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近未来のデジカメ像  〜2002年の総括と2003年の展望   2002/12/27

 私が2002年のデジカメ界の総括をするのも僭越ですが、今年は「デジカメの基本的な製品形態が一通り出揃った年」であり、またハイエンド分野で「銀塩カメラとの比較が無意味になるほど高画質化が進んだ年」としても記憶されるでしょう。
 2002年の現状を踏まえて、2003年以降のデジカメの方向性を占ってみました。シロートの戯言ですので、内容に関して深く突っ込まないで下さい(笑)

■デジカメは銀塩カメラに並んだ!

 デジカメの高画質化には2つの方向性があります。ざっくりと「全てのデジカメの高画質化」という話と、完全に銀塩カメラの代替を狙う「極限の高画質化」の話です。
 「銀塩カメラの代替としてのデジカメ」というのは、極限の高画質化技術を応用する分野では、既にある程度の方向性が見えています。コストの問題を無視した極限の高画質化については、基本的にはほぼ「銀塩カメラに匹敵するデジカメ」が商品化されつつあります。一例として、PhaseOne社から発売されるハッセルブラッドH1用の専用デジタルバックは、最大画像数の「H25」の場合、CCDサイズ36.9×49.2mm、データサイズ3,992×5,312dotで、約2,120万画素、8ビットで約62MB…というスペックです。このあたりになると既に「銀塩ポジの画像に匹敵するデジタル画像」の水準に達していると言い切ってもよい段階にあるでしょう。
 さらに、Canon「EOS-1D」、Nikon「D1H/X」あたりのプロ向けのデジタル一眼レフについても、画質面で「ほぼ銀塩カメラの水準に達した」という評価が定まりつつあります。Nikonn「D100」あたりの低価格デジタル一眼レフですら、プロユースの対象となっています。
 実際に商業写真分野で活躍するプロのフォトグラファーの多くが、銀塩一眼レフに代わってデジカメを使い始めています。データ伝送や即時性が重要な報道写真分野では既にデジカメ一色になっていますが、雑誌のアイドルグラビア写真や広告写真等の高品質印刷メディア向け写真の分野でも、デジカメ画像の使用比率が大幅に高くなってきました。既に「銀塩かデジタルか」という議論自体が無意味なものとなっている状況です。このまま行けば、特殊な風景写真分野などを除いて、プロユースでもデジカメ一色となるのは、時間の問題です。
 高画質化にあたっては、CCDに代わる新しい撮像素子の開発も続いています。2002年はSIGMA「SD9」に搭載された新世代撮像素子「Fovion X3」が話題になりました。Canonもデジタル一眼レフではCMOSセンサを使っています。さらに現時点で開発中の新撮像素子の話題もちらほらと聞こえており、こうした撮像素子分野からの高画質化アプローチも、いっそう進むことは確実です。

■普及価格帯デジカメと銀塩カメラの画質比較は無意味

 こうしたハイエンドデジカメ向け高画質技術のすべては、いずれコンシューマ製品向けに使えるところまでコストが落ちてくることは間違いないでしょうが、これが2003年に実現するとは思えません。むろん10万円以下の低価格デジカメ分野においても、撮像素子から画像処理回路に至るまで、高画質化技術の進歩はめざましいものがります。しかし当面は、300〜400万画素で実売価格3〜5万円前後のボリュームゾーンにあるデジカメの画質は、同じ価格帯の安価な銀塩一眼レフや銀塩高級コンパクトの撮影画像よりは、1ランク低いものとなります。その意味では、コストの問題も含めて「デジカメ画像の画質は銀塩カメラに追い付いた」とは言えないかもしれません。だからと言って、デジカメが銀塩カメラより劣る…わけではありません。実用的なレベルの画像さえ得られれば、デジカメは銀塩カメラとは全く異なる使い方ができるし、デジカメには銀塩カメラには絶対に不可能な機能をフィーチャできるからです。

