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デジカメのグリップ    2001/7/10

 このサイト内で何度も主張していますが、デジカメで撮影する場合の失敗の原因の80%は「手ぶれ」です。「手ぶれ」を防ぐためには撮影スタイルも重要ですが、カメラ本体のグリップ・ホールド性も重要です。カメラに高いグリップ性を持たせるためには、形状や重量バランスなど様々な要素があります。中でも手っ取り早い方法として、「グリップ部分を作る」こと「グリップ部分を滑りにくい素材で覆うこと」は重要なポイントです。
 ところが、最近のコンパクトデジカメの大半は、スタイリッシュなフルメタルボディを採用しており、表面に凹凸がなく、ましてやグリップなど全くない機種が多いのです。私は、家電量販店の店頭に並んでいる現行デジカメを片っ端からグリップしてみました。その結果、満足にグリップできる機種が非常に少ないことに驚かされました。
 私は、コンパクトデジカメに対して「指がかかる隆起を持つデザイン」と「グリップ面への滑り止め素材の採用」を、強く希望します。特に小型・軽量のデジカメにこそ、もっとグリップに配慮をして欲しいと思っています。しっかりとした滑り止めは手ぶれ防止だけでなく、不意の落下事故防止にも大きな役割を果たすはずです。


■指の掛かり

 「指の掛かり」や「滑り止め」がない、またはほとんどないデジカメが多いのは何故でしょう? 今年の夏に市場投入された各社の新機種を見ても、「スクエアなフルメタルボディ」が圧倒的に多く、グリップにはあまり配慮がされていません。今年の春〜夏にかけてリリースされた新機種(コンパクト機)を中心に見ても、グリップに配慮してある機種は、非常に少ないのが現状です。
 PENTAX「Optio330」、京セラ「FinecamS3」、コニカ「Digital Revio KD-200Z」などは、グリップを目的とした突起や隆起がまったくないか、ごくわずかな凹凸がつけられているだけです。Canon「IXY DIGITAL200/300」も、表裏両面にごくわずかな隆起がありますが、これも滑り止めには十分とは言えません。一応グリップに配慮したと思われるのはSANYO「DSC-MZ1」ですが、これまた十分なものとは言えません。
 はっきりとしたグリップがあるのは、CASIO「QV2900UX」、ミノルタ「DiMEAGE E201/S304」、東芝「Allegretto M81」などの機種です。これらの機種が持ちやすいかどうかは個人の撮影スタイルにもよりますが、グリップに配慮してあることは確かです。
 また、メーカーによる傾向もあります。ちょっと考えると「銀塩カメラ系のメーカーはグリップに配慮し、デジカメ専門メーカーはグリップに配慮しない」と思えますが、そうとも限りません。オリンパスと富士写真フィルムはいずれも銀塩カメラ系のメーカーですが、オリンパスは「CAMEDIAC-4040ZOOM」など、しっかりとしたグリップをつける傾向にあり、富士写真はフルメタルボディでグリップしにくい機種が多いようです。「FinePix4700」や「FainePix50i」など、いずれもグリップに配慮したデザインではありません。特に、富士写真フィルムの定番である縦型デザインは、実際に使ってみてグリップ性が悪いと感じます。
 また、同じメーカーでも上位機種で大型化すると、ちゃんとしたグリップをつける傾向にあります。SONYは、グリップに関してはひどい機種が多いのですが、「DSC-S85」はグリップしやすいデザインです。富士写真フィルムも「FinePix4900/6900」などは、しっかりとグリップできるデザインを採用しています。
 結局のところ、小型でスタイリッシュな機種に関しては、メーカーを問わずグリップ性への配慮という点に関してはほぼ全滅です。

■実は銀塩コンパクトも…

 グリップや滑り止めが軽視される傾向は、実はデジカメだけではなく銀塩コンパクトカメラ分野でも顕著です。むしろ、デジカメは銀塩コンパクトカメラのスタイリッシュ化を後追いした感があります。
 コンパクトカメラに対して「高いファッション性」が求められるようになったのは、ここ10年くらいのことです。APSカメラの登場も「カメラのファンションアイテム化」に拍車をかけました。特に、大ヒットした銀塩コンパクトであるCanon「IXY」が登場してから、メタル外装のスタイリッシュコンパクトは「定番」になりました。現在のデジカメは、こうした銀塩コンパクトのデザインの流れを引き継いでいます。
 APSを中心とする小型のスタイリッシュ銀塩コンパクトカメラは、大半の製品がフラットで直線的なデザインを採用し、形状面でグリップに配慮した製品はほとんどありません。またグリップ部分も全てメタル外装で、表面に滑り止め素材を使った製品は非常に少なくなっています。

