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WS30 SLIM はどこが変わったか?   2001/5/1

 日立マクセル「WS30」の後継機、「WS30 SLIM」が発売されました。簡単なインプレッションを報告するとともに、実写画像を掲載します。機能や画質に大きな変化はありませんが、外観イメージはかなり変わりました。


■外観デザイン

  




 ずんぐりむっくりしていた旧WS30と較べて、大幅に厚みが薄くなり、そのかわり縦横が少し大きくなりました。ほぼクレジットカードと同じサイズで、シャツの胸ポケットにすっぽりと収まります。本体重量はほとんど同じですが、バッテリーが単3から単4になった分、軽くなりました。(SLIMの写真があまりよくない点はご容赦下さい。後で撮りなおします)。
 外観のイメージは大きく変わりました。明るいパール系のカラーリングといいSLIMのロゴといい、旧WS30の「質実剛健」なイメージから、ライトでポップなイメージになりました(悪く言えば質感がなくなり少しおもちゃっぽくなりました)。「100%女性向き」とまでは言いませんが、女性ユーザーをかなり強く意識したことは確実でしょう(日立マクセルの公式サイトのイメージも女性を強く意識したものですね)。付属のポーチもデザインが一新され、これまたライトな感じのものになりました。
 こうしたイメージの変更については、賛否両論、好き嫌いがあると思います。SLIMになって特に顕著に機能が向上したわけではないので、このポップなイメージが嫌いな人は、旧タイプを販売しているうちに購入しておいた方がよいかもしれません。個人的には、新旧両タイプから選択できるとよかったのですが…。

■操作性

 旧WS30では上部にあった液晶パネルと操作ボタンが、背面に設置されたのが最大の違いです。操作ボタンは普通に構えた状態で右手の親指で操作でき、液晶画面でのモード確認もしやすく、旧WS30より操作性はよくなったと思います。各モードや操作方法は旧WS30と全く同じです。
 ホールディングもOK。多少大きくなって厚みが薄くなったので、より銀塩コンパクトカメラを構えた感覚に近づきました。また、構えた時にうっかりレンズ部を左手で覆ってしまう心配が減りました(旧WS30ではよくやります)。とは言うものの、軽くて小さいので手ブレには注意が必要です。
 シャッターボタンの感触は、割としっかり「押す」感じがあり、旧WS30よりも確実によくなったと思います。
■スペック

 8MBのメモリ、JPEG保存など、基本スペックで大きく変わった部分はありません。しかし、細かいところでいくつか変更点があります。
 まず光学系ですが、旧WS30が「f=5.13mm (35mm判換算35mm)、F=4.0」であったのに対し、SLIMは「f=6.16mm(35mm判換算42mm)、F=3.47」となりました。画角が広角寄りだった旧型に対し、標準レンズに近くなっています(私は旧型の画角が好きです)。パンフォーカスなので、画角が標準寄りだとピントの合う範囲が狭くなるなどの不利があるかもしれません。でもF値が明るくなったのは歓迎。4.0→3.47は、かなり違います。
 また、シャッター速度は旧WS30が「1〜1/10,000秒」であったのに対し、SLIMは「1/2〜1/10,000秒」と低速側が1/2秒になりました。これは、スペック的には後退です。
 その他、ストロボのガイドナンバーは2.5で旧型と同じ、マクロモードが0.6m以下で最短0.2mというのも同じです。
■バッテリーの持ちはかなりダウンか?

 スリム化に伴い、単4型バッテリー2本に変更されました。アルカリ電池の他に、ニッケル水素、ニッカドの二次電池が使える点は変わりません。
 旧WS30が単3型2本だったので、単4型になると電力量で計算して約40%に減ったことになります。消費電力が同じなら、バッテリーの持ちは半分以下になるはずです。ところが、旧WS30の消費電力が最大280mAであったのに対し、SLIMは最大400mAと逆にアップしてしまいました。そうなると、電池の持ちは1/3程度になる可能性があります。
 旧型はアルカリ電池で確実に500枚以上(ソニーのウォークマン用高性能アルカリ電池を使って時々ストロボを使う状況で800枚以上は確実に撮影できました)撮れるカメラなので、それが300〜400枚程度の持ちになったところで、普通の使い方では特に大きな影響がないと考えていました…。
 実際に使ってみると、購入時についてきたアルカリ電池は、わずか80枚ほど撮影したところで電池マークが半分のところを指し(ストロボ発光は3〜4回だけ)思ったよりもバッテリーの持ちは悪いとびっくりしました。しかし、最終的には220枚の撮影ができました。購入時についてくるアルカリ電池の性能が低かった可能性を考えて、次にロングライフの高性能アルカリ電池を入れました。ほとんどストロボを使わない状態ですが約480枚の撮影ができました。まあまあの結果です。これなら普通に使う分には、バッテリーの心配をする必要はないでしょう。
 私にとって問題なのは、バッテリーの汎用性と入手性です。単4よりは単3の方が入手性がよいと思います。また私は、他のデジカメを含めて単3型のニッケル水素を大量に使用しているため、それが使えなくなったのは残念です。基本的には、単3型2本の旧型のバッテリーの方を支持します。