 現在200万画素〜500万画素あたりのコンパクトデジカメ、及び400〜500万画素のハイエンドデジカメに関しては、超小型・軽量機、低価格・高倍率ズーム機、高品質動画撮影機…など製品バリエーションが豊富になりました。また、デジタル一眼レフについても、どうやらコンシューマの手の届く価格になってきました。ここへ来て、デジカメの基本的な製品形態は出尽くした感があります。ただし、ここで言うところの「デジカメの基本的な製品形態」というのは、「画像を撮影するカメラ」としての基本製品形態です。長い銀塩フィルムカメラの歴史の中で試みられた機能は、ほぼ全てがデジタルカメラに搭載されました。現時点で銀塩カメラにあってデジカメにないコンセプトと言えば、超広角と3D、そして実用的なポラロイドと実用的な使い捨て…ぐらいのものでしょう。いずれも特殊な用途なので、早急にデジカメデ実現すべきコンセプトではありません。
 加えて、リアルタイムヒストグラム表示、各種画像エフェクト、撮影画像の簡易編集等を始め、各機種には様々なデジタル画像処理機能が搭載され始め、「デジタルカメラゆえに搭載可能な機能」…についても、概ね出尽くした感があります。あとは個別機能のブラッシュアップと必要・不要な機能の選択、目的別の機能特化が進むことになります。
 また、記録メディアの大容量化、バッテリーの高性能化、液晶表示パネルの高解像度化…等、デジカメの基本機能に関連する技術は、放っておいても高度化し、デジカメの機能全体を底上げしていくことは言うまでもありません。

■デジタル化されたカメラの可能性

 さて、「デジカメの基本製品形態がほぼ出尽くした」からと言って、デジカメの新しいコンセプトが尽きた…というわけではありません。デジカメには、写真撮影(画像キャプチャー)機能以外の様々な情報処理機能を付加できるからです。デジカメが銀塩カメラが辿ってきた途と同じでは面白くないし、デジタルであることの意味もありません。せっかく「デジタル」なのだから、もう少し面白い方向へと発展して欲しいものです。
 例えば、「情報の記録」という機能ひとつをとっても、銀塩カメラは「視覚情報を静止画像の形で記録する道具」ですが、デジカメは「静止画・動画情報を含んだ広範囲な情報を記録する道具」と捉えることができます。そうなると、様々なデータを記録することで面白いデジカメのコンセプトが立案可能です。
 情報記録以外の機能となると、各種情報処理機能、情報表示機能、通信機能…等が挙げられます。情報表示については、デジカメの大半が可換型記憶メディアと液晶表示部を備えているわけですから、ちょっとした情報誌処理用CPUを搭載してやれば、PDAと同じようなことができるわけです。当然データビュアーとしても使えるわけです。
 通信機能については、模索が続いています。ユビキタスではありませんが、デジカメにIPv6を付加してネット端末として利用する方向も検討されています。ただし、デジカメに通信機能を付加することについては、後述するように、それ自体が通信端末である携帯電話にカメラが搭載されることで、その必然性が薄れつつあるように思います。1枚が数MB以上になる高画質画像データを大量に簡単に伝送できるほど無線データ通信インフラは整っていないし、また100万画素レベルの画像をデータ伝送する用途なら、携帯電話にカメラを搭載した方が合理的だからです。

■記録情報の多様化

 さて、デジカメが今後進むべき方向性の1つとして、記録情報の多様化について考えてみましょう。
 既に、Exif(Version 2.2)規格では、音声情報を始め、様々な撮影情報やサムネイル画像などのデータを埋め込むことができます。中には、GPSによる位置情報も含まれています。このGPS情報の付加については、非常に強いニーズがあります。旅行記録がぞうなどに位置データが搭載されることは非常に面白いし、各種フィールドワークを記録する科学記録分野での画像なら、さらに有用です。ただし、これまたGPS搭載携帯電話端末にカメラが搭載されることで、デジカメへの搭載ニーズが減るかもしれません。
 しかし、考えて見るとデジカメにセンサさえ搭載すれば、デジカメはもっと面白い環境情報を取得し、画像データとともに記録することが可能なはずです。例えば、「気温、湿度、画面上の温度分布」などを記録すれば、アウトドア活動の記録や旅の記録としては面白いものになるでしょう。
 測距センサのデータを入れるのも面白かもしれません。画面上のピントが合っている部分までの距離データを記録してもよいわけです。「奥行き」の記録は画像の三次元化によって実現可能ですが、視覚情報としての三次元化を実現するよりも、画面各部までの距離がデジタルで算出・記録されるというのも面白いですね。
 ともかく、「風景」が持つ情報は視覚情報だけではありません。実際に写真を撮影した現場に立っていれば、匂いや体感温度など、五感で感じられることで臨場感をもたらす様々な要素があるわけです。デジカメは、こうした多様な情報を記録する道具に進化する可能性があります。どちらにしても、記録情報の多様化を目的としたExif規格の拡張は今後も続くでしょう。

