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Winnyとはどういうソフトか?     2004/5/12

 今回の金子氏逮捕騒動の中、「Winnyとはどういうソフトか」について、きちんと解説している大手マスコミが1つもないのです。大新聞の記事や社説を読んだり、TVニュースを見ている限り、ネットワークに詳しくない一般の人は、「Winnyは著作権法で保護されている映像や音楽やパソコンソフトなどを、勝手に交換・配布するためのソフト」…としか理解できないでしょう。大手マスコミは、どうして「Winnyというソフトの機能とP2Pネットワークの本質」についてまともに取り上げないでしょうか。
 …ということで、「Winny」とはいったいどういうソフトなのか、大手マスコミに代わって、私が「パソコンやネットワークに詳しくない一般の人」向けの解説を試みます。


1.ファイル共有ソフトとP2Pネットワーク

■ファイル共有の仕組みを作るソフト
 「自分が欲しいファイルやデータを持ってる人って、世界中のどこかに必ずいるはず…」って考えたことはないだろうか? 情報を探す時に、世界中のパソコンの中身を片っ端から直接覗いて探すことができたら絶対に便利だと思わないか? そんな夢のようなことができるソフトがWinnyやWinMXなど、俗に「ファイル交換ソフト」「ファイル共有ソフト」と呼ばれるソフトだ。  もちろん、WinnyやWinMXは勝手に他人のパソコンの中を覗いてファイルを探すわけじゃない。ファイル探しの対象は、自分が「公開してもい」という意志を表示している人だけだし、さらにその人のパソコンの中の「他人に覗かれてもいい」というフォルダの中に限った話だ。
 つまり、インターネット上につながっているパソコンの中に「みんなに見てもらいたい、みんなに使ってもらいたい」というデータやファイルがあればそれをお互いに公開し、同じくインターネットにつながっている不特定多数のユーザで共有できる仕組みを作るソフト…それがWinnyやWinMXだ。

■ファイルの共有とは?
 "パソコンとパソコンを接続してファイルを共有する"という仕組みについて、もう少し詳しく説明しよう。パソコンとパソコンを接続して、パソコン間でデータ通信が可能な状態を作りだす…これが第1ステップ。次に、お互いにパソコンの中にあるフォルダやファイルが見えて、しかも簡単に"ダウンロード/アップロード"できる仕組みとユーザインタフェースを実現すること…これが第2ステップだ。この2つのステップを経て、ファイル交換が実現する。
 身近なところで、こうした「ファイル共有」の仕組みを、とりあえず簡単に体験できるのはパソコンLANだ。LANで接続されたパソコン同士は、互いのファイルをドライブ単位、フォルダ単位で共有し、また互いのファイルを自由にダウンロード/アップロードすることが可能だ。
 しかし、WinnyやWinMXは、LANのように"ケーブルで接続された特定のパソコン間"だけではなく、インターネット上に接続されているどのパソコン(WinnyやWinMXが動作しているパソコン)とでもフォルダの共有が可能なデータ通信を確立できる。
 WinnyやWinMXは、LANのような"パソコン−パソコン間"の接続状態を作りだすが、相手のパソコンとデータ通信が確立する前に、とりあえず相手のマシンのファイルが見える状態を作ってくれる。そして、実際にデータを交換(ダウンロード/アップロード)する段階になって、実際に相手のパソコンとの接続状態を作りだす。このデータ通信が確立した段階では、自分のパソコンと相手のパソコンとは1対1で直接接続されており、中間にサーバーを介していない。これが、ピア・ツー・ピア(P2P)接続である。