■その他

 添付ソフトの「Presto!Mr.Photo」のバージョンが、1.5から2.1に上がりました。起動すると左側にエクスプローラー風のフォルダ表示がされ、一般的な画像ブラウズ・処理ソフトの操作感に近づきました。はっきり言って使いやすくなりました。
 ドライバは旧WS30のTWAINドライバで問題ありません。うれしいのはSLIMからは、ドライバがWindows2000にも対応したことです。これでWindows2000ユーザーは、わざわざChameleonのドライバをダウンロードして使う必要がなくなりました(添付ドライバをWindows2000でテスト済み)。
 USBケーブルも同じなので、旧タイプをお持ちの方はそのままの環境でSLIMを利用できます。
 なお実売価格は、12,000円前後で売られている例が多いようです。
■実写画像

 SLIMの撮影画像を見る限り、基本的には、解像度感やあまり色彩感を感じない発色など、旧WS30とほぼ同じ傾向・雰囲気です。ツボにはまると非常によい画像が得られますが、ラチチュードが狭い故に画像が破綻する限界もほぼ同じですね。顕著な変化は見られません。手ブレさえしなければ、屋内撮影にも強い方です。
 ただ、SLIMになって、少し遠景の描写力が落ちたかもしれません(画像はいずれも、クリックするとオリジナルサイズで見られます。レタッチはしていません)

まずは、道端の「サトちゃん」を撮った画像です。発色、解像度ともに旧WS30の画像と非常によく似ています。こうした1〜2mの距離の被写体は、WS30SLIMが最も得意とするところです。天候はうす曇りです。


タイ料理店の前に置いてあった「トゥクトゥク」を撮りました。晴天の直射日光下なので、被写体の明部と暗部の差が大きく、ちょっと立体感のない画像です。こうした条件の写真は、不得意です。
 

鉢植えの花をマクロで撮影しましたが、比較的鮮やかな発色です。少しブレた感じがするのは、強い風で花が揺れていたためです。続いて道端に咲くツツジの花ですが、発色はともかく花びらの質感がなかなかよく出ています。そして次の花の写真も、直射日光下にもかかわらず鮮やかな紫色が出ています。マクロに関しては、旧型よりも画質アップした…かもしれません。
  

次に道端のバイクを撮影しました。質感や光沢感はまずまずです(天候はうす曇)。ハイライト部は白飛びしており、またシャドー部が黒くツブれ、ラチチュードが狭い点は旧WS30と変わりません。


六本木のカフェでビールを飲みました。マクロぎりぎりのところでテーブルの上を撮影しています(晴天)。35万画素にしては、高い解像度感です。やはり、近距離の画像はなかなかよいと思います。


遠景とか風景写真は、WS30は苦手です。奥行き感の少ない、平板な絵になりがちです。この雰囲気も旧WS30と変わりません。


これは、非常に暗いお店の中で撮影した写真です。テーブルにカメラを置いた状態で固定してスローシャッターを切りました。最低シャッター速度が1/2秒になってどうかと思ったのですが、まあよく撮れていると思います。


■総合評価

 旧WS30と比較した現時点でのSLIMの評価を述べると、次のようなものです。

  ・操作性はアップ
  ・画質の傾向は同じだが、遠景描写力が少しダウン
  ・バッテリー寿命はダウン

 外観デザインは、全く好みの問題です。ポップな感覚のカメラを持ち歩きたいのなら、ポーチのデザインも含めてSLIMでしょう。そのポーチですが、サイドがゴム風になっており、材質も使用感も悪くありません。普段持ち歩くかわいいカメラをお探しの女性には、SLIMをお薦めします。ただ、個人的には、旧型のデザインとメタリックなカラーの方が、持っていて落ち着きます。
 操作性については、少しSLIMに分があります。ホールディングがよくなったこと、背面ボタンの操作がしやすいこと、シャッターボタンの感触がよくなったこと…などがポイントです。
 バッテリーと消費電力に関しては、旧型が上回ります。撮影可能枚数は条件によって差がありますが、コンビニで購入した単4電池を使うと、400〜500枚の撮影が可能です。500枚撮影できるとしても、SLIMの電池寿命は旧WS30の半分程度の感覚でしょう(公式サイトには1,000枚以上撮影できるとありますが…)。やはり、入手性のよい単三型2本で大量に撮れる旧型は魅力です。このバッテリー寿命のアドバンテージを考えると、日常的にお散歩カメラとして持ち歩く場合は、私は旧型を選択するかもしれません。
 画質については、旧WS30との大きな差はありません。発色の傾向もほぼ同じだし、ラチチュードの範囲もほぼ同じです。しかし、中・遠距離の風景画像に関しては、SLIMは旧型よりも多少描写力が落ちた感じがします。どちらも遠距離風景画像に強いカメラではありませんが、それでも旧型の方が中距離に強く、SLIMは近距離とマクロに強いと言えるかもしれません。
 被写界深度はSLIMの方が浅いはず。その上、SLIMは焦点距離が長くなったのですから、ポートレート向きかもしれません。実写画像でも、マクロや3m以下の近距離画像は、SLIMの方が対象物を大きくはっきりと写してくれるような気がします。反面、漫然と撮影した風景写真や建物の写真は、旧型以上につまらない画像になるようです。


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