■静止画のための動画

 視覚情報の中には、「画面の時間的変化」があります。時間的変化を記録するデジカメというのは、いうまでもなく「動画記録機能」のことですよね。
 「静止画は動画の一部」に過ぎません。デジカメは高度化することによって、スチル専門カメラはなくなる…という可能性は十分にあります。十分なメモリさえあれば、常時数秒間の連続画像を撮影し、その中から任意の画像を切り出すことで静止画が得られるわけです。考え方としては、「モータードライブの高速版」です。ただし、デジタルである以上半端な連写ではなく毎秒30コマ程度の連続撮影を、「静止画撮影時の標準」にする…というものです。これはあくまで「遠い将来」の話になりますが、デジカメが安価なギガバイト単位のメモリメディアを獲得した時には、RAWデータや無圧縮のTIFFといったレベルの画像で常に短時間の動画撮影を可能にする「静止画カメラ」が登場するかもしれません。

■一般的な動画機能へのニーズ

 視覚情報としては、動画のもつ情報量は絶対です。こうした「動画の一部としての静止画」の話ではなく、純粋に楽しむための動画ならば、MPEG-2までいかなくとも、MPEG-4レベルの動画機能があれば十分だと考えます。
 現在、「DSC-MZ3」や「M603」のようなVGAサイズでフルフレームの動画が撮影できるデジカメが、それなりに評価されています。しかし、デジカメで撮影できる動画の高画質化を進めていくにしたがって、逆に小型・軽量化が進むDVとのバッティングが問題になってきます。MPEG-2記録型のDVカメラは、記録メディアの高度化も含めて、今後ますます小型・軽量化が進み、デジカメの匹敵する200g台の製品が登場する可能性があります。
 デジカメで採用される高画質動画フォーマットは、現在MotionJPEGが中心ですが、これでは高画質で長時間の動画を撮影するにあたって、シリコンメディアには収納しきれなくなります。むろん、デジタル動画と同じMPEG-2動画でも同じです。データ容量が大き過ぎて、当面はメモリカードへの長時間記録は不可能です。こうなると、やはり「デジカメの付加機能としての動画撮影機能」については、MPEG-4のような「適当の高画質でデータ容量の少ない」フォーマットを採用し、DVほどの高画質記録を狙わない方向で、機能搭載が進んでいく方が合理的です。
 特にMPEG-4である必要はないでしょうが、SHARP「VN-EZ5」やPanasonic「SV-AV30」のようなカメラで、静止画撮影部分を200万画素以上にグレードアップしたような製品があれば、非常に面白いと思います。

■さらなる小型化への期待

 本来デジカメは小型化については銀塩カメラよりもずっと優位な立場にあります。デジカメには、フィルムパトローネが不要だからです。2002年はSONY「DSC-U10/20」というエポックメイキングな超小型デジカメ、CASIO「EXILIM」という薄型デジカメなどが商品化されましたが、こうした様々な小型コンセプトは、今後さらに進むでしょう。私は小型カメラが大好きですから、願望も含めて、様々な超小型デジカメが登場することを強く願っています。
 別にスパイカメラのように極端に小型化される必要もないでしょうが、Cheez!SPYZのようなマッチ箱サイズのデジカメでマクロ機能を持ち、200万画素と同程度の画像が取れるのならば、それなりに広範囲なニーズがあることは確実です。
 ただし、超小型カメラ分野においては、やはりカメラ付き携帯電話が最大のライバルになることは間違いありません。

■難しいカメラ付き携帯電話との差別化

 昨年末にも、今後のデジカメにとって最大のライバルは携帯電話端末…と書きました。30万画素CCDを搭載し、動画撮影機能を持ち、メモリカードやUSBインタフェースを備えるデジカメが登場した現在、日常ユースのメモカメラの役割は全て携帯電話が担う…という話は、極めて現実的です。さらに2003年内には、もう1ランク画素数が多いCCDが間違いなく携帯電話に搭載されるでしょう。数年内にメガピクセルCCDが搭載されることは確実です。
 また、カメラ付き携帯電話端末がデジカメより優位にある部分として、携帯電話端末自体がデータ通信機能を備えている…という点があります。3G携帯なら最大384Kから最大1Mbps程度のデータ通信が可能で、これをメガピクセルクラスのCCDとの組み合わせるなら、ビジネス用途も含めて実に多様なアプリケーションに対応します。さらに携帯電話端末には、既にGPSなど位置情報取得機能がフィーチャされています。「デジカメ+GPS+通信機能」となると、高画質というだけの一般デジカメとは全く次元の違う端末ということになります。
 さらに、今後普及する可能性があるIP携帯電話端末にカメラが搭載されれば、そのままデジカメがTCP/IP端末となるわけです。こうなると、既存のデジカメをネットワーク端末にするという考え方が、虚しくなります。
 逆に言えば、既存のデジカメは、こうした高機能カメラ付き携帯電話との差別化を図る必要がありますが、日常ユースデジカメ分野では、いまのところ決定的なアイデアはありません。今後、デジカメの一部市場、特に工事現場撮影など業務用用途市場を中心に、確実にカメラ付き携帯電話に代替が進むことになるでしょう。