■ファイル共有の仕組み
 WinnyやWinMXは、こうして文章で説明していても、なんとなく理解しにくいところがあるはずだ。「なぜコンピュータ同士でファイルを共有できるのか」「従来のインターネットとはどこが違うのか」という原理的な話や技術的な部分を簡単に説明するのは難しい。
 世界中のパソコンが結ばれるというWinnyやWinMXを使った「ピア・ツー・ピア(P2P)」接続では、コンピュータ同士がサーバーを介することなく接続される。
 もともとインターネットは、世界中のコンピュータ同士がつながる仕組みを持っている。しかしそれは、あくまでインターネット上の要所要所に多数の「サーバー」が存在することが前提となっている。「サーバー」とは、"情報の流れの中心に位置して情報をいったん蓄積したり情報の流れをコントロールしたりするコンピュータ"のことだ。つまり、インターネット上で流れる情報(データ)は、どんなルートを通るにしても普通は必ず複数のサーバーを経由することになる。
 しかし、WinnyやWinMXが作るネットワークは違う。最初にパソコンをインターネットに接続する時にはアクセスポイントのサーバーが必要になるが、いったん接続した後はサーバーを経由することなくデータのやり取りができる。無数のパソコンが次々と「ハブ」の役目をしてネットワークを拡大していくのだ。
 WinnyやWinMXを語るとき、この「ピア・ツー・ピア(P2P)」という言葉は、象徴的に使われる。この「ピア・ツー・ピア」こそは、今後のインターネットの利用形態を劇的に変化させ、発展させるためのカギとなる可能性が高い。

■「Winny」や「WinMX」は"悪い"ソフト?
 「インターネットにつながっている世界中のパソコンとファイルを共有する仕組み」は、そう聞いただけで、誰もが"すごく便利なもの"と思うはずだ。ところが、このWinnyやWinMXは一部の人から"悪者"扱いされている。それは、このWinnyやWinMXというソフトが、MP3などの音楽データや各種動画データ、そしてパソコン用プログラムなどを共有したり、交換したりするために広く使われているからだ。音楽データや映像データを交換すること自体が悪いのではない。問題はCDで市販された音楽ソフトをMP3などのフォーマットでデータ化したり、DVDで市販されている映像ソフトをDiVXなどのフォーマットでデータ化し、それを他人に配布したり入手したりする…という行為が問題になるわけだ。
 これは、明らかに著作権法に反する行為だ。かつて、WinnyやWinMXと同じような仕組みで音楽データのファイル交換用に使われていた「ナップスター(Napstar)」は、音楽著作権を持つ多くの会社と裁判になった。WinnyやWinMXは、基本的に同じピア・ツー・ピア方式のファイル交換技術をベースに持ち、しかも音楽産業とトラブルを起こしたナップスターやグヌーテラと同じ土俵で語られることが多く、そんなところからWinnyやWinMXにも悪いイメージを持つ人がいるようだ。
 でもWinnyやWinMXは「ファイルを共有・交換できる仕組みを作るソフト」なのであって、「著作権者を無視して音楽データや映像データを勝手に配布したりダウンロードしたりするためのソフト」ではない。そこが非常に大事なところ。著作権上の問題のないデータや、自分自身で作ったデータやファイルを個人的に交換するであれば、別に何の問題もない。仕事用のデータの収集や交換にだって使えるし、趣味のデータを交換するためにも使える。むしろ、こうした使い方こそWinnyやWinMX本来の使い方と言える。WinnyやWinMXを悪者にするかどうかは、使う人間にかかっているのであって、WinnyやWinMX自体の機能に問題があるのではない。

 結論を言えば、WinnyやWinMXは「インターネットに接続された世界中のパソコンとファイルを共有し、交換することが可能なソフト」…というのが正しい説明なのである。


2.WebサイトとWinnyやWinMXなどP2Pソフトの違い

 何か目的があってインターネット上で「情報」を探す時、まずはYahooやgooなどのサーチエンジンを使って"公開されたWebサイト(ホームページ)"を探すのが一般的だ。言い換えれば、サーチエンジンは「Webサイト」または「Webサイト上の文字列や画像等」を探すツールである。
 サーチエンジンで検索可能なWebサイト上の情報とは、一次情報ではなく「ホームページ」用に加工された情報に過ぎない。ところがWinnyやWinMXなどP2Pソフトは違う。文字情報でも画像情報でも、一次情報を直接探すことが可能なツールだと考えればよい。

