« うなぎが食べたい | メイン | ニュースいろいろ »

July 19, 2006

憂鬱な雨が続きます

 数日前のニュースですが「今更ながら…受験生42人『合格』 明星大で今年も入試出題ミス」…という記事。その入試問題というのが…「徹底」の「テイ」と同じ部首を持つ漢字を(1)「ヤッカイ」(2)「グチ」(3)「クッセツ」(4)「チュウヨウ」(5)「センプウキ」の選択肢から選ぶ…というもの。「中庸」の「庸」も含め、全て中学で習う漢字です。要するにこの問題は、中学校レベルの漢字テスト。あんまりだと思う。大学入試で中学レベルの漢字テストを出題するのは異常だし、それを間違うような人間が大学を目指すのも異常。漢字交じりの日本語の読解力をテストしたければ、難しい漢字を問題文に含めればいいだけなんですけど、それ以前の問題として、大学とは何か…をあらためて考えさせられます。
 同じような話では「大学淘汰: 学生に日本語、再教育」…というちょっと前の毎日新聞の記事も、ネット上でかなり話題になりました。
 松本歯科大学の「言語表現・日本語」なる講座では、<ながねんにわたってはぶらしをまよこにうごかすはみがきをつづけているとしにくにちかいぶぶんがくさびじょうにすりへって……>…という文を辞書片手に漢字に直させているんです。授業の目的は「歯科医師国家試験の出題意図が理解できるため」ってことだそうですが、要するに「歯科医師国家試験の問題が読めるようにするため」ってことですよね。この授業に対する学生の感想文が「じしょが上手にひけなくて…」、授業中の様子は「途中で力尽きたのか、机に突っ伏したり、並んだ椅子に横たわる者もいる…って、あんまりだ。小学校レベルの漢字が読めない人間が入れる大学…ってのもどうかと思いますが、それが歯科大というのだから恐ろしい。歯科医も人の命を預かる医師ですよ。私は、小学校レベルの漢字が読めない、書けないという医師に歯の治療をしてもらいたくはありません。

 こうした学力低下にどう対応すればよいのか?…については、もういろんな人が勝手なことを言ってます。確かに義務教育レベルの学力低下問題への対応となると、一朝一夕に改善するのは難しいと思います。でも大学生の学力低下については、解決法は簡単です。
 「大学生の学力低下」という言葉自体が矛盾しているわけで、「学力の低い人間が大学生でいられなくすればよい」ということ。まずは、学力のない人間が大学に入れないようにする…、そして入学後に勉強しないやつは退学させる…要はこれだけでしょう。これ以上の方法もこれ以下の方法もありません。以前から何度も言っているように、レベルの低い大学については文部省の助成金を全面的にカットする…、たったそれだけです。低レベルの大学は「バカ高い授業料を払える人間だけが行くところ」として存続するのは構いませんが、まあ補助金をカットされた大学の大半は経営できずに潰れるでしょう。こうして大学の数はうまく淘汰されるはず。「レベルの低い大学」の判断基準は難しいと思いますが、とりあえずは現行の大手予備校の数値を参考に偏差値(あえてこの言葉を使いますが…)60とか65以下の大学は全て助成金をカットしても構わないと思います。助成金を受けるべき大学の数は、現行の20%程度が妥当だと思われます。
 しかしながら、義務教育レベルの学力低下問題への対応は確かに難しいし、こちらの方がはるかに重要な問題。少なくとも、「ゆとり教育の是非」なんて単純な話じゃないでしょう。また「教育の機会均等」と「学校選択の自由」をどう両立させるかという問題もあります。そして公権力がどのように教育に関わっていくかという問題もある。教師の質の向上という問題もあるし、それ以上に家庭内教育(主に「躾」)の問題もあるでしょう。さらには、国家が教育にどこまでお金をかけるかという問題もあります。公財政支出学校教育費(初等中等教育)がGDPに占める比率を見ると、先進国の中で日本は極端に低い。フランスが4%で、アメリカやイギリスが3%半ば、それに比べて日本は2.7%だそうです。ちなみに高等教育費のGDP比も日本は極端に低く、例えば米・独・仏が1%でアメリカが0.8%であるのに対し、日本は0.5%です(ちくま新書「義務教育を問いなおす」)。この日本という国は、教育にお金をかけない国…なんですね。
 他の先進諸国並みの教育費を確保した上で、まずは「競争」を復活させること、「児童・生徒間の学習能力の差異の存在を認める」こと、学習能力や学力の差異を人間の価値の差異と同一視しないという価値観を教えること…等は、最低限やらなくてはならないように思います。しかし、それだけでは、学力の底上げは難しいでしょう。「学ぶ」ということの意味を、自分自身が報われるかどうかという損得の問題だけで考えているレベルでは、多くの子供が競って学ぶ環境の実現は不可能だと思われます。
 私は、義務教育レベルで、子供が熱心に学ばないのは、家庭教育崩壊の問題や、希望が持てない格差社会という問題などもさることながら、背景にはもっと根源的な「社会の活力」の有無があるのではないか…と思ったりする次第です。発展を続けるアジア諸国や日本の1950~60年代を例に出すまでもなく、社会全体に活力があり、進歩を続けていると体感できる社会であれば、教育環境にも活気が出て、子供たちは必死で学ぶでしょう。
 そうなると、現在の日本の社会に活力がない最大の要因は、少子化人口減少ということになります。未来を担う子供や若い世代が少なく、一方で某日銀総裁のようなモラルの欠片もないクソジジイやババアが好き勝手に権力を持て遊んでいる現在の日本は、活力がないばかりか、若い世代にとっては希望を持てない暗黒の社会に他なりません。
 この危機的な状況にある出生率の低下を解決し、日本という国に活力をもたらす処方箋は、やはり移民だと思われます。仮に、達成すべき出生率を2%と定めます。そして現実の出生率1.25%との差を、移民で埋める…これがすぐに実現できて効果が高い方法です。幸い…といっては何ですが、今なら日本に移民を希望する人はまだいるはずです。10、20年後の日本は、誰も移民を希望しない社会に落ちぶれているかもしれません。一定の能力テストや条件を課した上で、主に人口増に悩むアジアやアフリカから毎年数十万人の若者を受け入れる…、私は日本という国に活力を取り戻すよい方法だと真剣に考えています。

投稿者 yama : July 19, 2006 11:59 AM

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.pit-japan.com/ws30/mt3/mt-tb.cgi/48

コメント