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デジタル一眼レフの規格について考える    2002/10/30

 私は「小さなレンズ交換式デジカメ」が欲しい。具体的に言うと、200〜250g程度のデジカメで、レンズ交換できるものが欲しいのです。ズーム嫌いな私でも、レンズの画角に関しては使い分けてみたいという欲求はあります。そうですね、とりあえずはオーソドックスに28o、50o、85o、135o、200o…と5種類をラインアップしてくれれば十分です。きっと最初に28oと200oの2本を揃えて遊ぶでしょう。
 小さな一眼レフ…というコンセプトでよいのですが、デジカメの場合は液晶ファイダーがあるので、モニタで実像さえ確認できれば一眼レフじゃなくとも構わないわけです。ライツミノルタCLを一回り小さくしたようなデジタル・レンジファインダー機も面白いかもしれません。

※ CCDのサイズについてはこちらを参照して下さい。


■35mmフルサイズと4/3型

 そこで、ここのところ各所で議論が沸騰しているデジタル一眼レフの撮像素子のサイズ問題です。
 奇しくも、キヤノンが35mmフルサイズ(36×24mm)、有効画素数約1,110万画素のCMOSセンサーを採用した「EOS-1Ds」を発表しました。ほぼ時を同じくして、オリンパスはデジタル一眼レフ用の新規格「Four Thirds System」を提案しました。撮像素子のサイズを4/3型に規格統一するというもので、18×13.5mmという規格です。これは35mmと較べて面積では約1/4になります。
 どちらが合理的で、そしてどちらの方向性が今後の主流となるのかは知りませんが、基本的に私は、まず「デジカメでは現行の銀塩フィルムの規格である35mmを捨てるべき」…だと思っています。そして、特にオリンパスの「Four Thirds System」を支持するわけではありませんが、デジタル一眼レフ規格には35mmフルサイズではなく、もっと小さい面積のCCDを標準化すべきだと思います。

■メリットとデメリット

 35mmのフルサイズCCDの優越性を主張する人の多くは、次の2点をメリットとして挙げるはずです。

  @銀塩一眼レフカメラのレンズ資産が利用できる
  Aチップサイズが大きいCCDの方が高画質

 @については、現行の銀塩一眼レフカメラのレンズというのはメーカーによってマウントが異なる他、同じメーカーでも複数のレンズマウントを採用しているため、レンズ資産継承のメリットをあまり感じません。デジカメ用のレンズマウントが新規格になっても、複数のメーカーで新規の共通化が進むのなら、そちらのメリットの方が大きいように思います。
 Aについては確かにその通りです。CCDは多画素化および小型化に伴いセンサの開口面積が小さくなり感度低下を招きます。当然開口面積が大きい方が感度が高く、ダイナミックレンジが高いわけです。CCDの面積が大きければレンズも大きいので、レンズの解像力も上がります。画質については、文句なしにチップサイズが大きいCCDに軍配が上がります。
 反面、大きなCCDにはデメリットもたくさんあります。最大の問題は、大サイズのCCDは製造プロセスの問題で低歩留まり、高コストになるということです。さらにレンズも大型化することで高コストになるわけです。デジカメユーザーの底辺を広げ、銀塩ユーザー層とは異なるマーケットを開拓するためには、価格を下げて広範囲に普及させることが必須です。量産規模を大きくすることは、低コスト化だけでなく、製品の品質をアップすることにつながります。

 もう1つの大型CCDのデメリットは、周辺部の光量落ちの問題です。大型CCDは入射角が鋭角になりやすく、その結果周辺部の感度が落ちる…という現象を起こしがちです。CCDは感度を上げるため各画素ごとにマイクロレンズがついているものが多くなっています。各画素に届く光線の角度が垂直でない場合は、それに応じて各マイクロレンズ中心とCCDの各画素の位置をずらす必要があります。周辺部になるにしたがってマイクロレンズによる光線の集光点とCCD各画素の位置がずれ、光量にロスが生じるのです。

