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リーバーマンとヴィクの街  ミシガン湖に沈む夕日     2002/5/9

 つい先日、スチュアート・カミンスキーの新作ミステリー「人間たちの絆」(扶桑社文庫)が刊行され、相変わらずの面白さで一気に読了しました。「愚者たちの街」「冬の裁き」「裏切りの銃弾」と続いた老刑事エイブ・リーバーマン・シリーズは、深く作りこまれた主人公の人間性もさることながら、個性的で生活の匂いが漂う周辺の人々の描写が実にいいと思います。またリーバーマンが解決する事件も、その背後にある社会の矛盾や複雑な人間の心の動きがよく描写されています。味わい深いミステリーです。
 ところで、シカゴを舞台にしたミステリーといえば、サラ・パレツキーを忘れるわけにはいきません。個性的な女性私立探偵「V.I.ウォショースキー(通称ヴィク)」を主人公とするシリーズは、日本でも絶大な人気を誇ります。
 今回、「人間たちの絆」を読んで、シカゴについて書いてみたくなりました。仕事や休暇で何度も訪れたシカゴは、私の大好きな街です。幸いなことに、シカゴの街を自分で撮影したデジカメ画像もあるので、簡単なシカゴ・ガイドを作ってみようと思います。では…


■リーバーマンとヴィク

 ミステリーの中の主人公、リーバーマンとヴィクは、その立場や性格、事件の解決手法についての設定などが全く異なりますが、同じシカゴという街を舞台にしているだけあって、ストーリーや背景にはいくつかの共通点があります。

 まず第一に、2人ともシカゴ・カブスの熱狂的なファンだということ。シカゴ・カブスと言えば、日本でもサミー・ソーサが有名です。シカゴにおけるカブスファンというのは、その熱狂振りにおいてまさに日本の「阪神ファン」に匹敵するかもしれません。シカゴ・カブスの本拠地リグレー・フィールド(Wrigley Field)は、レンガ塀の外野フェンスに蔦が絡まったとても美しい球場です。低い外野席のすぐ後ろまでビル街が迫っており、ただで試合が見られるアパートメントもあるのが面白いですね。このリグレー・フィールドで、大きなカップに入ったビールを飲みながらポップコーンを食べ、野球を観戦するのは最高です。アメリカのボールパークの中でも、最高に雰囲気の良い球場だと思います。
 次に、両シリーズともに、シカゴの多様な人種構成や多国籍な文化を背景にしています。アメリカの他の大都市の例に漏れず、シカゴもまた多様な人種構成で、白人が約37〜8%、黒人も同数、残り約25%をヒスパニックとアジア系移民が占めます。エイブ・リーバーマンがユダヤ人、その奥さんが東欧・ロシア系移民の子孫、一方ヴィクはイタリア系移民の子供という設定になっていますが、まさにそのとおり。多種多様な民族が作り出す多様な文化が混在するのがシカゴという街の特徴です。
 そして、犯罪の舞台となる街も共通しています。両シリーズともに、サウスシカゴや西に広がる郊外が舞台となることが多いようです。シカゴはダウンタウンの西側と南側に治安の悪い場所が集中しているからです。

■風の街、シカゴ

 さて、私はシカゴという街が大好きです。シカゴと言うと何を思い浮かべますか? やっぱりアルカポネでしょうか。
 イリノイ州シカゴはアメリカ中部の最大の都市であり、地域の経済の中心地です。五大湖の1つであるミシガン湖に面しており、夏はとても暑く冬は非常に寒い、ある意味で住みづらい街です。ミシガン湖からの強い風がいつも吹いているので、WindyCity(風の街)とも呼ばれています。


