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2009年11月27日

●真夜中に聴きたい50曲 (13)

(13)Gram ParsonsLove Hurts」(グラム・パーソンズ:ラブ・ハーツ)

 グラム・パーソンズのソロ2枚目のアルバム「Grievous Angel」から、あの名曲「Love Hurts」です。「Love Hurts」という曲は多くのミュージシャンが歌っており、曲自体は特に名曲だとも思わないのですが、このグラム・パーソンズとエミルー・ハリスがデュエットで歌う「Love Hurts」は、間違いなく永遠の名曲です。

 個人的に言えば、グラム・パーソンズについて語りだすと、いくら単語を費やしても語り尽くせない程の思い入れがあります(普段は誰にも語りませんけど…)。一般的には「カントリーロックの始祖」といった形容詞がつけられることが多い彼ですが、私はグラム・パーソンズの音楽は、「カントリーロック」などというジャンルで簡単に括られるようなものだとは思っていません。私が好きな「アメリカの音楽」、本来の意味での「ルーツ・ロック」そのものを具現化した音楽であり、そんな理屈抜きに、聴いていると非常に心地よい音楽なのです。

 グラム・パーソンズというミュージシャンについて熱く語る人の多くは、彼の死後に自分が好きな何らかの音楽ジャンルの系統を辿っていくことで「結果的に彼に辿りついた」という後追いの形で知る人が多いのですが、かく言う私も同じです。高校時代にザ・バーズがけっこう好きだった私は、「ロデオの恋人」をよく聴き、ザ・バーズのメンバーとしてのグラム・パーソンズの名前は知っていました。しかし、1974年に彼がLAのモーテルで酒とドラッグの過剰摂取で死んだことも知らなかったし(棺桶が盗まれて遺体が砂漠の真ん中で焼かれるというミステリアスな話)、その後クリス・ヒルマン(前に取り上げたSTEPHEN STILLSのアルバム「MANASSAS」にも参加しています)らと共にフライング・ブリトー・ブラザース(The Flying Burrito Brothers:イーグルスを途中で脱退するバーニー・リードンも参加していました。またアル・パーキンスも参加しています)というバンドを作ったことも、さらに脱退後に2枚のソロアルバムを出したことも知りませんでした。1970年代の終わり頃、東京で働きながら、結婚もして少し生活が落ち着いてきて、休日ごとにバイクで走り回る中、いろいろな音楽雑誌を読んだりレコードを買ったりする中で、グラム・パーソンズの死の経緯と彼がその後のロックシーンに与えた影響を知ったわけです。

 しかし、その後1980年代、90年代、そして現代に至るまで、グラム・パーソンズは、音楽シーンでさほど大きく話題になるミュージシャンではありませんでした。しかし、この80年代以降の時期に私は、彼が最初にニューヨークで結成したバンド、International Submarine Band(ここにもバーニー・リードンがいました)時代のアルバムから、The Flying Burrito Brothers時代の名盤「黄金の城」(The Gilded Palace of Sin)とそれに続くセカンドアルバム、そしてソロになってからの「GP」「Grievous Angel」など、入手可能な彼の音源の全てを入手して聴き続け、心地よいサウンドと甘い彼の声に、もうどっぷりはまって抜け出せなくなった次第です。
 それにしても、その後のウェストコースト・ロック(こんなジャンル分けはヘンかも)の流れを見るにつけ、グラム・パーソンズの影響がいかに大きいかがわかりますし、このあたりの詳しい経緯は、私以外の人がたくさん書いています。

 今回取り上げた「Love Hurts」は、事実上彼自身が発掘した新人女性シンガーであり当時公然たる愛人でもあったエミルー・ハリスとの情感溢れるデュエットが何とも言えず心をくすぐります。
 前に私はエミルー・ハリスのアルバム「Wrecking ball」に衝撃を受けたと書きましたが、この「Wrecking ball」以前は、彼女はグラム・パーソンズの影響から全く抜けきれていなかったわけです。いや、影響どころか、グラム・パーソンズの敷いたレールの上を走ってきたのがエミルー・ハリスという歌手の実体だったのでしょう。しかしラノワがプロデュースした「Wrecking ball」によって、初めて彼女は「グラム・パーソンズの呪縛」から逃れることができ、一皮むけた…と、個人的に思った次第です。

 さて、グラム・パーソンズ、エミルー・ハリスという大好きな2人に対する思い入れを除いて純粋にグラム・パーソンズの曲から選ぶのなら、「Love Hurts」以外にもっとよい曲がたくさんあります。特に私が好きなのはThe Flying Burrito Brothers時代の曲で、アルバムThe Gilded Palace of Sinの中の「Dark End of the Street」などは今でも必ず月に数回は聴くほど、愛聴しています。

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