(1)Webにおける情報公開と情報検索

 インターネットがかつてない巨大な情報源として成長した背景には、「個人が持つ情報が広く公開された」という大きな理由がある。従来型のメディアの中で、最大の情報源のひとつであった「印刷メディア(書籍等)」について考えてみよう。書籍や印刷物は、編集・製本するのも出版という形で公開するのも、ともかく手間と費用がかかった。個人が書籍というメディアで情報を公開しようと思っても、簡単にできることではなかった。また、書籍や印刷物をたくさんの人の目に触れるように配布するには、もっと高いハードルがある。放送メディアなど印刷物・書籍以外の情報公開メディアもあったが、放送メディアは印刷メディア以上に個人情報公開用としては不向きであった。
 インターネットとその上で情報公開する手段としてのWebサイトの存在は、個人による情報の開示を容易にし、しかも広範囲の人々に見てもらうことを可能にしたのだ。

■個人が持つ情報
 "個人が持つ情報"の質と量はバカにならない。1人のもつ情報は少なくても、多数の個人情報が集まれば膨大な情報量となる。例えば旅行ガイドブックを例にとってみよう。ある地域の充実した旅行ガイドブックをつくるためには、誰かが膨大な時間をかけてその地域を実際に旅行して取材しなければならない。観光地の情報から宿泊情報、ショッピング情報など、集めるだけでも大変な作業である。しかし、その地域を旅行する人が年間何十万人もいるとすれば、その個人旅行者が持っている情報を集積すれば、どんな旅行ガイドブックも敵わないほどの、大量の情報が集まるはずだ。
 海外旅行に行く前に、インターネットで情報を集める人が多い。情報を集めたい国や都市をキーワードに検索すると、地域によっては膨大な数の個人ホームページを見つけられるはずだ。片っ端から見ていけば、絶対にガイドブックには載っていない、情報をたくさん見つけられるはず。個人情報のもつ力を見せつけられるだろう。
 また世の中には、個人レベルで非常に充実した情報を持っている人がたくさんいる。いわゆる"趣味"の領域の情報だ。下手をすると学術書や専門書にもないような価値の高い情報が個人レベルで蓄積されていることもある。
 インターネットは、こうした本来埋もれていた"個人情報"、そして私企業が持っていた情報などを「Webサイト(ホームページ)」の形で大量に表に出すことによって、膨大なシソーラスとして機能し始めたのである。

■ブラウザで検索できる情報とは
 インターネット上では、普通は「Webサイト(ホームページ)」という形でしか、情報を公開する手段がない(ニュースグループなど他の手段もあるが一般的ではない)。
 インターネットは「ブラウザ」と言う閲覧ソフトを使って見ることが、大きな前提となっている。普通インターネット上にあるのは、"ブラウザで見えるデータ"なのだ。そしてサーチエンジンというのは、原則として"ブラウザで見えるデータ"を見つけるための仕組みだ。
 例え情報を公開する側がWebサイト上にデータを置いても、ブラウザで見えないデータは検索できない。これが重要な点だ。検索されるためには、ブラウザで見える情報の形に加工してやらなければならないということ。「情報を公開する側」から見ると、現在の"Webサイトを使った情報公開"の欠点がよく見えてくる。

■Webサイトは一次情報を扱いにくい
 Webサイトで情報を公開するためには、Webサイト公開用の情報、いわゆる"ホームページを作る"という作業が必要になる。ところが、これは自分が持っている一次情報からの"加工"作業だ。
 「情報」や「データ」は、最初にデジタル化された一次情報の段階では、文章ならワープロソフトのデータ、画像ならデジカメの記録データや描画ソフトのデータ、音楽ならDTPシステムまたはDTPソフトが作ったデータ…などの形になっているはず。つまり、データ作成ソフトや機器に依存するデータ形式となっている。より具体的には、文章ならテキストファイルまたはワープロソフトが作る.docファイル、画像なら.jpgファイルや.bmpファイル、音楽なら.mp3や.wavファイル…などといったものだ。
 普通、個人がパソコンの中にデータを蓄積している場合、必ずこうした一次データの形式となっている。ところが、先に述べたように、ホームページ上にある情報は基本的には一次情報ではない。ホームページというのは、HTML化された情報を中心に構成される。ホームページ上では、HTML文以外にも画像情報などを掲載して、それを閲覧・検索することもできる。ところが、あくまでHTML文で作られたページの中に貼り付ける形でしか、公開できない。しかも、クオリティの高い画像を大量に貼り付けたら、データ量が多くなり過ぎてブラウザでページを開くことが出来なくなってしまう。つまり、Webサイト上での画像データや音声データの扱いは、かなり面倒なものだ。

