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2011年06月22日

●ラオス、メコン川への24時間ミニトリップ

 6月初旬、クアラルンプール、バンコクへの1週間の出張があり、その出張の合間、土曜日の午後から日曜日の夕方まで、約24時間の短い休暇が取れました。その短い時間を利用して、メコン川を見に行こうと思い立ちました。
 で、選んだのはタイ東北部の町、ナコンパノム。メコン川西岸に位置するナコンパノムは、対岸のラオスの町ターケークに船で渡れる場所です。
 簡単に行けるところで、川を船で渡って国境を越えられる場所というのは、世界的に見てもあまり多くはありません。アジアやヨーロッパなど「川が国境」という場所は非常に多いけれど、イミグレーションがあるような都市、町にはたいてい橋が架かっていて、外国人は陸路でしか通れないケースがほとんど。船で渡れるのは、普通は地元民だけです。
 タイ-ラオス国境もたいていは陸路。ノンカイからビエンチャン方面へ行く場合も、国境越えは陸路。ナコンパノムの南のムクダハンも、友好橋が完成してからは外国人は陸路でしかラオスへ行けなくなりました。知っている範囲では、タイ北部のいわゆるゴールデントライアングル地域のチェンコーンからラオスのラオス国境の町フェイサーイ間が確か船で国境を越えられると思いますが、ここは24時間では往復できません。
 今回行ったナコンパノムも、現在町の北部にメコン川に架かる橋を建設中です。ちなみに、Wikipediaの「ターケーク郡」を読むと、「現地の人用に国境ゲートがあり、船でメコン川対岸のナコーンパノムに渡ることができる。旅行者は渡ることはできない。2009年より、ナコーンパノムとの間で第3タイ=ラオス友好橋の建設が行われている。完成の予定は約3年後である」と記述してありますが、この「旅行者は渡ることはできない」は間違いです。現時点では外国人でも船で国境を越えられるし、ラオスは日本人は短期間の滞在なら数年前からノービザです。そして、まもなく橋が完成すれば、外国人は船での国境越えが出来なくなるはず。ナコンパノムからメコン川を船で渡って国境を越える…、これが最後のチャンスです。

 そのナコンパノム、バンコクからは飛行機で行けますが、1日1便だけ。ドンムアン利用のLCC「ノックエア」の便です。前日、金曜日の午後にネットで予約しました。ノックエアと言えば相変わらず冗談のような鳥の顔の機体デザイン。とてもタイ航空の子会社とは思えません。で、仕事が終わった土曜日の夕方、小さなデイパック1つに1泊分の着替えとデジカメを入れて、タクシーでドンムアン空港へ向かいました。かつて国際線でよく降り立ったドンムアンは、スワンナプーム完成後は国内便専用空港ですが、やっぱり便利だし非常に懐かしい感じ。
 搭乗したノックエアの機体は双発のプロペラ機、ATR 72です。小さなプロペラ機に乗るのは久しぶりですが、離陸後の旋回で機体がぐっと傾くところが、けっこう気持ちよくて好きです。ノックエアは座席番号が予約されるし、1時間半のフライトでも軽食が出るのが、他のLCCよりちょっとハイクラスです。
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 さて、1時間半のフライトで、無事ナコンパノムの空港に到着。約20kmある川沿いの町までどうやって行こうかと考えていたら、リムジンサービスがあり、乗合のミニバンでホテルまで50バーツでした。
 ホテルはメコン川のほとりに立つ、ナコンパノム・リバービューホテル。ナコンパノムでは最大で唯一の近代的ホテルです。ゲストハウスや小さいツーリスト用ホテルに泊まるのは面倒だったので、事実上ここしか選択肢がありませんでした。前日に電話で予約しておいた、リバービューの5階角部屋に通されました(翌日のレイトチェックアウト料金込みで約2500バーツ)。広い部屋の窓から見えるのは、息を呑むような夕暮れのメコン川。対岸のターケークの町の背後には中国の桂林のような石灰岩の奇峰が連なり、不思議な光景です。

