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2010年08月17日

●トヨタ電子制御に欠陥なし…?

 「トヨタ電子制御に欠陥なし」 それでも「シロ」と言わない米メディア
…というニュースがありました。確かに調査結果ではトヨタに非がなかったようですし、アメリカの官民挙げてのトヨタ叩きもひどいものです。ただし、だからといってETCS誤動作問題が本当に「完全にシロ」かどうかは、個人的には怪しいものだと思っています。

 私は、トヨタのETCSに限らず「エンジンの電子制御」を根本的に信頼していません。当たり前の話ですが、コンピュータは「誤動作」をゼロにすることはできません。ソフトウェアのバグもゼロにすることはできません。むろん、限りなくゼロに近づけることは可能だし、適切なフェイルセーフ機能を搭載すれば、誤動作による「暴走」のような事態は理論上は防げるわけですが、あくまで「理論上」であり、それでもなおかつ「100%安全」はあり得ないと思っています。

 私は、クルマのエンジンの電子制御の歴史についてはあまり詳しくはないのですが、長い間バイクには乗ってきたので、点火システムがポイントから電子制御に変わる、ちょうど変わり目の時期を知っています。エンジンの電子制御は、点火タイミングのフルトランジスタ化、そして一種の電子点火制御システムであるCDI(PEI)から始まったと理解しています。
 昔は一般的だったポイント点火の原理は、概ね次のようなものです。まず、エンジンの回転カムが回転して、ポイントの電極を開けたり閉じたりします。この開閉によりバッテリーからコイルの一次側に12V(バイクの場合6Vもあります)の電圧が掛かります。これを昇圧して2次コイル高圧電流を発生させ、ローターによって各気筒に切り替えて各気筒のプラグに流れて点火する…というものです。
 この方式ではカムの機械的動作が点火タイミングを制御しているため、エンジンの回転数が高速になると点火タイミングにズレが生じやすくなります。また、ポイントの電極の劣化(磨耗)によっても点火タイミングにズレが生じます。
 このポイント点火が、マグネットとセンサを使って点火タイミングを制御するCDIシステムへと代わっていったのは、バイクの場合は、確か1960年代の後半あたりから…と記憶しています(記憶だけ書いているので正確ではありませんが…)。1970年頃のカワサキ「マッハⅢ(H1)」はCDI点火だったので、このあたりがバイクへのCDI点火採用のハシリでしょう。個人的には、初めて電子点火を採用したバイクを自分で買ったのは、1975~6年頃に購入した1972年型のスズキ「ハスラー250」で、このオフロードバイクがPEI点火だったのを覚えています。
 私は、この電子点火への移行を、当時不安に感じました。ポイント点火の場合、ポイントを磨く、カムを調整する…ということは目で見ながら自分やれたのに、CDIになったら点火システムはブラックボックスになってしまったからです。バイクなんてものは、エンジンを含めていったん全ての部品をバラバラにしてまた組み立てられるぐらい「単純」で「冗長性」がある乗り物だからこそ、安心して乗れた…のだと思います。それが、CDIが普及し始めた頃から、なんとなく「素人には手が出せない」部分が増えていき、それが逆に不安につながったように思います。
 さてその後、バイクにも大型車の一部に電子制御式燃料噴射装置が採用され始めた頃、確かカワサキの大型バイクだったと思いますが、交差点にある信号機の制御システムからの漏れ電波で電子制御式燃料噴射装置が誤動作する…という問題が騒がれたことがあります。停止中のバイクが突然エンジンの回転数が上がったとか、走り出そうとしたら暴走したとか…そんな事件がありました。

 さて、クルマのエンジン電子制御ですが、過去数十年間で「ブレーキとアクセルの踏み間違い」とされてきた事故のうち、何パーセントかは、おそらくAT車ならオートマの暴走、さらには電子制御の誤動作等が原因ではなかったかと、私は疑っています。
 自動車メーカーにとっては、電子制御の誤動作の存在を認めることは死活問題です。おそらく世界中の自動車メーカーは、多大な努力を払ってエンジン電子制御の問題点を隠そうとしてきたでしょう。まあ、それはそれでよいとしても、最初の話に戻りますが、コンピュータを含めて「電子回路」なるものは、一定の頻度で誤動作を起こすものだと考える方が自然です。ましてや、けっこう複雑なソフトウェアで制御されている昨今の自動車は、長年ソフト会社をやってきた私から見て、ソフト部分で何も問題が起こらない方が不自然だと感じてしまいます。

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