■広角と望遠に対するアマチュアのニーズ

 受光面積が大きい方が、レンズ焦点と結像面に距離を確保できるので、広角レンズには有利です。
 でも、現行デジカメ機種を見ている限り、35mmフルサイズよりもかなり小さい2/3インチや1/2インチサイズのCCDを使ったとしても、28o程度の画角なら大きな問題はありません。私は、一般的な意味でのアマチュアにとって、広角はとりあえず28mm程度で十分と考えます。さらに譲っても、24mmで十分でしょう。
 実際にアマチュア(銀塩のハイアマチュアを覗く)のカメラ愛好家のうち、どれだけのパーセンテージで28mm未満の広角レンズを使いたいと思うのでしょうか? パースペクティブが強く出る24o以上の広角レンズは、普通のアマチュアにとってはけっして使いやすいレンズではありません。21oレンズとなると、パースが効き過ぎた「虚構の画像」となってしまいます。リコーのコンパクトカメラ「GR21」のように、それはそれで非常に面白く使えるのですが、一般ユーザーが日常的な用途で写真を撮影する時に多用する意味はあまりないように思います。24o以下の広角レンズを使いたいユーザーは、ハイエンドのシステムへ移行すればよいと思います。
 反対に望遠については、一般のアマチュアに強いニーズがあります。「遠くに見えるものを引き寄せたい」という人間の本質的な要求に基づくものなので、相当に高い倍率まで、アマチュアのニーズがあるのです。単純な話、子供の運動会や発表会の写真を撮る…と言う目的のためだけでも、6〜10倍の高倍率望遠レンズにはニーズがあります。望遠レンズに関しては、CCD面積が小さい方が、レンズを大幅に小型化できるので圧倒的に有利です。

■35mmフィルム規格の起源

 デジカメをシステム化するにあたって、銀塩のフィルム規格である「35mm」というサイズにこだわる必要は、どう考えてもありません。CCDの規格化にあたって、「35o」という言葉が一人歩きしている感があります。
 35mmというフィルム規格は、もともと映画用のフィルムから生まれたものです。映画宣伝用や撮影確認のためのスチル写真を撮るために映画用フィルムを短く切って利用したことが始まりです。この「映画フィルムの切れ端し」を使って、1925年にライカが35oフィルム専用カメラを発売したのが普及のきっかけになりました。さらに1934年にコダックがパトローネタイプの35oフィルムを使った「レチナ」というカメラを発売し、現在の35oフィルム規格が固まったのです。
 35oフィルム規格なんて完全に偶然の産物だし、規格統一の経緯には「技術的な要因は」全く考えられていません。実にいいかげんなものです。こうして見ると、デジタルカメラに35oという規格を採用する必然性がありません。高画質化のためにCCDの面積を大型化したいのなら、逆に35oよりも大きいサイズを提唱したって構わないのです。
 古い規格にこだわることで、技術進歩を妨げるのはいただけません。

■複数の規格乱立は歓迎

 将来、CCDの製造技術が飛躍的に進歩するか、またはCCDに代わる撮像素子が主流になったとき、35mmフルサイズどころか、6×6などブローニーサイズの撮像素子も簡単に製造できるようになるかもしれません。そうなったら、プロ用や特殊業務に超大画面CCD搭載デジカメを商品化すればよいのです。高くても大きくても、欲しい人、必要な人は買うでしょう。
 だとしても、光学系はさらに大きくなるわけで、そんなバカでかいカメラは私は欲しくないですね。むろん、すごく高感度でしょうから、星空などを撮影するには最適でしょう。その他、いろいろな分野で業務用途に使えるでしょうし、極限の高画質を求めるプロが使う分にはどんなに値段が高くても大きくても構いません。第一、デジカメなんて新しい分野では、いろいろな規格があった方が面白いと思います。乱立した規格は、いずれは自然に淘汰されます。ただし、ハイエンド向けの規格とは別に、一般ユーザー向けの小型CCDによる安価な一眼レフ規格があることが望ましいと思います。
 でも、当面は適当に小さなCCDサイズの規格で、安価な小型の一眼レフが登場することを期待しています。


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