測が飛び交っています(沢尻エリカの離婚についても様々な憶測が飛び交っていますが…笑)。まあ、アップルの場合は別に深い理由などなく、単に値引き販売を規制し、製品販路を完全にコントロール下に置くことで、製品イメージのアップと利益率の安定を狙っているというだけの話でしょう。
 アップルによる販売規制と言えば、あれは1980年代末頃だったと思いますが、行徳に本店があった安売り店「STEP」を思い出します。はっきりとは覚えていないのですが、確かSTEPが平行輸入品のMacintoshを廉価販売して、当時の正規代理店であったキヤノン販売との訴訟にまで発展しました。STEPで購入した平行輸入品のMacの修理をキヤノン販売が経営するゼロワンショップに持ち込むユーザが多かったために、キヤノン販売が業を煮やした…という話だったと思いますが、あのトラブルにもバックには、廉価販売を止めたいアップルの姿があったように感じました。

 私は仕事上でアップルとの関わりはかなり古く、私の会社は1980年代後半から90年代前半にかけての一時期、アップルの公式デベロッパーをやっており、Mac純正プリンタのドライバなどを開発していた他、Mac用のアミューズメント系のアプリも何本かリリースしたことがあります。当時、公式デベロッパーはMacを指定台数までは半額で購入することができました。それで、SE/30とかcx、ciなどを購入していたのですが、割り当てられた半額購入枠だけでは足りなくて、例のSTEPで安売り製品を購入したこともありました。当時、非正規品は日本語OS(漢字TALK)を別途購入しなければ日本語を使うことが出来なかったように記憶しています。
 iPHONEやiPodの爆発的なヒットで、今でこそアップルは飛ぶ鳥を落とす勢いですが、かつては日本国内市場の開拓が非常に難航していました。1990年当時、私の会社に、キヤノン販売でLisa関係のプログラムを開発していた…というスタッフが何人かいました。このアップルのLisa、斬新なコンセプトを持ったPCでしたが、正式な日本語対応をしないまま日本市場に投入するなど、当初のアップルは明らかにWバイト文字圏に冷淡なマーケティングを行っていました。他にもトラブルだらけだったLisaは、おそらく日本市場では数百台しか売れなかったと思いますが、私の会社には、そのうちの1台がありました。ともかくキヤノン販売はLisaから初期のMacの販売には苦労したと思います。そういえばキヤノン販売の前に、東レがアップルの代理店をやっていた時期がありましたね…。

 こうして30年にも渡る長い間、アップル社を見てきて感じるのは、アップルという企業は独善的なところが強く、ユーザニーズに合わせた商品を作るのではなく、自社の製品文化にユーザを合わせようとする部分が大きいという点です。マーケットインではなくプロダクトインといったところでしょうか。昨今では、そういう姿勢が逆に「文化を発信する企業」として評価されているのだから、面白いものです。ただ、今回のネット販売規制や、あちこちで対応の悪さが囁かれている製品不良時のトラブルへの対処などを見るにつけ、こうした傲慢ともいえる独善的な姿勢が、どこかで一般の消費者心理との決定的な乖離を生む可能性はあると思います。
 1980年代~90年代始め頃まで、あれほどMacとMacが生み出すカルチャーに入れ込んだ私が、昨今は必要がない限りMacを使わなくなり、また同様にiPHONEやiPodの「コンセプトの押し付けがましさ」が鬱陶しくて使わないのも、昔から変わらぬアップル社の傲慢な姿勢に多少嫌気がさしているからかもしれません。

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