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デジタルカメラの将来     2001/12/19

 山形銀行が実施した今年の消費動向調査の「今後購入したい製品」で、デジタルカメラが、過去5年連続で1位だったパソコンを抜いて1位になった…というニュースがありました。つまり、デジカメはさほどに人気がある商品ということらしいですね。そのデジタルカメラ、今後はいったいどうなっていくのでしょうか?
 デジタルカメラは将来、多画素化、高画質化、低消費電力化、記録媒体の大容量化など基本機能の高度化が進むことは間違いありません。イメージセンシングデバイスについては、CCDやCMOS以外の発展方向も既に見えてきており、長期的に見ればデバイスの基本的なイメージセンシング機能が銀塩フィルムや人間の眼の機能を上回ることは確実です。デジカメの将来を語るときに、「基本機能の高度化」を予測してもあまり意味がありません。
 デジカメの将来を語るのであれば、むしろデジカメがデジカメたる所以、すなわち「デジタルイメージキャプチャー・デバイス」としての本質的な有効性や可能性について、様々な角度から見てみたいと考えています。
 以下は、まあ「2001年末の与太話」です。



■もっと自由に…

 私は広告や雑誌記事の制作関係の仕事をやっていますが、既に印刷会社に対してはデータ入稿だけになっており、出力した状態での版下を入稿するケースはまずありません。媒体側のDTPへの完全な移行に伴って、取材時や商品撮影等に銀塩カメラを使う場面は非常に減っています。広告用商品撮影分野で一部銀塩写真が残るものの、一般的な取材写真や記事中の商品写真の90%以上はデジカメで撮影した画像を使います。また、最近ではメーカー側で用意してくれる機材写真や商品写真もデジタルデータ化されていることが多く、以前のようにポジをくれるメーカーが減ってきました。要するに私のような仕事の分野ではデジカメなしでは仕事が全く来ない状態であり、いまさら「デジカメか?銀塩カメラか?」なんて議論をすること自体に意味がありません。
 結局は画質の問題よりも「直接デジタル画像データが得られる」ことにより重要な意味があるわけで、また「銀塩写真をスキャナで…」などと回りくどいことをやっていられる状況でもありません。
 商業写真や報道写真分野で急速に銀塩写真の出番が減っている一方、趣味の写真分野では銀塩カメラの位置はまだ確固たるものがあります。写真を撮影してそれをプリントし、アルバムに貼って眺める…という使い方は、長期的に見てもあまり変わらず生き残るでしょう。そして、こうした趣味の写真撮影分野では利用形態だけではなく画質から操作性、デザインまで、あくまで銀塩カメラと比較される存在としてのデジタルカメラに対するニーズがあることは間違いありません。
 となると、デジカメが高画質化、高機能化することで銀塩カメラの画質や操作性に近づく…という方向性はむろん正しいわけです。しかし、デジカメの方向はそれだけではないはずです。

 「画像データがデジタル」というのがデジカメのデジカメたる所以。別に機能や操作性の部分で銀塩カメラに近づく必要はないわけで、全く新しいコンセプトの製品が誕生してもよいわけですね。デジカメを広義で「イメージセンシングデバイス」「静止画キャプチャーデバイス」などと捉えれば、何も銀塩カメラに近い形状をしている必要はないし、必ずしも眼で見たとおりの撮影画像を出力する必要もないわけです。その後の画像の利用目的に応じて、「画像処理済み」のデータを出力したって構いません。もっと自由に製品やシステムの形態をコンセプトしてもよいはずです。

■位置情報の取得

 御存知の通り、デジカメにはExifという撮影情報記録機能が標準化されています。Exifファイルから撮影機種、撮影時間、シャッタースピードや絞りの情報を取得して表示するツールなんかはたくさんありますし、私もExif情報をもとにファイル名を自動リネームするツールを利用しています。でも、せっかくデジカメにデータを付加するのならもっといろいろな情報が付加されてもいいと思います。そして、欲しい撮影情報のトップは、何といってもまず「位置情報」でしょう。
 撮影時に位置情報を記録することで、あとから撮影場所を特定できます。デジカメへのGPS機能の付加は利便性が高いゆえに絶対的なニーズですし、中・長期的に見れば実際に導入が進むことは確実です。既に、既存の携帯用GPSと組み合わせていろいろな遊び方を試みている事例がありますし、ごくわずかながらGPS内蔵デジカメの製品化例もあります。
でも、本当にニーズがあるのは、現行の普及価格帯の小型デジカメに1万円アップ程度でGPS機能が内蔵される製品形態でしょう。
 GPSチップセットの小型化・低消費電力化は年々進んでいますが、ここへ来て携帯電話への搭載を目的に、さらなる高集積化、低コスト化が始まっています。問題は消費電力と、衛星取得までに一定のタイムラグを要することぐらいですが、例えスナップ時に位置情報を取得できなくても直近の撮影場所のデータが記録されるだけで、ずいぶん役に立ちます。海外旅行での撮影時など、非常に有用に使えそうですね。こうして取得した位置データを地図上に表示できれば、非常に面白い形で撮影画像の整理ができそうです。こうした状況を考えると、数年内に市販される一般的なデジカメの何割かがGPS機能を搭載する可能性があると思います。

