WS30 の世界        

 
HOME
Mail

ロック遺産 〜サンフランシスコ編


 ロックには「聖地」があります。「聖地」という言い方はよくないですね、何か盲目的にロックを信仰しているみたいで…。言い換えましょう。ロックには背景となるサブカルチャーが隆盛を見たいくつかの記念碑的な場所があります。「ロック遺産」とも言うべき土地です。例えば、メンフィス、シカゴ、ニューヨーク、サンフランシスコ、シアトル、フィラデルフィア…そしてロンドンなどです。
 私はロックが好きなので、アメリカを訪れたときにこうしたロック遺産を訪ねることがあります。どの街もただの「遺産」ではなく、当時のサブカルチャーの雰囲気をよく残した街であるばかりか、現在でもサブカルチャーの中心地であるところが多いですね。  それらの場所の中で今回は、私の好きな街の1つであるサンフランシスコについて、ロック遺産を中心にその印象を語ってみましょう。




■サブカルチャーの街

 御存知の通り、サンフランシスコは西海岸の穏やかな港湾都市です。またアメリカ有数の観光都市なので、フィッシャーマンズ・ワーフやゴールデンゲート・ブリッジなどを訪れた方は多いと思います。  古くから移民の街であり、アメリカのトラディショナルな伝統にとらわれない自由な雰囲気を持っていました。60年代には、このサンフランシスコを中心に「ヒッピー・ムーブメント」が起こり、「ラブ&ピース」を歌うサイケデリックサウンドとともに世界を動かすサブカルチャーとして広がっていきました。
 また、サンフランシスコの近郊にあるバークレーには、西海岸における学生運動やベトナム反戦運動の中心地となったUCLAバークレイ校があります。そしてサンフランシスコ湾に沿って南下すると、1970年代以降のコンピュータ文化の発祥の地となったサンノゼの街があります。現代のサブカルチャーとしてその地位を確立した、パソコンやインターネットが媒介するニューエイジのコミュニケーション文化は、このサンノゼにあったゼロックス社のパロアルト研究所やスタンフォード大学で生まれました。そして、今もここには世界のコンピュータ文化の中心地であるシリコンバレーが存在します。  このサンフランシスコには、3つの大きな「ロック遺産」があります。

■ヘイト・アシュベリー

 まずは、ヒッピー・ムーブメントの聖地として知られるヘイト・アシュベリー(Haight Ashbury)地区です。ゴールデンゲート・パークにもほど近いヘイト・アシュベリーは、現在でもヒッピームーブメントの残滓を遺した街です。
 Haight通りとAshbury通りの交差点近くにはグレートフル・デッドが住んだビクトリア・ハウスがそのまま残っています。ニルヴァーナが訪れた診療所(漂白という曲のきっかけになった)なんかもあります。
 私は、夕暮れ時にヘイト・アシュベリーを散歩するのが大好きです。

■フィルモア・ウェスト

 次は、フィルモア通り(Fillmore St)です。ユニオンスクエアからバスで15分ほど行った「ジャパンタウン」の近くです。ここには、かつて「フィルモア・ウェスト」というライブハウスがありました。60年代のアメリカのサブカルチャーを担ったライブハウスとしては、ニューヨークにあったフィルモア・イーストと並んで有名な場所です。ビル・グレアムが始めたこのライブハウスは、71年に幕を閉じるまで幾多のロックシンガーによるライブが行われましたが、中でも名高いのは「フィルモア最後のコンサート」でしょう。
フィルモア・ラストコンサートというアルバムは、フィルモア・ウェストのクロージング・ライブの模様と、伝説のプロデューサーであるビル・グレアムの記録を収めたもの。出演したのはグレイトフル・デッド、ボズ・スキャッグス、サンタナ、ジェファーソン・エアプレインなど、そうそうたるメンバーです。
 同じフィルモア・ウェストでは、1969年にレッドツェッペリンの伝説的なコンサートも行われました。「ZEPPELIN EDIFACE」というライブアルバムは、彼らの最高傑作の1つです。

■ウィンターランド・ボールルーム

 そしてもう1つは、ウィンターランド・ボールルームです。ザ・バンドの解散コンサート「ラストワルツ」は、1976年にこのウィンターランド・ボールルームで行われました。コンサートの開始にあたって彼らは「始まりの終わりの始まり」と言ったのは、まさにロックの時代の…と言いたかったのでしょう。  サ・バンドのラストコンサートに駆けつけたゲスト・ミュージシャンはボブ・ディランをはじめ、ウッドストックの女神であるジョニ・ミッチェル、エリック・クラプトン、ニール・ヤング、ニール・ダイアモンドブルースの王様マディ・ウォーターズやヴァン・モリソン、Dr・ジョン、ロニー・ホーキンスまでが登場。さらに、ビートルズのリンゴ・スター、ストーンズのロン・ウッド、カントリーのエミルー・ハリスなども出演しています。ソウル、ブルース、ジャズ、フォーク、様々な音楽形態が渾然一体となった「ロック」という音楽の本質がここにあります。
 また、ウィンターランド・ボールルームでは、セックスピストルズの伝説のラストコンサートやジミ・ヘンドリックスとエクスペリエンス、ジャニス・ジョプリンのライブなども行われました。


 こんな話を書いてるとキリがないですね。デジカメとは全く無関係だし…(笑)。演歌やJ-POP好きの方にはつまらない話でした。
 ところで、前にも書きましたが、サンフランシスコには「アンカースティーム」という美味しい地ビールがあります。ぜひお試しを…
 次回からは「シカゴ編」「ニューヨーク編」「フィラデルフィア編」と続きます。