 ミシガン湖岸には「海水浴場(湖水浴場?)」があり、夏は、摩天楼のすぐ下で泳げるもの魅力です。全米で最も高いシアーズタワーから眺めると、ミシガン湖に沿って無数の高層ビルが聳え、街の西側にはアメリカ中部の穀倉地帯である見渡すかぎりの大平原が広がっているのがよくわかります。
 シカゴは水の都でもあります。街中を縦横に流れるシカゴリバーには跳ね上げ式の橋がたくさんかかっており、渋滞時でも橋が上がると多くの車がじっと待っている風景をよく見かけます。
 前述したように多様な人種構成で多様な文化が混在するシカゴですが、ニューヨークのようなヨーロッパの文化の香りが強い移民の街…という雰囲気ではありませんし、西海岸の都市のような文化の境界がない開放的な雰囲気でもありません。むしろ、多様な人種が暮らしながらも「伝統的なアメリカ」の雰囲気を色濃く残している街です。要するに「アメリカらしい」街なのです。
 例えば食文化ひとつとっても、シカゴの街に住む人々はニューヨーカーのように「…キュイジーヌ」といった感じの、新しいものにすぐに飛びつくわけではありません。多様なエスニック料理店があっても、それはあくまで移民達の食べ物として存在するのであって、シカゴの食文化のベースはあくまで「伝統的なアメリカ料理」です。つまり、ハンバーガーやサンドイッチが好まれる街です。  こんなシカゴの街を、少しご案内しましょう。

■シカゴのダウンタウン

 シカゴのダウンタウンは、シカゴリバー(Chicago River)の北と南で大きく2つのエリアに分かれます。北側のリバーノース(River North)地区と南のループ地区です。
 リバーノース地区は、おしゃれな街です。有名なレストランやクラブ、大型ホテルなどが集中しています。中でも、ミシガン湖に沿ったNorth Michigan Avenueのシカゴリバーより北の一帯はMagnificent Mileと呼ばれ、ブランドショップなど有名店が軒を連ねています。シアーズタワーに次ぐ高層ビル「John Hancock Center」一帯もショッピングアーケードになっています。


 ミシガン湖に突き出したNavy Pierも楽しいところです。観覧車(Ferris Wheel)やメリーゴーランド(Musical Carousel)があるミニ遊園地やレストランモールなどもあり、夏の夕暮れ時は湖面を渡る風が気持ちよいスポットです。
 同じリバーノース地区でもMichigan Avenueの東側は、ギャラリーや個性的なショップが多いおしゃれな街になっています。カフェでコーヒーでも飲みながら、ゆっくりと散歩するのによい街です。


 シカゴリバーの南側のループ地区は、その名の通りシカゴ名物の高架鉄道「ループ」に囲まれたエリア。ビジネス街と官庁街が点在し、中心部には行政機関や証券・穀物取引所などがあります。また有名な全米一の高層ビル、シアーズタワーもこのループ地区にあります。映画「アンタッチャブル」では、シカゴ先物取引所の建物が象徴的に何度も登場し、またラストシーンではアムトラックのユニオン・ステーションが登場しましたが、これらの建物もループ地区で見ることができます。


 ダウンタウンの西と北には、エスニック街が拡がっています。西側にはギリシャタウンがあり、並ぶギリシャ料理店がエキゾチックな雰囲気を漂わせています。リバーノース地区の北は比較的静かな住宅街です。動物園がある他、韓国人などアジア人も多く居住しています。ループ地区の南側にはチャイナタウンがありますが、周辺の治安はあまりよくありません。


 ダウンタウン全体は、それほど広いエリアではありません。リバーノース地区内なら十分に歩いて散策できます。ループ地区も北半分ならば、問題なく歩いて回ることが可能です。とはいってもシカゴのダウンタウンを効率よく歩くには、バスと地下鉄を活用すると便利です。そして何といっても、シカゴ名物のループ(高架鉄道)です。ガタゴトと大きな音を立てて走るループは、まさにシカゴの風景そのものです。ループはそのまま郊外鉄道に接続しているので、ダウンタウンの外に出る時にもループの駅から乗ることになります。気軽に乗ってみましょう。


※ この項続く…


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