■より多様な製品形態へ

 デジカメに付加すべき撮影情報は、位置情報だけではありません。例えばデジカメに「温度センサ」がついていて、撮影時の気温が記録できたって構わないと思います。また「 加速度センサ」を搭載し、撮影時の移動速度を記録するというのも面白いかもしれません。こんな機能は不要でしょうが、別にあっても構わないし、必要とする人もいるかもしれません。
 また、「組み込み型デジタルカメラ」も考えていくと面白いですね。私なんかはバイクに乗りますから、バイクのヘッドライト部分に小さなCMOSカメラでも内蔵されていて、ツーリング走行中にハンドル部のシャッタースイッチを使って自由に前方の景色を撮影することができたら面白いと思います。

■携帯電話がデジカメの大きなライバルに

 デジタル画像が得られるというデジカメの昨日を有効に活用する方向としては「通信機能」「ネットワーク端末機能」があります。  現在、カメラ付きの携帯電話が増えていますが、10万画素程度のCMOSを搭載するなど、まだまだその画像は「おもちゃデジカメ」の域にも達していません。しかし、既に三洋電機が携帯電話用CCDを開発するなど、高感度化、高画質化への動きは着実に進んでいます。
さて、当面デジカメに35万画素程度のCMOSまたはCCDを搭載することは十分に現実的で、近い将来に実現するでしょう。問題は消費電力とメモリです。消費電力については携帯電話全体の低消費電力化とリチウム電池の高容量化の進展の中、CMOSセンサならばかなり画素数を上げても現実的に搭載可能なところまできています。メモリについては、携帯電話へのメモリカード搭載がいよいよ本格化しそうな状況ですし、既にMByte単位のRAMを搭載する携帯電話端末も登場しています。
 加えて、携帯電話には先述した「位置情報取得機能」が一般化する可能性が高いのです。既にGPS搭載型携帯電話端末が発売されていますが、GPSじゃなくても基地局情報から位置情報を取得する形なら、現行の携帯電話は全てが位置情報を取得可能です。  何も、携帯電話に100万画素のCCDカメラを搭載する必要はありません。日常的なメモ用途なら35万画素で十分。考えてみれば携帯電話に「CheezSPYZ」と同等の機能・画質のデジカメ機能を搭載し、撮影画像データをサーバーに送信できい、しかも位置情報が付加されるとしたら、私ならこうした携帯電話を日常的に「メモカメラ」として使うでしょう。  ネットワーク社会におけるデジカメは、「ネットワーク機能をどう生かすか」が重要なポイントになってくるはずです。
 ところで、リコー「RDC-i500/700」やFUJI「FinePix30i」、オリンパス「C-21T commu」のように「携帯電話でデータを送れるカメラ」があります。しかし、200万画素以上の静止画像のデータ量と現状の携帯電話のデータ伝送速度を考えるとあまり現実的ではありません。今後の携帯電話システムのデータ通信速度アップを考えても、携帯電話に装備されるカメラは、基本的にはデータ量の少ないVGA程度の画像で十分です。それに、機能を満たすために携帯電話とデジカメの両方が必要なわけで、これは不合理です。
 それに較べると「カメラ付き携帯電話」というのは、非常に使いやすいコンセプトです。でも、カメラとしての機能を強化することを考えると、現在の「写メール」のように、「誰かにメールで画像を送る」のではなく「自分のサーバーに画像を送る」ことができればいいわけで、その意味でも「CheezSPYZ程度の画像が撮影でき、撮影画像を自分のサーバーに転送できる」機能が携帯電話に付加されていれば、日常生活の中で非常に便利に面白く使えるはずです。

■「撮ってもEG」は携帯電話のアプリケーション

   こうして見ると、「撮ってもEG」のような「使い捨てデジカメ」の役割は、数年内に携帯電話が担うことになるでしょう。
 つまり、「携帯電話で撮影した画像を指定したサーバーにアップし、コンビニに設置した端末でサムネイルを見て好きな画像だけを有料でプリントアウトする…」という仕組みです。携帯電話の画像メモリ容量が上がれば、もっとシンプルなビジネスも考えられます。「携帯電話を接続してメモリ内の撮影画像をプリントする端末」…が、コンビニに設置してあればよいのです。
 この方式は、携帯電話内蔵カメラの画質がアップするならば、数年内にかなり普及する可能性があります。「撮ってもEG」の画質は、ひどいものでした。「撮ってもEG」程度の画質の30万画素のカメラが携帯電話に搭載されるのは、まあ1年以内ぐらいには十分可能でしょう。

■デジタル画像処理技術の投入

 デジカメが「デジタル画像をキャプチャできるのであれば、逆に「眼で見たとおりに再現する」「カメラとしての高度な写実性を追及する」ことが目的の銀塩カメラとは無関係の方向で製品機能を考えて見ると面白いかもしれません。そこで思うのが、デジタル画像処理技術をもっとふんだんに投入することです。ここでいうデジタル画像技術とは、「シーン撮影機能」や、「ノイズ除去機能」のような「カメラ機能の高度化を目的とする画像処理機能」ではありません。
 例えば「パターン認識技術」の導入なんかはどうでしょう。例えば「画像内で何かが動いたらそれを検知して自動的にシャッターを切る(動体検知)」…といった機能なら、比較的簡単に付加できるわけです。動物や昆虫の生態撮影に使ったり、日常生活の中で待ち伏せ撮影に使うことが可能ですよね。


※本稿を書いた後で、J-PHONEから30万画素デジカメを搭載、SDメモリカードを採用した端末「J-SH51」が発売になりました。  2002/1/22


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