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2010年07月20日

●iPADとネットブック

 最近iPADとネットブックを比較する記事をよく見掛けます。例えばネットブックの市場はiPADに食われつつある…とか、ネットブックを購入するよりもiPADの購入を勧める…といった記事です。
 時々ネットを見て、メールやSNS、Twitterでやり取りをして、あとはYouTubeの動画を見たりゲームで遊んだり…といった使い方なら、ネットブックとiPADは競合します。そうした目的でネットブックを購入しようとする人は、確かにiPADという選択肢があると思います。しかし、仕事を含めてハードにコンピュータを使うのなら、個人的にはiPADは話にならない端末です。用途によってはまったく使い物にならないということです。一方で、目的によってはiPADの方がすぐれている部分もあります。まあ、用途、利用目的がまったく異なるiPADとネットブックを比較すること自体がナンセンスということでしょうか。
 ネットブックでしか出来ないこともあれば、iPADでしかできないこともあります。しかし確実に言えることは、iPADで出来ることは概ねネットブックできますが、ネットブックで出来ることの全てがiPADで出来るわけではありません。いちばん簡単な話では、iPADはプリント出力ができないし、有線LANにも接続できません。

 私は現在、iPADもネットブックも両方使っています。ただ、iPADの方はあくまでiPAD向けコンテンツ開発のために仕事で利用しているだけで、仕事もプライベートも含めた日常ユースにはネットブックを使っています。
 ちなみに私は、国内外の出張にはネットブックを持っていくこのが普通です。ネットブックよりも軽量で高性能のノートPCもたくさんありますが、私の用途では別にネットブックで十分に用が足りるし、落としても壊しても損害が少ないので、ネットブックを持ち歩くことが多いわけです。しかし私は、こうした出張にiPADを持っていくことは絶対にないでしょう。

 私の仕事は、基本的にWordで大量の文章を書くこと、PowerPointで企画書やレポートを作成すること…で成り立っています。こうした仕事はiPADではまずうまく処理できないし、多くのビジネスマンが同じような状況にあることは推測できます。
 一方で、先に述べたように、時々ネットを見てメールやSNS、Twitterでやり取りをして、あとはYouTubeの動画を見たりゲームで遊んだり…といった使い方なら、iPADは若干重過ぎるとは思いますが、ほぼ文句の無い使いやすい端末です。ビジネス分野での利用についても、店舗や医療現場等での情報プレゼン用途などには、タブレット形状でタッチデバイスであるiPADの方が使いやすいことは確実です。趣味用途だけではなく、こうした部分でのビジネス用途でのiPADの将来性は十分に感じています。いや、それをわかっているからこそ、仕事ではiPAD向けのコンテンツ開発をスタートしたわけです。例えば、現在私は、iPADをレセプトコンピュータとして使えないかと、真剣に考えています。
 しかし、iPADのソフトウェアキーボードで長時間文字入力をすることは無理ですし、iPADに専用キーボードを併せて持ち歩くのなら、その使い勝手はむろん重量と体積もバカバカしいものになってしまいます。結局、長時間文字入力を基本とする仕事、さらにはPowerPoint やExcelを駆使する仕事では、ネットブックしか選択肢に入らないことも絶対的な事実です。こういう仕事のスタイルは古い…というひともいるかもしれませんが、日本の多くの企業では、未だOfficeソフトの利用が主流であることも事実です。
 また、iPADには、有線LANやメモリカードスロットなど、ネットブックには必ず装備されているI/Fが装備されていません。確かにWi-Fiが普及した現在、有線LANポートなどいまやレガシーインタフェースだとの声もありますが、海外のホテルなどで有線LANしかないケースは未だ多いし、わざわざWi-Fiに変換して接続するのは面倒です。メモリカードスロットも同じで、私のように海外出張時にデジカメを多用し、撮影画像をサクっとPCにバックアップしたいと言うニーズがあるので、カードスロットがあった方が楽です。

 そして何よりも、どんな用途にも一通り使えるものの処理能力に限界がある低機能のネットブックは、自分なりに改良して使いこなす楽しみがあります。様々なフリーソフトを入れたり、必要に応じてメモリやHDDを増設したり、自分が使いやすいハードウェアデバイスに仕上げていく楽しみがあります。これは、iPADに様々なアプリを入れていくこととは、ちょっと意味が異なります。iPADは、基本的な使い方は、メーカーがコンセプトで謳いあげている通りです。どんなアプリを入れようと、できないことはできないし、逆にメーカーが狙うコンセプトから逸脱する情報処理デバイスにはなりません。そういった意味では、iPADをハードウェアデバイスとしてみた場合、「コンセプトや用途を押し付けられている」…という窮屈さを感じます。

 今回の文で言いたかったことは、ネットブックとiPADの優劣ではなく、2つのデバイスを比較することの無意味さです。しかし個人的には、iPADが醸し出す「コンセプトを押し付けられている」という窮屈さ…は、どうにも好きではありません。こういう人は、世の中にけっこう多いと思っています。

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