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「FinePix F402」は、常時携帯デジカメの新標準か?    2002/12/9

 SONY「DSC-U10」は、小型・軽量を極めたという点でエポックメイキングなデジカメでした。さらに200万画素化した「DSC-U20」が発売され、CASIO「Exilim」の200万画素機「EX-S2」と並んで、常時携帯デジカメの主役の地位を確立しつつあります。  しかし、マクロを常用する私にとって「Exilim」は選択肢に入らないし、サンプルで見る「DSC-U20」の画質レベルは既に所有している「U10」に加えてもう1台購入するほどの魅力はありません。「U10」と「U20」が同時発売されていれば「U20」を購入したかもしれませんが、200万画素化した「U20」の画質と3万円を超える実売価格は、「U10」との比較においてはさほどアドバンテージを感じません。
 そんな中で、「Exilim」「DSC-U10/20」の影に隠れた小型・軽量・単焦点モデルとして、富士写真フィルム「FinePix F402」の存在が気になっていました。


■小型・軽量デジカメの原点

 徹底した小型・軽量化を実現した単焦点のデジカメは、私が日常記録用デジカメの理想像と考えるものです。「FinePix F402」は、まさにそうしたデジカメです。
 「F402」のバッテリー・メディア込みの重量(撮影時質量)は145g、これは「DSC-U10」の撮影時質量の約120gと比較して、わずか20%増に過ぎません。片や、3倍ズーム機ながら小型軽量機として知られるMinolta「Dimage Xi」の撮影時質量は約160gに達します。「F402」には「U-10」や「EXILIM」ほどの携帯性はないとは言え、逆に言えば重量面で「F402」を凌駕するのはこの2機種だけなのです。こうしてみると「F402」の軽量ぶりは際立っています。
 「F402」を前面から見た形状はほぼ正方形で、これは富士写製品お得意の形状。沈胴式レンズを採用した全体的に突起のないデザインで、しかも厚みは22ミリに過ぎませんから、シャツの胸ポケットにも問題なく入ります。実際に、1日中ジャケットのポケットに入れっ放しで歩きましたが、ほとんど重さを感じないレベルでした。携帯性については文句なしです。電池・メディア込みで200g程度のコンパクト機種と較べて、「F402」など150g以下の機種の携帯性は次元が異なるものです。
 外観デザインはシンプルです。メタル外装の高い質感…と言いたいところですが、あまりにも金属的な光沢感が強く、スライドスイッチ部の青いLEDの「あざとさ」と相まって、個人的にはあまり好きなデザインではありません。感覚的には、女性ユーザーを意識し過ぎている雰囲気です。海外旅行時など、できるだけ目立たないようにさりげなく撮影したい私は、デジカメがキラキラと目立つことは避けたいのです。実用上の問題から言えば、せめて全体をつや消しにして欲しかった…というのが本音。

■過不足のない機能

 「F402」は、撮像素子に1/2.7型、原色フィルター、有効210万画素のスーパーCCDハニカムVを搭載、記録メディアにはxDピクチャーカードを採用しています。
 「F402」は小型・軽量機ながら、このクラスのデジカメが持つべき一般的な機能を、過不足なくフィーチャしています。「DSC-U10/20」との決定的な違いは、撮影条件をコントロールするためのマニュアル設定機能をある程度備えている点です。
 「F402」のマニュアルモードは、感度設定(最大ISO1600)、ホワイトバランス設定、露出補正が可能です。シャッターボタンを押したら後はカメラ任せに近い「DSC-U10」と比較して、ホワイトバランス設定と露出補正ができる点だけをとっても、「F402」には安心感があります。
 「F402」は、画質面でもアドバンテージを持ちます。スーパーCCDハニカムの描写には好き嫌いがあるようですが、非常に単純化した言い方をすれば、「同じ画素ピッチの200万画素CCDよりは高い描写力を持つ」と言っても誤解を招くことはないでしょう。事実、「F402」の解像度感も発色も、200万画素機の中では平均以上の水準にあります。
 感度が高い点も魅力の1つ。デフォルト設定はISO200となっており、ノンストロボの室内撮影でもマニュアル設定で増感する必要はほとんどありません。

