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女性向け商品の考察

 女性デジカメユーザーが増えているそうです。ある調査会社によると、昨年度のデジカメ購入者の男女比は7:3ぐらいだそうです。今年度はそれよりもさらに女性が増える同です。よいことですね。デジカメの商品コンセプトには、どうも男性固有の趣味的な部分が抜けないような気がします。
 そんなことで、情報処理分野のコンシューマ向け製品全般について、「女性向商品」の存在について少し考えてみました。


■「女性向け商品」の勘違い

 パソコンやデジカメ、携帯電話など情報処理分野のコンシューマ向け製品で「女性向け」とされるものにロクなものがない…と知り合いの女性(30代後半のインダストリアル・デザイナー)が嘆いていました。女性向けとなると「パステルカラーを採用する」「曲線の多いデザインにして優しさやかわいらしさを強調する」…など、手法が決まっているのです。ひどいケースでは、「操作がやさしく簡単なもの」が女性向けとされていたりします。
 知人の女性は、こうしたわざとらしい女性向け商品は全く勘違いの賜物だと言います。私も周囲の女性を見ているとそんな気がします。
 さて、その知人の女性によれば、こうした見当違いの女性向け商品が登場する理由は2つあるそうです。1つは「男性がステレオタイプに女性の好みを想定して企画立案する場合」、2つめは「男性社会の中にあって男性に対抗する存在(または対等な存在)としての女性であることを意識する女性が規格立案する場合」だそうです。
 1つめの理由はさもありなんという感じですが、2つめの理由はちょっとわかりにくい部分があります。要するに企画力において女性は男性と対等であると主張しており、また実際に実力もある女性スタッフが「女性による企画」であることを強調しようとした結果、なんとなくずズレた企画が出てくる…ってことらしいです。  そんなわけで、情報処理分野の製品に関しては、「男性向け=高機能機種」、「女性向け=低機能・簡単操作でパステルカラー」みたいなステレオタイプの図式が出来上がるんだそうです。

■ビジネス社会と女性

 私の周辺を見ていると、ビジネス社会で活躍する女性には3つのタイプがあります。
 1つは、現実の中で女性・男性という立場の違いにこだわらずたんたんと仕事をする人間です。こうしたスタンスをとるためには、「職場環境に男女差がない」ことが基本的な条件になります。まあ、セクハラとまでは行かなくとも、「ビジネスウーマンに対する何らかの偏見や思い込み」がある男性が多い職場では、女性がこうしたスタンスをとることは非常に難しいようです。
 次に、「男性と対等にやっていこうということを強く意識して、必要以上に頑張る」タイプのビジネスウーマンです。これは現在の日本の多くの職場環境を考えると、止むを得ないスタンスです。女性が優秀なほど、また仕事をやればやるほど風当たりが強くなる…という職場は依然として多いですから。
 3つめは「女性であることを武器にする」というタイプです。これは性的な意味で言っているのではなく、女性に対する偏見をうまく逆手に取るやり方です。本音の部分で女性に対して偏見がある男ほど、表面的には「自分は男女平等の思想を持っている」ことを公言します。そういった男性の屈折した心理を逆手に取るのです。

■女性であることを活かす

 この3つめのタイプの女性としてNTTドコモに在籍してiモード事業を成功に導いた松永真理氏を思い出しました。
 彼女の書いた「iモード事件」という本を読んでいると、松永真里氏が「NTTドコモという大所高所からモノを見る人間が多い組織の中で、一般人の『常識』をビジネスの世界に持ち込んだ」ことが、述べられています。松永真里氏が「一般人の常識」と「NTTドコモの従来型ビジネスの常識」を対比させるとき、「一般人の代表」として自分自身を位置付けていますよね。そこで自分自身が女性であることを特に強調するわけではないのですが、どこかに「一般人の感覚は女性の方が持っている」という主張が見え隠れします。
 これはうまいやり方だと思いました。「一般の人の常識」を知らない「従来型のビジネスマンの常識」なるものを打破するためには、「自分が彼らと異なっている」ことを思い知らせる必要があります。そこでは、彼女が「女性」であることがかなり有効に働いたと推定できます。なぜなら、従来型のビジネスマンにとって「一般人の考え」がわからないのと同程度に「女性の考え」もわからないわけで、そこで「一般人の代表としての女性」という立場を貫かれると、余計に反論がしにくくなっただろうと推定できるからです(この部分の私の説明はうまくないですね…)。

■やはり偏見と思い込みはある

 さて、話は前後しますが、典型的なビジネスウーマンの2つめのスタンス、すなわち「男性と対等にやっていこうということを強く意識して、必要以上に頑張る」タイプの女性の話ですが、こんな風に女性が肩肘貼るのもわからなくもありません。ビジネスの世界で重要なポジションに就けば就くほど「抵抗勢力」が増えるからです。口では「男女の能力差はない」などときれいごとを言っても、内心では「女なんて…」という発想を捨てきれない男性はいっぱいいます。特に40代以降の中高年に多いかと思ったら、そうでもありません。若い男性の中にも「女の上司はいやだ」なんて思ってる人はけっこう多いみたいです。こういう低レベルの男が現実にたくさん存在する他、相変わらず「男の生き方」に対する、ステレオタイプな主張が繰り返されます。さらに、「男は寡黙に決意を秘める」とか「男は強くなければならない」とか、まあ高倉健やら鶴田浩二やらが映画で演ずる男性のイメージが好ましいものとしていろんなメディアで喧伝され、それを主張する人がたくさんいます。こういう社会である以上、参議院議員になった田嶋陽子氏のように声高に「女性の権利」を主張する人が登場するのもやむを得ないかもしれません。
 でも現実問題として、あと20年もすれば放っておいても女性は社会を動かす中心に位置するでしょう。なぜなら、最近の若い世代を見ている限り、男性よりも女性の方が優秀で、社会に対する適合性に勝っているからです。

