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ライターというお仕事  その3   2002/11/27

 ライターの仕事には、多様な受注形態があります。また、単にテキストを書くだけでなく、ライティングから派生する様々な仕事もあります。
 「テキストを書くだけ」のライターを目指すのも構いませんが、ライティング以外の仕事がこなせると、仕事の幅が広がり受注機会も増えることになります。また、受注する作業範囲が増えるにつれて、ページ当たりの単価も高くなります。
 私のオフィスでの受注が多い「PC系雑誌のライティング」という仕事を中心に、ライティングに派生する様々な仕事やライターに必要なスキルについて、経験的な話を少し書いておきましょう。


■取材

 「取材」とは、一般的には「人に会って話を聞くこと」です。アポ取りも含めて編集者が取材の段取りを整えておいてくれることも多いのですが、時には全てをライターがこなさなければならないケースもあります。取材時間は制限されていることが多いので、事前に質問の要点だけはまとめておきます。また、取材対象分野について、事前によく調べておくことも大切です。さらに、取材で本音を聞きだすためには相手との関係が重要です。初対面の人と短時間で良好な人間関係を築くことで、よい話、重要な情報を聞くことが出来ます。
 うまくインタビューをこなすためには、場数をこなして慣れることも大切ですが、やはりコミュニケーション能力とあらゆる分野についての豊富な知識が必要です。コミュニケーション能力については「天性」の才能の部分もありますが、知識は勉強することで補うことができます。よいインタビュアーになるためには、たくさんの本を読み、TVや映画を見るなど、幅広い分野での知識を養っておくべきです。
 …と、こんな「インタビューのコツ」のような常識的な話を、ここで延々と書く気はありません。まあ、アポ取りと取材はライターの基本的な仕事の1つ…ということです。
 ところで、取材にあたっては「信頼のおける録音ツール」を用意することも大切です。最近では小型で高性能のICレコーダーが出回っていますが、私は本当に重要な取材時にはICレコーダーは使いません。以前はマイクロ・カセットレコーダーを使ってましたが、最近は普通の単三電池駆動の小型カセットレコーダーを使います。ICレコーダーはちゃんと録音されているかどうかを確認しづらいので、「録音ミス」が怖いのです。その点、旧式のカセットレコーダーは赤いランプが点いてテープが回っているのが見えるので、動作している状態を確認できます。これは、かなりの安心感があります。さらに電池やテープはコンビニで入手できるので、急な取材が入った時にも安心です。

■台割とラフ

 ライティングの発注時には、前述したように、デザイナーがきちんとページレイアウトをした上で、レイアウト用紙に文字数を指定してくるようなケースもありますが、もっと「丸投げ」に近い発注形態もあります。例えばライター自身がラフなレイアウトを作ることを要求されるケースは多いですし、時にはライターが台割の作成まで行うケースもあります。編集者やページデザイナーの仕事の一部をライターが担うわけです。
 例えば、あるパソコン用ソフトの解説本のライティング作業を受託したケースでは、版元から次の作業を依頼されました。

 ・割り当てページの台割作成
 ・ページレイアウトのラフ
 ・ライティング
 ・文章に対応した画面撮影(PC画面のキャプチャ)とキャプション

 台割作りやラフの作成などは、本来は編集者やデザイナーの仕事です。こうした作業込みで受託すると、ライターの仕事としてはきつくなるイメージがありますが、逆にページ構成や文字数を自分で決められるので、かえって仕事がやりやすくなる場合もあります。また、制作に企画段階から参加できる面白さもあります。
 いずれにしても、こうしたケースでは通常の原稿料よりも高いページ単価が設定されるので、能力的に作業が出来るライターならば受託した方が快適に仕事ができるかもしれません。
 …そうなると、台割作成やラフ制作といった仕事をどこで覚えるか…ということになります。編集プロダクションや出版社に所属した経験を持たず、いきなりライターになった人には、本や雑誌の制作プロセスを知る機会を作った方がよいと思います。
 まずは、編集部に頻繁に出入りし、また編集者との共同作業の機会を増やします。ラフなんてものは、編集者によっていろいろな作り方をしますが、一度見て覚えてしまえば、見よう見まねで作れるものです。また、本の制作プロセスを知るための最もよい方法は、DTPデザイナーと共同作業を行うことです。最近の雑誌、単行本はほぼ100%がDTPで制作されます。担当するDTPデザイナーとの密なコミュニケーションを作ることで、本や雑誌の制作プロセスを知ることができます。

