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August 23, 2005

自立した18歳

 駒大苫小牧高、優勝報告会中止 生徒にも説明…というニュース、なんでも優勝返上の可能性もあるとかで、まあどうでもいい話ですけど。こちらの記事を読むと、ヒステリックな暴力があったそうで、しかも「野球部長に事実関係を確認したが「30~40発張ったということはないが、そういうなら反論はしない」と答えたそうです。
 で、こうした事件が発覚しただの、隠蔽しただの、はたまた出場停止処分がどうのこうのと…こういう高校野球絡みのニュースを聞くと、規約や倫理を振りかざす高野連という存在の不気味さもさることながら、高校野球を「清らかな青春の祭典」と持ち上げるマスコミの「偽善」にもヘドが出ます。
 私はもともと高校野球にはあまり興味もないし、高校生も高野連が作った規約を知ってて野球やってるわけですから、高野連なる組織を批判するつもりは毛頭ありません。また、高校生がスポーツに熱中するのが嫌いってわけでもありません。先輩だの指導者だのとの上下関係を大事にする体育会系のノリってヤツも、自分には合いませんが、特に嫌いじゃないです。さらに、こうしたスポーツを通して礼儀や節度を学ぶっていう話も、それなりに意味のあることだとは思います。ただ、ともかく嫌いなのが、この世界で日常化しているらしい暴力。毎年のように暴力事件が出てきます。先の明徳義塾の出場辞退もそうですが、高校野球の世界では、上級生が下級生を、先輩や指導者が部員を「殴る、蹴る」っていうのが日常化しているようで、非常に不快です。4月には、広島県の近大付福山の野球部で上級生が下級生に暴力を振るうという事件があり、学校側が野球部の活動を休止させた…というニュースもありました。以前、確かPL学園が夏の甲子園大会の出場停止処分を受けた時も、野球部内に発生した傷害事件が原因でした。この事件では加害者の3年生部員が損害償請求を起こされ、他にも2年生部員が上級生からバットで頭部を殴られ7針を縫う怪我をしたり、1年生部員が上級生から頭部を小突かれ4針を縫う怪我をさせられたりといった話が次々に発覚、野球部内で上級生部員による下級生部員への暴力が日常化していたことが明らかになりました。まったく、こうした陰湿な世界はスポーツとは無関係のはずです。
 さらに不快なのが、高野連の処分話に対して必ず出る意見で、「球児に罪はない」「子供たちがかわいそう」…ってやつ。さらに「何も悪いことをしていない選手まで連帯責任で罰するというのは非民主的」という意見に至っては、アホらしいとしか言いようがない。私はそうは思いません。日常的に暴力行為が存在して、そうした状況を部員自身が認識しているならば、状況を自分たちで正すべき。高校生って、そういうことを自らできる年齢のはず。今回の件だって、部員自身が声をあげないのが不思議です。高校生にもなって、誰かの言うことを何でも「ハイ」はないだろう…って感じ。運動部でも生徒会でも何でもいいけれど、自分たちがある集団・組織に属していて、その組織のあり方がおかしいかどうかを考えないなんて、高校生の自我のレベルとしてはずいぶん低い感じ。比較するのもヘンな古い話ですが、例えばあの福岡伝習館闘争の記録などに出てくる高校生がどのように社会や組織について深く考えていたか…などを読むと、スポーツをやっている子供は純真…みたいなレベルで高校生自身の責任が曖昧にされるのは妙な話です。
 少なくとも17~18歳という年齢は、自立してモノを考えるべき「大人」のはずです。

 ニュースと言えば、中国兵「百人斬り」:原告の請求を棄却…という、こっちの話も結構エグい。この訴訟に関しては「民族派vs本多勝一」という図式がよく出てきますが、どっちもどっち…です。
 まず私は、本多勝一っていう人間は、どうにも好きになれません。朝日新聞に「カナダエスキモー」を連載していた頃を覚えていますが、いつの間にか彼は「大物記者」になり、自分で自分を「大物」と認識するようになってしまった。この話、以前にも書いたかもしれませんが、昔「噂の真相」で本多勝一が「世界中でエスカレーターは片側に立つのがルールである(急ぐ人のために片側を空けておくべき)」と書き、それに反論した一読者に「公的に謝罪要求をする」…という妙な事件がありました。いや、この時には「噂の真相」をずっと読んでいたので、本多勝一のいヒステリックな態度に呆れ果てました。この事件の経緯は、本多勝一に恫喝を受けた本人によって、こちらに詳しく書かれていますが、「自分の意見に反対するやつは潰す」…という本多勝一は、ジャーナリストの資質が欠如しています。
 本多勝一らがリクルートの接待旅行に参加したと報じた月刊誌の記事を巡る岩瀬達哉との名誉毀損訴訟の一件もそうです。事実はともかく、当初の岩瀬達哉に対する本多勝一のヒステリックな対応は、とてもじゃないですけどジャーナリストのそれではありませんでした。
 で、「アンチ本多勝一」という点では私も民族派と呼ばれる方々とまったく同じですが、それは「100人斬り問題」の本質じゃない。この件に関しては、南京虐殺があったかなかったか…も大きな問題じゃないと思ってます。
 この裁判についての民族派の主張は、大筋で「南京虐殺はなかった」→「当然2少尉は100人斬りなどやっていない」→「それが証拠に100人なんて斬れっこない」…というものだと思いますが、まあその通りでしょう。「日本刀で3人も斬れば、どんな名刀でも刃こぼれし、刀身は折れ曲がり、柄ががたがたになる」…と山本七平氏が言うように、私も「100人斬りなどなかった」と思います。ただし、100人斬りがなかったと思うからと言って、南京虐殺はなかった…などとも思っていませんので、念のため。
 で、誰がこの件でいちばん反省すべきかといえば、毎日新聞のはず。当時戦意を煽る戦争報道を続けた毎日新聞が、こちらの記事にあるように「報道時、2少尉は記事で英雄視された。戦闘中の出来事を適正に取材し報じた」…などと胸を張って言ってること自体がおかしいんです。戦意高揚のための紙面作りを競っていたという点では、朝日新聞も同じ。戦後、掌を返すように「民主主義」を唱えたこれらの新聞は、戦時中に自らが果たした役割についての検証と反省が足りません。
 ただし、戦意高揚のためのデッチアゲ記事であろうとなかろうと、野田、向井両少尉側にも問題はあります。野田、向井両少尉は、当時確かに「英雄」になりました。しかも彼ら自身が認めて、各地で講演までしています。裁判でも、原告側は「すでに日本で報道され大騒ぎになっており、当時は否定することができなかった」という苦しい弁解をしていました。事実であれば、悲しい話です。マスコミが虚像を作り上げて、両少尉はその虚像に「自らの意思で乗った」わけです。そして最大の問題は、あの時代に「シナ人(意図的に書きました)を刀で斬りまくった英雄」が存在したことです。戦意を煽る戦争報道に乗せられる「大衆」のあり方は、南京大虐殺の有無よりも、大きな問題のはずです。
 結局のところ、A級戦犯やら天皇やらの「戦争責任」の問題を追及するよりも、「不特定多数の大衆の戦争責任」を追及する方がもっと重要…かと思った次第です。

 本多勝一に対する批判的な見解と、100人斬り問題に対する朝日・毎日両新聞社の姿勢への批判を書きましたが、「オマエは右か」という罵倒メールをもらいたくないので(笑)、再度確認しておきます。私は「数」はともかく、事実として南京虐殺はあったと考えています。機会があれば、いずれその根拠を書きます。

投稿者 yama : August 23, 2005 05:46 PM

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