WS30の世界はオルタナティブ・デジカメサイト。デジカメ、MPEG-4動画、PCの話題、サブカル系の駄文コンテンツをどうぞ…
大きいカメラは、人生を楽しむのにジャマになる!    2002/1/30

 何度も書いている通り、私は小さいカメラが好きです。別にCheez! SPYZほど小さくなくともよいのですが、基本的にはポケットに入るサイズのカメラしか持ち歩きません。ガジェットが好き…という理由もあるのですが、それだけではなく「よい写真を撮影する」という本質的な目的の部分で「小さいカメラは使いやすい」と思っています。
 ここでは、自分がコンパクトカメラを常用するようになった理由を、ダラダラと書き綴ります。全くもって、どうでもいい話です(笑)。
こちらも併せてお読みください。



■イントロダクション

 私は1980年代の中頃に短いサラリーマン生活をやめて、2度目の渡米をしました。詳しい経緯は省きますが、勝手知ったニューヨークで生活しようと考えたのです。バイクで大事故を起こして長期入院した後でもあり、何かそれまでとは違う人生を送ってみたくなりました。
 アメリカで生活するといっても、何か収入がなければ生活はできません。幸いなことに、当時雑誌に原稿を書いて些少ながら原稿料をもらうというアルバイトをしていましたので、いくつかの出版社から仕事を受注していきました。その中の1つに旅行雑誌がありました。ニューヨークに住むと言ったら、現地からの最新カルチャーレポートを依頼されたわけです。
 まだファクシミリすらない時代で、定期的に手書き原稿と写真を郵便で送るという約束でした。その時に取材用にとニューヨークに持っていったカメラは、当時愛用していたPENTAX MXというマニュアル一眼レフカメラです。そして万が一を考えて予備カメラにリコー XR-7という格安のオート一眼レフを新たに購入して持っていきました。これは安かっただけでなく、PENTAXの交換レンズがそのまま使えるというメリットがあったからです。
 当時の私は、仕事以外ではほとんど写真を撮影することもなく、カメラなどほとんど興味がありませんでした。仕事で使うカメラは一眼レフと決まっていたので、カメラといえば事実上一眼レフしか使ったことがなかったのです。

 しかし、ニューヨークでいろいろと撮影しているうちに、カメラを持たずにプライベートで街を歩いている時やクラブなどに遊びに行った時、現場でとっさに取材や撮影をしたくなるケースがあり、それでポケットに入る取材用のコンパクトカメラが欲しくなりました。そこでマンハッタンの有名なカメラショップへ行き、お金がなかったのでXR-7を売ってコンパクとカメラを手に入れることにしました。それがオリンパスの「XA」というカプセル型カメラです。XAは携帯性とデザインが一目で気に入りました。
 当サイトの「銀塩カメラ」のところでも書きましたが、XAは「絞り優先オートのマニュアルフォーカス」のレンジファインダー機で、AF搭載のプログラム露出制御が当たり前の昨今のコンパクトカメラとは全く趣の異なるカメラです。F2.8の明るいレンズと独特の味のある写りが、非常に楽しいカメラでした。

■場の雰囲気を壊さない

 で、このXAを持ち歩いて取材するうちに、持ち歩きに便利なだけではなく取材時にも使いやすいことがわかりました。初めて会う相手とちょっと話したあとに写真を撮らせてもらうような場合、ポケットからコンパクトカメラを出すと、なんとなくその場の雰囲気を壊さずに自然に写真が撮れるのです。普通にコミュニケーションをとりながら、その流れの中で「ちょっと1枚」という感じで撮影できます。「これから撮影するぞ」といういかにも大げさな雰囲気にならないところが、とても使いやすいと思いました。雑誌掲載用とは言っても、担当していたのがモノクロページで、使う写真も小さいもの、だから解像度の点でもコンパクトカメラで十分でした。
 その頃のニューヨークは、ビッグアップル・キャンペーンが始まったことで、レーガン政権の下、クリーンで安全な街へと変貌を遂げつつありましたが、それでも8th.AVより西のダウンタウンのウェストサイドやBoweryよりも東のイーストビレッジやアルファベットアベニュー周辺など、現在のニューヨークとは比較にならないほど危険な場所でした。そんな場所で一眼レフカメラを持ち歩く気はしません。しかし、そうしたエリアを中心に新しいコンセプトのクラブが開店したりする時代でもあり、ポケットにXAを忍ばせて出かけたものです。
 その後、マンハッタンのカメラショップで、既に日本では販売が終わっていたキヤノンの「キヤノネット」という安いレンズシャッターカメラも新品で購入し、よく使いました。