■画面キャプチャー撮影&キャプション

 「画面キャプチャー」も、コンピュータ系雑誌のライターにはお馴染みの仕事です。画面キャプチャーは、「画撮(ガサツ)」とも言います。コンピュータのソフト系記事などでは必須の作業です。
 ゲーム攻略記事やパッケージソフト解説記事などでは、画面キャプチャは重要な紙面構成素材となります。また、ネットワーク関連の解説本やパソコンの組み立て記事などを書くときにも、各種設定画面やドライバーのインストール画面などが必要になります。パソコン関係のライティングでは、画面キャプチャー撮りに相当の手間を掛けているケースが多いのです。
 WindowsでもMacintoshでもOSだけで画面キャプチャーは可能ですが、一般的にはキャプチャ作業とキャプチャー後の画像の処理や管理に便利な画像処理ソフトを使います。ただ、キャプチャーすればよい…というものではなく、動くゲーム画面や動作中のソフトの場合にはタイミングが難しく、何度も撮り直しをします。さらに、費用に応じてキャプチャー画像のトリミングなども行います。

 画面キャプチャーがあれば、各画面に対応するキャプションを作る作業もあります。キャプションはキャプチャー画面だけに付くわけではなく、写真や図などにはほぼ必ずキャプションが必要です。キャプションは字数がきっちりと限定されているケースが普通で、時には広告のコピーを書くようなセンスも必要です。

■入稿用パッケージ

 1冊の本で使うキャプチャーや写真が数百点に及ぶケースなどでは、前述したキャプチャー作業や撮影作業、キャプション作成作業自体にも大変な時間を必要としますが、キャプチャーと対応するキャプションを入稿用に整理するのも大変です。編集者やデザイナーにわかりやすくするため、エクセルフォーマットにキャプション群をコピー&ペーストして、対応するページ数や画像番号とともに一覧にしたりします。
 入稿時には、本文テキストだけでなく、キャプチャーや写真、そしてキャプションなどを整理して、さらにラフや指示書を添付して、編集者やデザイナーがわかりやすいように揃える…という作業があります。これがいわゆる「入稿用パッケージ」です。これはかなり大変な作業で、写真やキャプチャー、そしてキャプションの点数が多いケースでは、もっとも手間がかかる作業となります。

■DTPの知識

 ライターにはDTPの知識もあった方がよいと思います。必須というものではありませんが、「あるにこしたことはない」という感じですね。私のオフィスでは、ページデザイン込みでライティング仕事を受けることがあります。むろん、こういう場合はページデザインだけは専門のいデザイナーに任せるのが普通で、ライターがMacintoshを使ってQuarkXPressでページデザインをするわけではありません。しかし私が「ライターにもDTPの知識があった方がよい」というのは、デザイナーや編集者とのコミュニケーションを円滑に進めるためです。
 制作進行中には、様々な「変更」が出ます。例えば、急なコンテンツの変更、取材先の変更、ページレイアウトの変更などは日常茶飯事です。こうした変更に対応して、ライティング内容も変更しなくてはなりません。そうした際に、例えばデザイン作業面で「差し替えや修正にかかる作業時間」「変更後にはどんなページデザインが可能なのか」「空きが出た部分をうまく処理できるのか」「どの範囲で文字数の調整が可能なのか」、…といったことを、実際のデザイン現場の作業に即した形で知っていると、編集・デザインを含めた総合的な進行状況判断が可能です。つまり、デザイン作業の都合も考えたライティング…ができるわけです。こうした配慮をすることで、デザイナーに対して無理な負担を掛けなくて済みますし、作業全体もスムーズに流れます。

 結局のところ、本や雑誌の制作というのはチームプレイです。ライター、編集者、デザイナー、イラストレーターなどが一体となって進めていくものです。自分の作業範囲だけでなく、他のスタッフの作業内容についても知っていることで、お互いに配慮しながら円滑に制作作業を進めることができるのです。

■写真撮影

 写真撮影もライターの重要な仕事です。むろん、昨今ではほぼ100%デジカメで撮影します。
 10年ほど前までは、「素人が写真を撮る」ケースはほとんどありませんでした。印刷媒体向けの写真撮影には、ほぼ必ずプロのカメラマンが使われたのです。しかし、現在では「編集者やライターが写真を撮る」ことは、ごく当たり前のことになってきました。経費節減の意味もありますが、それよりもDTP全盛の時代になって編集者やライターが自分で写真を撮った方が、制作進行上便利だという事情があります。また、コンシューマ向けデジカメの高性能化によって素人でもかなり質の高い写真が簡単に撮れるようになった…という事情もあります。

