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2009年11月17日

●真夜中に聴きたい50曲 (10)

(10) Joni MitchellBoth Sides Now」(ジョニ・ミッチェル:青春の光と影)

 1967年にジュディ・コリンズが発表したアルバム「Wild flowers」に収録された曲「Both Sides Now」は、1969年に映画「青春の光と影」(原題:Changes)の主題歌となり大ヒットしました。この曲はご存知のとおりジョニ・ミッチェルの曲で、彼女のデビューアルバム「Song to a Seagull」に続いて1969年に発表された「Clouds」に収められています。

 ジョニ・ミッチェルの初期のアルバムには、「Clouds」以外にも、名曲「The Circle Game」が収録された「Ladies of the Canyon」やより内省的な色合いが濃い「Blue」などなど多くの名アルバムが存在しますが、個人的には「Chelsea Morning」や「Both Sides Now」が収録されている「Clouds」が一番好きです。そして今回、その「Clouds」の中でも「Both Sides Now」を取り上げるのは、やはり私の世代特有の「青春の感傷」が含まれていることは間違いありません。
 「Both Sides Now」は、歌詞も含めた曲自体の素晴らしさもさることながら、アメリカの公民権運動、世界各地で盛り上がったベトナム反戦運動や学生運動の嵐の中で、誰もが自分自身のあり方、自分と社会の関わり方を考え続けた「あの時代の空気」を最もよく反映させている曲の1つであり、当時ジョーン・バエズやボブ・ディラン、そしてCSN&Yなどが歌う直接的な反戦歌などよりも、もっと深いところで何かを語りかけてくれる曲であったことが、ピックアップの理由になっています。

 そんな小難しい話は別にしても、ジョニ・ミッチェルというシンガーの素晴らしさは、簡単に語り尽くせるレベルではありません。ロックシンガー(あえて言います)としては非常に特異な存在で、孤高のミュージシャンと言ってもよいと思います。そして、前回取り上げたエミルー・ハリスと同様に、ジョニ・ミッチェルもまた、年を経るとともに独特の深みを増してきたシンガーです。1969年から2007年にかけてグラミー賞を9回受賞しているという事実も、彼女が世代を超えて支持されていることの確かな証です。初期のシンプルな弾き語りのスタイルに始まり、ジャズやフュージョンを取り入れた70年代、最先端のコンピュータミュージックの技法を取り入れた80年代以降、そして原点に回帰するようにシンプルな音楽に戻りつつある近年に至るまで、ジョニ・ミッチェルの音楽のスタイルに変化はあっても、魂のミュージシャンとしての本質は何ら変わりません。ギタリストとしての彼女のテクニックも、依然として素晴らしいものがあります。

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