■Webはサーバーが必要
 さらに、「情報を公開する側」から見た、現行のWebサイトという公開方式の問題点を見てみよう。サーチエンジンがある限りWebサイトを検索するのは非常に簡単だが、検索対象となる情報を公開するには、一次情報からの加工作業以外にも大きな障害がいくつかある。
 まず第一に、Webサイトを置くための「サーバー」が必要ということだ。いわゆる「WWWサーバー」である。WWWサーバーの設置は、個人レベルで誰にでも簡単に準備できることではない。原則として「広帯域の常時接続環境」が必要である上、WWWサーバーソフトを設定するだけの知識と経験が必要になる。そこで、一般のインターネットユーザーは、サービス事業者によってあらかじめ設置してあるサーバーを「借りる」ことが必要だ。これは、無料の場合もあるし有料の場合もある。いずれにしても、一定の手続きを踏んでサーバーを借りなければならない。

■サーバーへのアップロード
 Webサイトで情報を公開するためには、まずサーバーを用意し、そして一次情報をブラウザで見える形に加工(ホームページを作成)し、さらに"WWWサーバーにアップする"というプロセスが必要になる。この作業は、FTPソフトというWWWサーバーへ情報をアップロード/ダウンロードするためのソフトを使って行う。けっして難しい作業ではないが、単純にファイルを移動するだけではない面倒な部分もある。

■WWWサーバー内の一次情報
 Webサイト上(WWWサーバー内)に文書や画像、そして音楽などの一次情報を置くこと、それ自体は可能である。また、FTPという仕組み(プロトコル)を使えば、WWWサーバー内に置いたソフトを一時データのままダウンロードできる。しかし、大きな問題がある。WWWサーバー内に置かれた一次情報は、外部から直接「見える」ようにはできない。つまり、サーチエンジンの検索には引っかからないのだ。
 サーチエンジンで検索可能な形、すなわちWWWサーバー内のどこにどんなファイルが置いてあるかを公知するためには、HTML文を作って「目次(ファイル名一覧)」をブラウザで見える形にしてやる必要がある。これは、情報を公開する側から見れば、非常に手間がかかることなのである。

(2)WinnyやWinMXなどP2Pソフトによる情報検索と情報公開

 個人が持つ情報をインターネットを使って公開する…という点では、WebもP2Pソフトも同じ役割を果たす。しかし、P2Pネットワーク上での情報の公開はWebサイトより簡単で、しかも一次情報のままで公開できるという特徴を持つ。情報公開にあたっては、全く作業を必要としないのだ。
 しかし、"情報検索・公開の手段として、WinnyやWinMXなどP2PソフトはWebサイトよりも優れている"というつもりはまったくない。WinnyやWinMXなどP2Pソフトを使ったファイル共有の仕組みを利用した情報検索・公開にはいくつかの欠点もあるし、逆にWebサイトならではの便利な部分もある。探している情報、公開する情報の種類や特性によって、P2PソフトとWebサイトをうまく使い分けることを薦めたい。

■WinnyやWinMXなどP2Pソフトによる情報公開の容易性
 WinnyやWinMXなどP2Pソフトは、WWWサーバーを作りそこにWebサイトを置く方法と較べて、非常に簡単に情報を公開し、検索することが可能だ。
 P2Pネットワークにおける情報公開・検索のメリットは、まさにWeb方式の持つデメリットの裏返しである。