 むろん、編集者やライターがデジカメで写真撮影する…というのは、媒体の種類や写真が使われる部分によります。間違ってもアイドル雑誌のグラビアや広告色の強い商品撮影なんかを素人が撮影することはなく、これらはさすがにプロの仕事です。また、製品紹介なんかに使う商品写真は、メーカー側が用意したポジやデジタル画像を使うのが普通です。しかし、一般記事中で使われる小さめの写真や、スポンサーがあまりうるさくない説明用の商品写真などは、ほとんどがデジカメで簡単に撮影しちゃうわけです。
 例えば、私が企画やライティングに関わったPC系や携帯電話系の雑誌やムックなどは、表紙の写真とメーカーからもらう製品写真を除いて、製品写真から店舗の写真、座談会の人物写真など、全てライターか編集者がデジカメで撮影しました。また、現行のメジャーなパソコン雑誌の場合、自作記事中で使うパーツの写真、買い物記事で使う商品写真、インタビュー時の人物撮影など、全くカメラマンを使わず全てデジカメで撮影します。技術解説系の単行本でも、機器接続の説明図や製品写真など、本文中で使われる写真のほぼ全てを、私自身がデジカメで撮影しました。
 さらに、こうしたPC系、技術系の雑誌や単行本だけではありません。個人的に関わっているタウン誌でも、取材や店舗・レストラン紹介、商品や料理の写真など、全てライターがデジカメで撮影しています。
 従って、ライターは分野を問わず、デジカメによる撮影技術を持っていた方がよい…というレベルではなく、いまやデジカメによる撮影技術は必須…と言ってもよいでしょう。「撮影技術」といってもまあ、プロ並である必要は全くありませんが…

■ライターが使うデジカメ

 このサイトは一応デジカメサイトなので、デジカメについての情報を補足しておきます。
 ライターとしての仕事を円滑にこなすためには、「画質重視の機種」と「機動性重視の機種」の2種類を揃えておくのがベストです。むろん、1台で兼用可能ですが、仕事の幅を広げるためには2機種用意しておいた方が便利です。
 「画質重視の機種」としては、使いこなせるのならデジタル一眼レフが基本ですが、交換レンズも揃えるとなるとフリーライターには金銭的負担も大きいし、使いこなすためには一定の写真技術も必要です。
 あまり写真技術を持たないフリーライターが、出来る限り美しい写真を撮る…というコンセプトで考えると、一眼レフタイプではない「上位機」が適当です。フルオートでも美しい写真が撮影できる機種がよいのは当然ですが、複数の測光方式から選択ができ、露出のマニュアル設定も可能、3〜4倍のズーム搭載、マクロ撮影機能が強力、そして外部ストロボが利用できる…といったあたりの機能を備えた製品が条件になりそうです。また、手ブレを防ぐためにも、あまりコンパクトな機種ではなく、適当な重量とサイズがあった方がよいかもしれません。
 経験的に見て300万画素機でも十分ですが、現在なら高機能の400万〜500万画素機が安価に購入できるので、そのあたりは予算に応じて購入すればよいと思います。仕事で使うデジカメなら、あまり予算をケチらず、実売価格で5〜10万円程度を考えましょう。
 ちなみに、現在の私はパソコン雑誌向けなどあまり画質を要求されないブツ撮りには、マニュアル機能を持つ一世代前の300〜400万画素機、ある程度の画質を要求されるタウン誌系やインタビュー時の人物撮影にはニコン「COOLPIX 5000」あたりを愛用しています。

 次にサブ機として「機動性重視」のデジカメがあるとよいと思います。これは300〜500万画素クラスのコンパクトデジカメが適当です。ショーの取材や出張先での利用、さらには日常的に持ち歩いて、打ち合わせの席上でサンプル商品をテスト撮影するなど、多目的に使います。高画質機を持ち歩いても構いませんが、カバンに放り込んでおいて常に持ち歩ける機種がよいので、総重量で200g前後の小型・軽量機でバッテリー寿命の長い機種を選択したいところです。むろん、高画質機1台で兼用しても構いません。
 あと、写真撮影機会の多いライターなら、できれば銀塩タイプの一眼レフカメラのセットを予備機として用意しておくとよいでしょう。いかなる場合にも動作が確実な銀塩カメラは、何かと安心です。





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