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北京  〜2つの宇宙を見る     単焦点スナップデジカメの画像集    2004/2/9

■天と交信する場所、宇宙の中心

 北京にある「天壇」は、1420年(永楽18年)に完成しました(完成は1421年という説もあります)。1421年といえば、以前 日記で書評を書いた「1421 〜中国が世界を発見した年」という本を思い出しますが、あの鄭和を送り出した明の永楽帝の治世です。天壇こそは、中国に現存する最大の祭祀建造物であり、世界遺産にも指定されています。あまり知られてはいませんが、故宮を東西南北から取り囲むように、地壇、日壇、月壇があり、そして「天壇」があります。
 天壇は内壇と外壇に分かれ、祭祀は主に内壇で行われます。南には圜丘、北には祈年殿があります。天壇の南側は四角形、北側は円形で、古くから中国に伝わる「天は円形で地は四角形」という宇宙に対する考え方を象徴しています。天壇は、中国にとっての「秩序」そのものです。
 その天壇の中でもっとも有名な建築物が、五穀豊穰を祈る本殿の「祈年殿」です。3層の大理石の壇上に建てられた祈年殿は、直径30m高さ38mの円形の3階建て木造建築で、釘を一本も使わずに建設されています。頂上部には瓦が葺かれ、到るところに金めっきが施されています。

 私が北京の天壇公園を訪れたのは、残念がら冬至の日ではありませんでしたが、春節を過ぎたばかりのまだ寒い2月初旬です。凍えるような冬晴れの北京、柔らかい朝の日差しを浴びて蒼穹に屹立する祈年殿は、神々しさを漂わせていました。
 天壇は中華帝国の中心でもあり、宇宙の中心でもあります。古来、中国の皇帝は「天子」と呼ばれました。それは、唯一皇帝だけが「天と交信できる」からです。冬至の日に皇帝はこの天壇に登り、自らが宇宙と一体化した存在となって「天の声」を聞き、それを臣下や民衆に伝えたのです。


■もう1つの宇宙、「胡同」

 胡同は、よく知られている通り、古くから庶民が生活する北京の路地です。車1台がやっと通れるほどの狭い路地に、路地に面した小さな家が立ち並んでいます。厳密には、旧北京城内の路地を「胡同」と称するそうですから、明の時代以降に出来たものと考えてよいのでしょう。もとはモンゴル語の「xuttuk」という「井戸」や「集落」の意味を表す言葉から来ているとの説もあります。元・明・清代に建てられた「四合院」という伝統様式の家が建ち並んでいます。
 かつては北京城内に数千を越える胡同があったそうですが、北京の都市化、近代化とともに急激に数を減らし、特に1990年代以降の中国の経済発展に伴う市内再開発によって、ますますその数を減らしています。2008年に北京オリンピックを控えた中国政府と北京市は、市内からこの胡同を一掃しようとしている…という話もあります。いまや観光客だけでなく、北京の市民すらが、郷愁をそそられる場所として見物に来るそうです。胡同がなくなるかもしれない…、そんな話を聞いて、じっくりと胡同を歩いてみることにしました。

 冬の胡同には、路地いっぱいに練炭の匂いがたち込めています。ガス調理設備や近代的な暖房器具が完備していない胡同では、練炭が調理、暖房のエネルギー源に使われます。自転車に練炭を山積みしたたくさんの「練炭売り」が、路地を行き来しています。どの家の前にも、使い終わった練炭のカスが山積みになっています。

 胡同の足は自転車です。どの家の外にも、必ず2〜3台の自転車が置いてあります。狭い路地に対して直角に、人1人がやっと通れるほどの、さらに狭い路地が続いている場所もたくさんあります。10mほどで行き止まりになっているそうした路地には、日常生活に遣う道具がたくさん置いてあります。干してある洗濯物が見えます。子供が遊んでいたりします。

 胡同には、生活に必要なものが何でも揃っています。あちこちに日常雑貨を売る小さなお店があります。こうしたお店では、普通の電話を店の前に置いて「公衆電話」のように使わせてくれます。また胡同では家にトイレがないのが普通で、あちこちに共同便所があります。共同浴場なんかもあります。鶏や鳩を飼っている家もあります。

 胡同は、それ自体が小さな「宇宙」のようです。


※ 画像はクリックすると拡大します。FinePix F402/DSC-U30/EX-S20で撮影しました。レタッチなしの画像です。


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