●サーバーが不要
 P2Pネットワークは情報を公開するにあたって、サーバーがいらない。公開したいデータは、自分のパソコンの中の特定のフォルダ(自分で指定した)に入れておくだけである。
自分のパソコン内に置いておけばよいのだから、当然ながら「サーバーへのアップロード」という作業も不要である。
●一次情報をそのまま公開できる
 P2Pネットワークで公開する情報は一次情報そのままでいい。"ホームページを作る"という作業も不要であるし、また一次情報をHTMLで目次化する必要もない。要するに、ワープロのデータファイルだろうと、音楽データファイルだろうと、普段利用しているデータ形式、ファイル形式のままで公開することが可能だ。
●検索システムが不要
 WinnyやWinMXは、P2Pネットワーク上にある膨大な数の共有ファイルの中から、特定のファイルを検索する機能を持つ。Webシステムにおいては、サーチエンジンを使ってサイトを検索することはできても、WWWサーバー内にある個別のファイルを検索することはできない。WinnyやWinMXの検索機能の基本は「ファイル名」で検索するもので、決して強力なものではないが使いやすく確実だ。

■勝手に検索してくれる
 Webサイトでの情報公開とP2Pネットワークでの情報公開は、"検索"という面から見ても全く手法が異なる。P2Pネットワークは、"一次情報を直接検索"できるのだ。だから情報を公開する側は、検索する側の利便性を考える必要がない。
 Webサイトの場合、ホームページ内で大量の情報を公開するときには、検索システムを用意する必要がある。例えば、数百種類のファイルをダウンロード用に公開するとしよう。まず、各ファイルのタイトルをHTML化した目次を作成しなければならない。その上で、そのタイトルをサイト内で検索できるようなシステムを作らなければ、サイトを訪れたユーザはどこにどんなファイルがあるのか探すことができない。簡単な検索機能(ページ内の文字列検索)はブラウザが持っているが、複数ページにまたがる検索はできないのだ。  場合によっては、サイト内でデータベースシステムを動かす…なんて手間をかける必要がある。膨大な情報を持つWebサイト、例えば不動産情報サイトや商品情報サイトなどでは、こうした検索システムを完備している例が一般的だ。  P2Pネットワークの場合、公開するファイル数が数百でも数千でも、目次を作ったりデータベース構造にする必要などはない。ただランダムに公開フォルダの中に入れておけばよいのだ。
 ただし、検索する側は基本的に「ファイル名」と「拡張子」で見る。そのため"ファイル名の付け方"が重要な問題となる。検索する側は、ファイルの内容をファイル名と拡張子から推定するわけで、公開する側はファイル名から内容がわかるような付け方が要求されるわけだ。

■P2Pネットワークによる情報検索・公開の問題点
 検索・ダウンロードする側も、公開する側も一次情報のままで処理できる…というのがP2Pネットワークの非常に便利なところだが、P2Pネットワーク上にある情報はWebサイトのように「見るだけで情報を得る」ことはできない。逆に言えば、「データファイルをダウンロードして、その後アプリケーションソフトを使ってファイルの中を見る」という作業を経なければ情報内容がわからない。その意味では、Webサイトで情報を公開するために行う面倒なHTML化作業も、「見るだけで情報を得られる」という大きなメリットにつながっているわけだ。Webサイトが決定的に優位な点である。
 また、前述したようにP2Pネットワークで情報を検索する場合、一般的にはファイル名以外に情報の内容を知る術がない…というのも問題となる。情報を公開する側が内容に見合ったファイル名をつけない限り、検索する側はファイルの内容は全くわからないということになる。事実、内容がさっぱりわからない数字だけをファイル名にした怪しい画像データとか、わざと内容と異なるファイル名をつけた違法データなんてのも、実際の検索でたくさん引っかかってくる。「これだ!」と思ってせっかくダウンロードしたデータファイルが、アプリケーションソフトを使って開けてみたら、全く関係のないファイルだった…という状況は、よくあることなのだ。