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 その夜は、近くのレストランで食事でもしようと考えていたのですが、ホテル近辺には何も店がありません。で、ホテルのスタッフに聞いたら、南へ10分ほど歩いたところに川沿いのレストランがあると…。そこへ行きました。メコンの川原にせり出した桟敷のような席に座り、どっぷり日暮れた暗いメコンの川面と対岸のラオスの点々とした明かりを眺めながら、正体不明の焼き魚とガイヤーン(鳥の炭火焼)でビール。小雨が降る中、自分以外に客もいない、静かなイサーンの夜が過ぎていきます。その夜は、早々とホテルに帰って寝ました。

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 翌朝、早起きしてホテルで朝食を摂り、朝8時にラオス行きの船着場へ向かいます。雨季なのに、この日は運良く快晴でした。ホテルからトゥクトゥクに乗って川沿いに10分ほど走ると、イミグレーションです。

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 ここで、まずはタイの出国手続きを済ませ、川に面したイミグレーションの建物の裏手から急な階段を下りると、そこが船着場。

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 泊まっていた渡し舟は30人乗りぐらいで、料金は60バーツ。乗船者はパスポート不要で普段着で行き来するラオス人とタイ人以外に、ベトナム人が多い。ナコンパノムはベトナム国境まで150kmしかないため、陸路ラオスを横断してタイまで買出しに来るベトナム人が多いのです。ターケークのバスターミナルからは、ベトナムのハノイやビン、ダナンへ行くバスが1日何本も出ています。

 このあたりのメコンの川幅は約1km、対岸のラオスの船着場がよく見えます。いったん上流に大きく迂回した船は10分ほどで対岸の船着場に到着。

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 手すりもない急な階段を恐る恐る登ると、そこがラオスのイミグレーション。入出国カードを渡され、記入して入国手数料とともに軍服姿の係員に渡すと、入国目的と滞在期間を聞かれ、今日中に戻ってくると言うと、パスポートに簡単に入国スタンプを押してくれました。女性の入国係官が、パスポートの私の名前を声に出して読んでいたのが面白かった。で、晴れてラオスに入国です。事前に何も調べず、ガイドブックも読まずに来たので、本当に入国できるかどうかちょっと不安でしたが、簡単に船でラオスに入国できました。

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 こうして朝のターケークの町に着いたのですが、地図もなく町の概要もわかりません。前々夜にバンコクのホテルでネットで調べた時には、ターケークは数軒のゲストハウスがあるだけの小さな町で、ほぼどこへでも歩ける…とあったので、まあなんとかなるだろうと、イミグレ近くに一軒だけあった小さなお店で、アイスコーヒーを飲みながら、メコン川を眺めてしばし休憩。歩くには暑過ぎるので、イミグレ横の小さな広場に集まっているトゥクトゥクのうちの1台と、町を見物したいから1~2時間乗せてくれと交渉すると、結局「50バーツ」で話がつきました。ターケークではラオスのお金だけでなく、バーツやドルも使えます。タイのAISのSIMを挿した携帯電話もそのまま使えます。

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 いちおう舗装してあるメインストリートは、家も商店もまばら。道端で牛が草を食んでます。まずは町の中心部、郡のオフィスがある一帯へ行きます。辺りは少し街並みがにぎやかで、ぶらぶらしながら写真を撮り、次に市場へ行きます。数百軒は店があろうかという大きな市場は、売っているものも珍しくて非常に面白く、ちまきなどを買い食いしながら、1時間近くも見て回ってしまいました。

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 ターケークでは、英語は全く通じませんが、タイ語はOKです。市場を出て、その後トゥクトゥクに街中をぐるっと回ってもらい、お昼近くにイミグレ付近へと戻ってきました。メコン川沿いに南へちょっと散歩して、正午過ぎにはイミグレでラオスを出国、渡し舟に乗ってナコンパノムへと戻ってきました。

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 ナコンパノムの町を散歩してホテルへ戻り、夕方にはチェックアウトをして空港へ。無事バンコク・ドンムアン空港へと帰着しました。

 たった24時間のミニトリップでしたが、大河メコンの印象的な夕暮れと朝焼け、牛やヤギが草を食む赤茶けたラオスの大地を堪能し、短時間ながらとても満足した旅になりました。
 ちなみに、ターケーク郡があるカムムアン県には東南アジア有数のカルスト地形が広がり、大きな鍾乳洞などがあるので、機会があればまた別ルートでゆっくりと行きます。