■PDAへのカメラ搭載は進まない

 各種PDA等へのデジカメ機能の搭載…も方向性としてはあります。事実、SONY「CLIE」などデジカメ機能を搭載したPDAは人気を呼んでいます。また、ボイスレコーダや腕時計などにデジカメを搭載した事例もあります。ただ、これらについても、部分的にはカメラ付き携帯電話端末が代替していく可能性が高いでしょう。多機能化が進む携帯電話端末は、既にPDA機能を備えつつあります。携帯電話端末の中には320×240dptという解像度を持つ表示部を備えた製品も現れています。加えて、あらかじめデータ通信機能を持っているわけですから、ヘビーユーザー以外のPDA利用方法の範囲では、携帯電話の機能がその多くを代替していくと考えられます。またMicrosohtなども、高度なPDA機能を持つ携帯電話端末分野に参入しつつあります。
 さらに、普通のPDAユーザーはPDAと同時に携帯電話端末も持っているわけですから、PDAへのカメラ搭載は「一部ユーザーに受けるギミック」に留まり、主流とはならないはずです。

■画像圧縮方式の高度化

 全く新しい画像圧縮アルゴリズムの開発・普及には時間がかかりそうですが、JPEG2000の普及にはそれほど大きな障害はないように思います。ただし、2003年の段階では、まだ現行JPEGが主流となるはずです。いずれにしても、メモリカードの大容量化進展だけでなく、それに歩調を合わせた高い画像圧縮率の実現と高画質圧縮アルゴリズムの開発が進めば、デジカメはより使いやすいものとなるはずです。

■撮影学習機能、パターン認識機能等の搭載

 「AI機能の搭載」などというと大げさですが、「ユーザーの意図を学習するデジカメ」という方向性も、有望な商品コンセプトになり得ます。よく使うフレーミングのパターン記憶、状況に対応する露出やホワイトバランスの記憶…などをうまく付加機能化すれば、初心者向けの「利用者の意図を読み取るデジカメ」とか、プロ向けの「効率的な商品撮影を行うデジカメ」などがコンセプト可能です。
 その他、学習機能に類似するAI型の画像処理、画像認識機能として、パターン認識機能の応用があります。フレーミング内画像を分析して、撮影対象ごとの反射率や色を認識し、高度なアルゴリズムで露出を決めれば、現行の「分割測光」をはるかに上回る高度なAE機能が実現しそうです。
 さらにパターン認識を利用した効率的な「動体追尾機能」や高度な「動体予測機能」は簡単に実現できそうですし、同じくパターン認識を利用した「撮影対象の顔を識別して自動的にモデルの名前を入れるデジカメ」など、面白い商品コンセプトも考えられます。

■その他の機能

 現時点で銀塩カメラにあってデジカメにないコンセプトと言えば、超広角と3D、そして実用的なポラロイドと実用的な使い捨てぐらいのもの…、などと前述しましたが、デジカメのバリエーションとして「プリント機能の搭載」は、ニーズがあります。FUJIFILM「Princam PR21」という商品がありましたが、いろいろな意味で未成熟であり、あまり話題になりませんでした。
「Princam」のようにポラロイドフィルムを使うのではなく、小型のカラー熱転写プリンタなどを搭載する商品が有望です。既に、各地のカメラショーなどでは小型ぽUリンタを搭載したデジカメのプロトタイプが出品されています。製品サイズや、インク・用紙の補充、印刷コストなどが実用レベルに達した段階で、「プリンタ搭載デジカメ」が一定規模の市場を得る可能性は高いと思います。
 同じように3D化にも一定のニーズがありまず。銀塩カメラでは、レンティキュラーフィルム方式など、過去に何度も3D化の試みがなされました。デジカメ分野では、デジタルならではの合理的な方法での実現が待たれます。プリントしなくとも、ディスプレイ上で立体視できれなよいのですから、いくらでも方法はあるはずです。


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