■Webとは使い勝手が異なる
 P2Pネットワークは便利だが、非常に高速にサクサクと情報を操作できるわけではない。というよりも、検索速度は各端末のインターネット接続環境に大きく左右される。また意図的に特定のホストだけに接続するのでない限り、P2Pネットワークの規模や検索範囲は常に異なる。接続したときの状況によって、どのホストにつながるのか、さらにそのホストからどこまでネットワークが拡大するのか…常に接続範囲が変化するのだ。P2Pネットワーク上のホストは基本的に個人所有のパソコンであり、WWWサーバーのように24時間いつでも稼動しているとは限らない。
 また、P2Pネットワーク内でのデータ転送の速度も、「ホスト」を公開している個々のユーザーの接続環境に依存する。自分がいくら高速・広帯域のアクセスラインを使ってインターネットに接続していても、相手が28.8Kbpsのモデムで接続していると、ピア・ツー・ピア接続時にはその相手側の接続速度がボトルネックとなる。だから、P2Pネットワークによるダウンロード時の転送速度は一定していない。
 また検索範囲が変化するだけではなく、ネットワーク上にある情報も頻繁に変化する。データやファイルを公開するのが簡単であるということは、頻繁に公開フォルダの中身が入れ替わっているということでもある。
 さらに、検索には"慣れ"も"コツ"も必要だ。ファイル名だけで検索する場合、非常にポピュラーなキーワードを入力すると、膨大な数の検索結果が表示される。そこから先、ダウンロードするファイルを決めるためにいったいどうやって情報を絞り込むのか…、P2Pネットワークには"情報を絞り込む機能"に欠ける部分がある。複数キーワードによる"アンド検索"などの機能はあるものの、うまく使うためにはコツが必要だ。

■規制
 WinnyやWinMXによる情報発信・公開については、「規制」という面でWebサイトによる公開とは大きく違う部分がある。それは、WinnyやWinM」などを使ったP2Pネットワークによる情報公開は、原則として「誰の検閲も受けない」という点だ。つまり、自分のパソコン上で公開するのであるから、絶対に他人に削除される心配がないのである。
 Webサイトの場合、自分でサーバーを立てて運用する例を除いては、誰かが営利目的で(非営利のケースもあるが)運用・管理しているWWWサーバーを使うわけである。自分が公開しようとしたWebサイトの内容がそのサーバーの管理者の意図に合わなければ、削除される可能性がある。"サーバーからのデータ削除"という事態は、アダルト系、アングラ系のコンテンツを持つサイトを対象に、かなり頻繁に発生している。また、コンテンツ内容の問題だけでなく、あまりに容量の大きな画像などは規制される場合もある。いずれにしても、借りているサーバーで公開している情報は、サーバー運営者の都合によって削除される可能性があることだけは間違いない。

■表現の自由
 さて、このP2Pネットワークは「情報の公開あたって何の規制もないし検閲も受けない」という現実は、非常に微妙な問題を孕む。建前からすれば、現在のWWWサーバーだって誰かが悪意を持って検閲しているわけではけっしてない。現実にサーバーから削除されるのはたいてい、"違法"なコンテンツを含むWebサイトか、または「サーバーを借りたときの契約事項に反する」行為をしたケースだ。規制とか削除という行動には、合理性があるケースの方が多い。しかし、別に違法でもないコンテンツが"何か納得できない方針"のもとに意図的に削除される可能性が皆無かと言えば、そうとも言い切れない。
 "表現の自由"に対する考え方には、いろいろなレベルがある。典型的な事例で言えば、"芸術か猥褻か"という問題は、昔から多くの議論がなされてきた。「自分は違法なことはやらないが表現の自由は守りたい」というポリシーを持っている人は、Webサイトのコンテンツの是非についてサーバーの運営者とぶつかる可能性がある。
 これを、管理する側からみてみよう。ここで言う"管理する側"とは、Webサイトにおける表現の自由を認めたくない人々、または組織のことである。こうした人々にとっては「規制が不可能なのでけしからん」という存在になる。WinnyやWinMXを"危険なソフト"という人たちがいるのも、ある意味で頷ける話だ。
 WinnyやWinMXによる情報の公開は、こうした制約が一切なく、他人が公開データを削除することは絶対にできない。どんなデータでも作品でも、自由に公開できる。だからといって「どんな違法なデータを公開してもよい」…とは間違っても考えないで欲しい。違法な情報や画像を公開してはダメなのは、当たり前のことなのだ。

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