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2011年07月21日

●真夜中に聴きたい50曲 (28)

(28)The RamonesRockaway Beach」(ラモーンズ:ロッカウェイ・ビーチ)

 私は昔、今は無きニューヨークのクラブ「CBGB」でラモーンズを、生で聴いたことがあります。この話をすると長くなるので別の機会に書きますが、ラモーンズは1974年に結成され(メジャーデビューは76年)、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、パティ・スミス、テレヴィジョンらと並んで、70年代の「ニューヨーク・パンク」ムーブメント」の中心となったバンドです。そして、90年代の半ばに解散するまで、息の長い活動を続けました。しかし、初期のアルバムはともかく、80年代以降はロックシーンの中であまり注目されるバンドではありませんでした。また、70年代のパンクシーンで活躍したとは言っても、現在に至るまでヴェルヴェット・アンダーグラウンドやルー・リードほどには高い評価を受けてはいないような気もします。

 ラモーンズは、ファーストアルバム「Ramones」(邦題:ラモーンズの激情)が最も有名でしょう。現在は「パンクの古典」扱いです。もう、あの単純で短い曲の繰り返しは、最初に聴いたときは「コレ何?」って感じで、けっこうインパクトがありました。ジャケットもかっこよかった。ファーストアルバム以外で記憶に残っているのは、フィル・スペクターがプロデュースした「End of the Century」です。ニューヨークパンクは好きですが、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドやパティ・スミスのような「内省的」な部分が感じられない分、ライブで楽しむならともかく、繰り返してレコードを聴くサウンドではないと感じたものです。

 さて、今回取り上げる「ロッカウェイ・ビーチ」という曲は、彼らの3枚目のアルバム「Rocket To Russia」に収録されています。このアルバムは、1、2枚目のアルバムとは異なり、けっこうメロディラインのはっきりした、いわゆるメロコア系の曲が多いかもしれません。で、なぜこの「ロッカウェイ・ビーチ」という曲を挙げたのかといえば、これはもう個人的な思い入れによるものです。

 私の2度目のニューヨーク在住は1982年から83年にかけて。特に1983年のニューヨークの夏は、猛暑だったのでよく覚えています。当時私は、レキシントンアべニュー23丁目にあるジョージ・ワシントン・ホテルという伝説の安ホテルに住んでいました。そのホテル、なんと部屋にエアコンがなかったのです。連日、昼間は最高気温が華氏110度近い日々が続く中、私は涼をとるために、毎日地下鉄に乗って海に出掛けました。BかDのラインに乗ってコニーアイランドへ行くこともありましたが、やっぱり好きだったのは、ロッカウェイ・ビーチです。マンハッタンのミッドタウンから地下鉄Aラインに乗って、クイーンズを縦断した終点が、大西洋に面したロッカウェイ・ビーチです。クイーンズの一番南、ジャマイカベイを挟んでJFKの対岸にあり、東から西へ突き出した砂洲のような半島です。半島の根元にあたる東の端は、もうロングビーチの海岸に連なっています。
 地下鉄のAラインは、ジャマイカベイの真ん中、つまり海の真ん中(地下ではなく地上の砂洲)を走っていく気持ちの良いラインで、ミッドタウンからは約1時間できれいなビーチの真ん中に着きます。砂浜で寝そべっていると、海に向かってJFKを離陸する飛行機がよく見えます。1時間に1回ぐらいは、轟音をたててコンコルドが飛び立っていきます。それをぼんやりと見ながら、泳いだり甲羅干しをしたりして一日中海岸で過ごしていました。

 ラモーンズの「ロッカウェイ・ビーチ」は、クイーズ生まれのメンバーが、自分たちがよく遊んだ海を歌った曲。その曲を聴くと、私もあのクソ暑かったマンハッタンで過ごした日々、ロッカウェイ・ビーチの海岸で過ごした気だるい昼下がりを思い出すのです。