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2009年11月09日

●真夜中に聴きたい50曲 (9)

(9) Emmylou Harrisgoodbye」(エミルー・ハリス:グッドバイ)

 「goodbye」は、1995年に発売された彼女のアルバム、「Wrecking ball」に収録されています。
 私は、エミルー・ハリスというシンガーを70年代から知っていましたが、真剣にアルバム全曲を聴いたのは1980年代に発売された「Cimarron」からです。「Cimarron」を聴いてから、遡ってそれ以前のアルバムを片っ端から聴きこみ、彼女の本格的なファンになった次第です。しかし、95年に発売された「Wrecking ball」というアルバムは、それまでの彼女のアルバムとは全く異なったものでした。聴き終えた後で、本当に打ちのめされるほどの感動を覚えました。あのU2のプロデュースで知られるダニエル・ラノワがプロデュースしたこのアルバムで、エミルー・ハリスは、それまでの「フォーク、カントリー系シンガー」とは全く異なる顔を見せてくれただけでなく、それまで誰も試みなかった新しいサウンドで、ロックミュージッシャンとしての1つの完成した形を見せてくれたのです。
 いかにもラノワのサウンドらしい、際立つエレキギター、太く響くベースとバスドラム、切れ味のいいアコースティックギター、そしてプログレッシブロックと言ってもよい独特のシンセライクな響き…、そこに若い頃のような透き通った高音を響かせるのではなく、高い音程がかすれて、まるで祈るようなエミルー・ハリスの声が重なり、極上のサウンドを紡ぎだしています。個人的には90年代最高のロックアルバムの1枚と言ってもよいと思います。

 「Wrecking ball」は、もう1つ別の意味でも、私の音楽遍歴の中では感慨深く重要なアルバムです。私が好きな音楽は、基本的に一番多感な頃に聴いた60年代後半から70年代の音楽です。その結果、オールマン・ブラザーズ、ニール・ヤングとCSN&Y、ボブ・ディラン、グレートフル・デッド、ジャニス・ジョプリン、ザ・バンド、ジョニー・ミッチェルなど、60、70年代に好きだった同じミュージシャンの曲ばかりを、90年代になっても聴き続けていました。ところが、90年代の半ばに「Wrecking ball」を聴いて、今度はそれぞれの曲を書いたルシンダ・ウィリアムスや、ギリアン・ウェルチ、スティーブ・アールなどを聴き込み、さらにラノワがプロデュースしたU2のアルバムなども聴くことになり、その結果、より幅広い音楽に注目するようになった部分があります。

 そして、今回紹介した「goodbye」は、あの放浪のシンガー、スティーブ・アール(Steve Earle)の曲。歌詞も最高で、同じアルバムの中の「Orphan Girl」や「Blackhawk」などとともに、あらゆる音楽のジャンルを超えて私の最も好きな曲の1つです。
 ちなみにYouTubeの中に、スティーブ・アールとエミルー・ハリスの2人がこの「goodbye」をデュエットしている動画(http://www.youtube.com/watch?v=Rr2IY8q687I)があります。こちらも泣けるので、ぜひ聴いてみて下さい。

 ちなみにエミルー・ハリスは、「Wrecking ball」以降、「Spyboy」「Red Dirt Girl」や最新の「All I Intended to Be」など次々と素晴らしいアルバムを出しています。声質が少し変わっても、若い頃よりもうんと素敵になった彼女を見ていると、人間は年を取るのも悪くない…と本気で思えてくるから不思議です。

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