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2009年08月04日

●オーガニック食品の栄養的優秀性

 ホメオパシーが正規の医学教育を受けたはずの医師まで巻き込んである種のブームとなり、そのホメオパシーと表裏一体とも言える「マクロビオティック」もブームの真っ最中。まあ、「マクロビオティック」なんて言葉を知らない人達の間でも「有機農法」だの「オーガニック野菜」だのは、「健康によい食品」として広く認知が進んでいます。背景には、先般の農薬入り中国ギョーザ事件によって「安全な食品」への関心が異常に高まったこともありますが、「有機野菜」「無農薬野菜」の存在について、農水省が有機JASの認定基準を作るなどある種の「お墨付き」を与えている…という情況もあります。

 ところでその「マクロビオティック」、個人的には、いみじくも地下猫氏がホメオパシーを「カルト」として論考したのと同じく、「マクロビオティック」もカルトの匂いふんぷんという感じで受け止めています。
 桜沢如一に始まる「マクロビオティック」信奉者や推進団体の多くが、単なる食生活改善運動や健康運動に止まることなく、独特の世界観や宇宙観に基づいて「地球生命体論」に基づく「自然環境との共生」や「環境保護」などを強く主張している様を見るにつけ、肌がザワザワするような不気味な感触を覚えているのは私だけではないでしょう。
 特に嫌なのが、ホメオパシーとかマクロビオティックを信じてライフスタイルに取り込む人間の多くが「インテリ層」であること。「インテリ層」という言葉は定義しづらいのですが、要するに一定の学歴や社会的地位を持ち、社会の平均水準以上の教養レベルを備える(…と自身が思い込んでいる)階層を指します。こうした「自称中の上」階層の一部は、食生活や健康問題、環境問題に対する自覚という点で、平気で自分の子供にマクドナルドで食事」を摂らせ子供を車の中に放置して長時間パチンコに興じるいわゆるDQN層(相対的に所得や学歴、社会的地位も低い)と、明確な対立関係にあります。でも、思うに社会に対して害をなすという面では、前者の方が始末が悪いケースがけっこう多いかも。まあ、そんな話はどっちでもいいけど…

 こうした昨今の状況の中で、「オーガニック(有機)食品に栄養的優秀性みとめず」…という面白いニュースを見つけました。
 これは「50年に及ぶ文献のシステミック・レビューで、オーガニック製品は栄養的に優れているというエビデンスは見いだせなかったという報告が、The American Journal of Clinical Nutrition誌に掲載された…というのです。

 このblog主である医師のinternalmedicine先生の手による元論文の訳によれば、

・52000論文から、152(農産物137、家畜製品25)を検討クライテリアに合致するとして検討、だが、十分な質に到達してたものはわずか55のみ。
・通常の農産物は有意に窒素濃度を含む。
・オーガニック製品農産物は有意に鈴・高濃度のtitratable activityを有した。
・8つの農産物の栄養カテゴリーの間に差異のエビデンス無し。
・質の低い研究群の解析で、家畜製品について、栄養成分に、オーガニックと通常の製品の差異のエビデンス無し。

 …とのことです。

 もっとも、オーガニック食品に「栄養面の優秀性がない」と立証されたとしても、マクロビオティック信者は動じることはないはずです。現代医学とともに現代栄養学をもあっさりと否定する彼らにとって、「現代科学」の見地から栄養面の優秀性なしと断定されても、何も関係がないと考えるでしょう。特にカルト的マクロビオティック信者にとって、オーガニック食品を摂取することは「心と体、そして自然環境のバランスをとる」的な理由付けで十分でしょうから。私のように毎晩安い居酒屋や立ち飲み屋でオーガニックとは無縁の不健康な肴をつまみながらホッピーを飲んでいる人間などは、きっと唾棄すべき食生活を送っているバカヤロウだと考えているに違いありません。ああ、世の中にはお付き合いしたくない面倒くさい人間がたくさんいます。もっとも、先方でも同じように思っているでしょうけど…

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