 帰国してからもコンパクトカメラを愛用する状況が続きました。主にバイクツーリングや海外旅行を中心とする、旅の記録用にコンパクトカメラを使いました。さらに、こうしてコンパクトカメラを常用する中で、日常生活の中でスナップ撮影をする…という習慣もでき、コンパクトカメラの使用頻度は高いものとなっていきました。っまた、1990年代に入ると、「高画質コンパクト」が何種類も商品化されたこともあって、ちょっとした取材にもコンパクトカメラを常用するようになったのです。

■大きなカメラの機能的アドバンテージ

 いくら小さいカメラが好きとは言っても、画質や機能面では、コンパクトカメラと一眼レフカメラは比較にはなりません。レンズ交換が可能で、ファインダーで撮影レンズを通した実像を見られる一眼レフには、機能面での圧倒的なアドバンテージがあり、コンパクトカメラとは次元が違うことは十分に理解しています。
 一眼レフに代表される大型カメラには、機能面以外にもアドバンテージがあります。
 まずは撮影時のバランスの問題。カメラ雑誌やカメラの専門書を読むと必ず「カメラのバランス」という話が書いてあります。例えば一眼レフなんかの場合、望遠系の交換レンズは500g以上、重い場合には1Kgを超えたりします。この重さが手ブレを抑え、安定した撮影を可能にするのです。カメラ本体に一定の重量がないと構えた時にバランスが悪い…というわけです。
 「カメラはある程度の重さと大きさがあった方が撮影しやすい」…これはプロフォトグラファーだけでなく、ある程度本格的に写真撮影をしているアマチュアも含めて、誰もが口にする言葉です。先の「バランス」の問題も含めて、個人的にもその通りだと思います。
 一眼レフの場合、左の手のひらに重量のあるカメラを載せるように構え、そこでそっとシャッターを切ると、1/15秒くらいまでのシャッター速度なら、かなりの確率で手ブレない写真が撮れます。1/8秒でも、数枚に1枚は使いものになる写真が得られます。1/15というシャッター速度は、ISO400のフィルムを使うのなら、暗い室内や夜景をノンストロボで撮影できるものです。

■大きいカメラで撮影するスタイル

 一眼レフに代表される「大きくて、いかにもカメラらしいカメラ」には、取材撮影時の利点もあります。相手に「写真を撮影されていること」をちゃんと認識させられる点です。
 例えば人物インタビュー記事を取材する際など、「雑誌掲載用です」と断って一眼レフを向けた方が、いい表情の画像が撮れることがあります。これは、撮られる方が自分が被写体になることをちゃんと意識する故のことでしょう。アイドルタレントのグラビア撮影なんかでもそうですよね。
 それから街で素人の女の子を撮影する時なんかでも、一眼レフを向けた方が逆にちゃんと撮影させてくれるようです。当然ですよね、人間はこっそり撮られるよりも、ちゃんと構えて撮影される方が気持ちがいいのは当然です。だから、取材時のシチュエーションによっては一眼レフなどの大きいカメラを使った方が、うまく撮影できることもあるのです。

■でもコンパクトカメラが好き!

 私はプロのフォトグラファーではありません。普通は、あくまで楽しみとして写真撮影という行為を行うわけです。むろん写真は高画質であるほうがよいのは当然、でも毎日カメラを持って歩き、気が向いたら何にでもカメラを向ける…というスタイルが一番楽しい。こうしたスタイルには、大きなカメラは似合いません。
 私は、写真撮影が好きだとはいっても、「写真を撮る」ことだけを目的にカメラを持ち歩くことはありません。写真撮影は、あくまで付帯行為です。旅に出たときは旅そのものを楽しみます。写真を撮るのは、あくまで「ついで」です。散歩に出るときには、散歩をすること自体をまず楽しみます。そこでたまたま何か写真に撮りたい被写体があれば、撮影するのです。
 「写真を撮ること自体を目的に行動したくない」…これが、私が大げさなカメラを持たない最大の理由です。「たかが写真を撮る」という行為に、大げさな道具を使うことに対する「照れ」があります。
 私は、カメラはコンパクトなものが好きです。コンパクトなカメラを持っている限り、写真撮影に自分の意識がとられ過ぎることはありません。旅に出たときには、旅先の風土や出会った人とのコミュニケーションを楽しむことが第一、写真撮影は二の次です。そうじゃなきゃ、旅は楽しめません。女性と食事に行った時には、食事と会話を楽しみましょう。でも、小さなカメラを持っていけば、思わぬ彼女の仕草や表情が撮れるかもしれません。
 人生を楽しむこと、写真を撮ること…この2つを同時に楽しむためには、コンパクトなカメラをポケットに忍ばせておくのが一番です。


Email Webmaster if your incur problems.• Copyright © 2001 yama. ALL RIGHTS RESERVED. Since 2001.1.22
※ 当サイトは Internet Explorer6.0 に最適化されています。