■女性の方が優秀

 全く個人的な見解を話せば、私は自分が行っているビジネスの世界で、仕事のパートナーやクライアントの担当者などが、女性であろうと男性であろうと気にしたこともありません。ビジネス上の付き合いにおいては、性差も年齢も学齢も全く考えたことはありません。ただ、自社のスタッフに関しては、ここのところ女性の活躍が非常に目立つことを実感しています。
 さて、最近の30代半ばぐらいまでの世代では、ビジネス社会における適応能力という面において男性より女性の方が明らかに優秀です(優秀な人の割合が多い)。これは、私の体験に基づいての話です。私のいるささやかなオフィスでスタッフやアルバイトを募集すると、昨今の不況の中で、けっこうたくさんの人が面接に来てくれます。職種はプログラマーであったり、編集アシスタントなどです。むろん応募者の男女比はほぼ半々なのですが、実際に採用するのは女性の方が多くなってきています。つまり、男性よりも女性の方が優秀な人間が多いのです。
 頭の良さや募集職種の経験度といった能力の問題ではなく、ビジネスへの適応度が高そうな人が、女性に多い感じがします。年齢が下がれば下がるほど優秀な女性のウェイトが高まります。
 また、男性の方が精神的に弱い人間が多いのも事実です。海外を旅行していても、女性の一人旅ってけっこう多く、逆に男性はグループの旅が多いような気がします。これは絶対数での話ではなく、「すぐにつるむ、群れる」タイプの若い男性が目立つのです。

■男女によるニーズの違い

   話を商品デザインや商品コンセプトの問題に戻しましょう。実際に情報処理端末等のデザインを仕事としている知人の女性の弁によれば、情報処理分野のコンシューマ製品に関しては、製品機能に対するニーズやデザインに対するニーズは男性でも女性でもほとんど変わらないのだそうです。人間工学的な面から見て女性の方が体力が劣るなどの特性はあるもののニーズの基本はほぼ同じだとのことです。
 ただし、男女間でニーズが変わらない条件として、「社会で積極的に活動している」という条件をつけています(専業主婦や女子学生等を除いた層)。これは大手広告代理店がマーケティングを行った結果でもあるそうです。
 男性と女性の購買行動で唯一異なるのが、男性の方が「モノフェチ」が多いということだそうです。つまり男性は、不要な機能であってもその存在にこだわったり、機能の存在をはっきり「見せ付ける」製品が好きとのことです。これは何となくわかりますね。要するに男性は、ある意味で「商品の成熟度」が低い商品を好むのです。
 また、男性の方が「ブランド力があり,高価で機能の高い製品を選ぶ」傾向にあるそうです。むろん、これはパソコンやデジカメなどの情報処理分野の製品や、クルマなどに限った話で、女性だって服や化粧品を選ぶ時にはブランド力に頼る傾向は強いですが…。
 そしてこれは重要な点ですが、女性はカワイイ製品を欲しがるのか?という問題があります。むろん、そうした女性もたくさんいるそうです。ただし、知人の女性が言うには「少なくとも日常的にビジネスの形で社会と関わっている女性にとっては、情報処理分野の製品については別にカワイイ製品じゃなくてもいい」という声の方が多いのではないか…ということです。私もこれには納得できます。周囲で働いている女性に聞くと、みな同じことを言います。要するに「必要以上に女性を意識した製品は逆に欲しくなくなる」と…。

■女性ユーザーの増加に期待

 機能の細かい部分を穿り返すような昨今のデジカメ評論を読んでいると、私はデジカメも女性ユーザが増えた方が優れた製品が登場するような気がします。「小型で基本性能に優れ、操作性が簡単でオートで美しい画像が撮れる」というのが私の「理想のデジカメ」です。こうしたデジカメを本質的に選択するのは、マニアックな男性よりも女性に多いという気がしています。
 というのも、最近の重箱の隅を突付くような一部評論化のデジカメ評論記事を読んでいると男性に多い「モノフェチ」な部分が、デジカメのいたずらな高機能化や多機能化を促している部分を感じてしまうのです。  かくいう私自身が「モノフェチ」な部分がありますから、「高機能・多機能」な製品が嫌いではありません。しかし「高機能・多機能」というのは、それを見せ付けるように機能としてフィーチャするのではなく、ユーザが高機能であることを知らないで使えるような形でフィーチャされるのが望ましいのです。前にも書いたように、例えば「高度な露出補正機能」を搭載するよりも、「自動露出補正機能」を搭載すべきなのです。  勘違いして欲しくはありませんが、高機能なものを要求するニーズは男性も女性も同じはずです。だから「女性向け商品=低機能」という考え方は論外です。女性は高機能ではあっても、それをあからさまに見せ付けるような商品はあまり望まないと思うのです。
 私は女性ユーザーが増えることで、低機能な製品が増えるのではなく、「シンプルで高機能」な製品が増えると考えています。言い換えれば、女性ユーザーが増えると「商品の成熟度が高まる」と思うのです。

■最後に…

 全くの余談ですが、男性・女性のモノの考え方に触れる話題って、ホントは避けるべきなのでしょうね。何か「一家言」ある人が多くて、必ず議論が白熱する話題の1つなんだそうです。まあ、政治、宗教、プロ野球等の話題と同じで、「ジェンダー」に関する話題はサイト内での感情的なトラブルを避けたい場合は、こんな話題には触れない方がよいのでしょうか。ましてやここはデジカメサイトですから…


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