■フルメタルボディの弊害

 アルミやステンレスの外装は、確かに質感をもたらします。質感とともに、強度面でも有利な部分があります。また隆起のないシンプルな直方体形状は、デザイン的には一種のブームであるととともに、成型が容易でデザインしやすいという側面もあります。さらに、表面に突起がない直方体デザインは、収納性にも優れます。
 反面、当たり前ですが、金属の外装は確かな指のひっかかりがないので滑りやすく、確実なホールドに難があります。たいしたことではない…と主張するユーザーもいるでしょうが、滑りにくいように工夫されている方がいいに決まっています。
 確かに両手できちんと構えれば、グリップや滑り止めがなくとも、それほど大きな問題はありません。しかし、パッと取り出してサッとスナップ撮影をしたい時には、いちいち両手で構えたくない時もあります。また、出来れば左手は「副える」という程度の感覚で使った方が、速写性が高まります。こうしたところから、少なくとも右手のグリップを確実なものにして欲しいと思うのです。

■どうすればよいのか?

   前述したように「隆起をつける」など形状を複雑にすると、ボディの成型面でコストアップにつながります。また、デザイン的にもシャープさがなくなるので一般受けするデザインが難しくなるという側面があります。
 となると、せめて「滑り止め」にだけでも対処していただけないでしょうか?
 最も簡単な手法として、「右手でグリップした時に背面の親指が当たる部分と、表面の人差し指・中指が当たる部分に、ラバーまたは樹脂などの滑り止め素材を貼る」…という方法があります。これは特に甚だしいコストアップにはつながらないはずです。なぜ、こんな単純な対策がなされないのか、非常に不思議です。「滑り止め」という非常に単純な対応をとってくれるだけで、ずいぶん使用感がよくなるし、また安心感も増すのですが…
 また、デザイン性とグリップ性の両立はそれほど難しいことではないはずです。銀塩コンパクトカメラ分野では非常によいデザインの製品があります。例えばリコーの「GRシリーズ」やPENTAX「ESPIOシリーズ」の一部機種などは、非常にうまく右手で持ちやすいような隆起を持たせています。

 デジカメが全般的にグリップへの配慮が足りないという事実は、他の部分でも感じます。三洋電機の「DSC-MZ1」などは、別のところでも指摘しましたが、背面の液晶モニタの位置が悪いのです。右手でグリップした時、右手の親指が背面の液晶モニタ画面に掛かってしまうのです。同じような問題は他の一部機種でも見られます。こうした機種は非常に腹が立ちますね。

■「遊ぶカメラ」と「撮るカメラ」

   むろん、全てのデジカメに対して「高いグリップ・ホールド性」を求めているわけではありません。デジカメには多様なコンセプトがあった方が面白いし、グリップやホールドなどという点とは全く異なる部分に意味と価値を求めるデジカメの存在は歓迎すべきことです。カシオのリストカメラのような遊びのカメラがあってもよいし、小型・軽量・収納性だけを徹底追及したカメラがあってもむろん構いません。また、リコーのDCシリーズのように、最初からグリップ性を追求するカメラとは異なるコンセプトで商品化されたデジカメがあってもよいと考えています。
 しかし、少なくとも「写真を撮る」ことを目的としたデジカメであるなら、現在の製品種の中では、もう少し高い確率でグリップ性に配慮したカメラが存在してももよいのでは…と思ってしまいます。また、コンパクトなカメラほど、私はグリップが重要だと思います。小さいカメラは手ぶれしやすいし、落としやすいですから。また小さいカメラほど、片手でスナップを撮るケースがかなり多いからです。  デジカメにデザインが重要な点はよく理解できます。デザインが悪いデジカメなんて私だって買う気がしません。でも、デザインもよくしてなおかつグリップ性に配慮することは、それほど難しいことではないはずです。滑り止め素材も、うまく使えばデザインの一部になると思います。


※ なお、今回グリップの話を書くにあたっては「左利き」の方の存在についてあえて無視しました。むろん、理想的には左右どちらでグリップしてもホールドしやすく滑らないような対策が講じられることがベストです。


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