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2010年01月05日

●真夜中に聴きたい50曲 (16)

(16)Ry CooderThere's a Bright Side Somewhere」(ライ・クーダー:どこかに素晴らしい場所が…)

 私は猫が好きです。20代の後半、バイク事故で大腿骨を複雑骨折して家でリハビリをしていた頃に拾ってきた雑種の雌猫「ニャン」は、21年も生きて大往生しました。本当は今も猫を飼いたいけれど、また20年以上生きるかも…と思うと、その時の自分の年を考えて怖くて飼えないのが実情です。
 街を歩いていても、ノラ猫を見かけると、手を出しながら近づいたり、写真を撮ったりしてしまいます。そして、冬の陽だまりで、気持ちよさそうに寝そべっている野良猫を見ていると、ついつい口ずさんでしまうのが、ライ・クーダーの曲「There's a Bright Side Somewhere」です。

 この曲は、Ry Cooderが2007年に発表したアルバム「My Name Is Buddy」に収録されています。アルバムの中では、猫のバディが主人公です。バディがネズミのフレディとともに第二次大戦前後の古き良き時代のアメリカ各地を旅しながら、当時の社会の様々な社会状況を見聞し、体験していくという、コンセプチュアルな構成になっています。そして、当時のアメリカの状況をつぶさに表した歌が、結果的に「アメリカの今」を鋭く抉る視点となっているところが、ライ・クーダーの狙いなのでしょう。全17曲の長いアルバムですが、カントリー、フォーク、ゴスペル、そしてライ・クーダーお得意のテックス・メックスなど、バラエティに富んだ曲が並び、最後まで飽きさせません。そして、アルバム最後の曲が「There's a Bright Side Somewhere」です。「どこかに素晴らしい場所が…」というタイトルそのものの曲で、これを聴くと私は何だか少し暖かい気持ちに包まれます。

 この「My Name Is Buddy」というアルバムは、けっして嫌いではないもの、ライ・クーダーのアルバムとして冷静に見れば、手放しで褒めるわけにはいきません。コンセプチュアルゆえに「あざとい」部分や「お手軽」な部分が鼻につきます。カントリー、フォーク、ゴスペル、テックス・メックスなどライ・クーダーが過去に手がけてきた音楽をこれぞとばかりに並べてみただけ…という気がしないでもありません。
 ライ・クーダーには「Chicken Skin Music」や「Buena Vista Social Club」など、キラ星のような名盤が数多くあります。とりわけ「Chicken Skin Music」は、個人的には「無人島へ1枚だけ持っていくアルバム」を考えた時にかなり上位に来るほど大好きなアルバムだし、70年代から聴き込んで音楽的にも高く評価しています。そうした名盤と比べると、「My Name Is Buddy」のコンセプトの安直さは、ちょっと引いてしまう部分がないでもありません。

 とは言え、猫好きの私は「My Name Is Buddy」というアルバムのジャケットに大きく描かれた、ふてぶてしい「バディ」の顔と姿が大好きだし、このアルバムを最初の曲からずっと聴いた最後に「There's a Bright Side Somewhere」を聴いて、ほんわりと暖かい気持ちなるのが大好きです。

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