■操作性

 突起が少ない「F402」は一見グリップしにくそうな形状ですが、スライドスイッチ部の光る突起と背面の突起に指をひっかけて右手でつまむと、意外にしっかりとグリップできます。この形状の小型・軽量機としては、まあまあのグリップ性を確保していると思います。
 フロントのスライドスイッチを引くことで電源ON、レンズシャッターが開いて沈胴式レンズが出てきます。これで撮影スタンバイOKです。スライドスイッチを戻せば自動的にレンズが引っ込みシャッターが閉まるので、片手で操作できる点はいいですね。
 動作も軽快です。スライドスイッチを入れてから沈胴式レンズが繰り出す時間があり、DSC-U10あたりと比較すると起動は遅く感じますが、それでも起動時間は2秒以下。「爆速」ではないものの、全くストレスは感じません。2Mモードでの撮影間隔も1秒台で、基本的には「撮りたいときにすぐ撮れるカメラ」と言ってもよく、全般的にキビキビとストレスなく動作します。約0.5秒間隔で2コマ…の連写機能も備えていますが、個人的にはあまり使うシチュエーションはありません。
 1.5インチのTFT液晶の視認性は、このクラスのデジカメとしては標準的なもの。マクロ撮影時のピント合わせにも、どうにか使えるレベルです。
 このサイズで光学ファインダーを備えている点は評価できます。バッテリー寿命を気にしながら撮影する時など、やっぱり光学ファインダーがある方が安心感があります。
 三脚取り付け用のネジ穴がありませんが、この手のカメラは手持ちスナップ撮影が基本なので、必要度は低いと思います。
 バッテリー寿命は申し分ありません。かなり小型のリチウムイオン電池にも関わらず、長持ちします。今回、ストロボをほとんど使わない昼間の撮影ですが、液晶モニタを利用して128MBのxDピクチャーカード1枚分、2Mモードで400枚近くをバッテリー交換無しで撮影できました。通常の使用では、予備電池無しで丸1日は十分に利用できます。
 高画質な割りに撮影画像のデータ量が少ないのも特徴の1つです。常用する2Mモード(1600×1200dot)では、1枚あたりのデータ量は約390Kbyteに過ぎません。64MBのxDピクチャーカードを使うと159枚、128MBのカードなら319枚も撮影できます。ちなみに、128MBなど大容量のカードを使っても書き込み速度に変化はありません。

■実写画像にみる画質

 マニュアルモードがあるとは言っても、基本はフルオート撮影です。
 画質は、200万画素機としてはほぼ不満のないものです。解像度感は、200万画素機としては標準以上です。でも「シャープな画像」という感覚とはニュアンスが異なり、「そこそこに締まった感じの絵」といったところ。
 発色は、銀塩ネガからのプリントを思わせる色乗りがよいもので、ある意味でかなり濃厚な色合いです。余談ですが、この発色をもって「富士らしい」と評価する向きも多いようですが、私は最近では「○○らしい」というほどメーカー毎の顕著な傾向はなくなったと思っています。メーカーによる発色傾向の違いなんかを気にするよりも、個別機種毎の個性に注目したいものです。
 いずれにしても、高めの解像度感と比較的濃厚な色合いを合わせて、「見栄えのよい鮮やかな画像」が撮影できるデジカメです。400万画素以上でレンズ径も大きい高級機の画質と比較すれば、それなりに欠点も目立つ画像ですが、そんな比較は無意味です。145gの超軽量を活かしてポケットに入れて持ち歩き、日常記録用途、旅の画像記録用途などに使う限りでは十分過ぎるほどの画質…と、言い切っておきます。
 ダイナミックレンジは予想外に広く、特にシャドー部はかなり持ちこたえます。一見して暗部が黒くツブれるような明暗差の大きい画像を撮影しても、後からレタッチでトーンカーブを補正してやれば、かなりまともな画像を得られます。
 光学レンズは口径が小さい割りに収差はありません。これはF値で無理をしていない点がかえってよかったのかもしれません。
 いったんマニュアルモードにしなければ露出補正ができないので、その点は面倒です。外光条件を気にする人は、常時マニュアルモードで使う…という手もあります。私はオートモードを常用していますが、その代わりAEロックを使います。シャッターボタン半押しでAE/AFロックが出来るので、けっこう便利に使っています。
 いずれにしてもフルオート撮影における適正露出、AWBのヒット率、AFの精度等はかなり高く、「適当にシャッターを押しても失敗写真が少ないデジカメ」と評価できます。

  ※クリックするとオリジナル画像が表示されます。
    (いずれも1600×1200モードでオート撮影、夜景もマクロも手持ちでノンストロボ)


■マクロ撮影と高感度撮影

 「F402」のマクロ撮影と高感度撮影は優れたもので、日常ユースでは極めて実用的な機能として、この手のコンパクトデジカメとしては賞賛に値するものです。
 まずデフォルト設定のISO200でも、ノンストロボの室内撮影や夜景撮影を無難にこなせます。ここら辺は、ISO50または100を標準にした一般的なコンパクトデジカメとの大きな差があります。確かによく見るとノイズはありますが、一般ユーザーが気にするようなレベルではありません。
 マニュアル設定で感度をISO800またはISO1600まで上げると、街灯の明かりぐらいしかない場所で、手持ちで夜景撮影ができます。ISO800以上の画質はザラツキがひどいものになりますが、撮れないよりははるかにマシです。海外旅行時など、ストロボを発光させたくないシチュエーションでは重宝すると思います。

 最短6センチから撮影可能なマクロも優秀です。かなりシャープであるだけでなく、高感度な点が幸いして、屋内の多くの場面でノンストロボで撮影できます。レストランや居酒屋などで食べ物を撮影することが多い私には、ありがたい機能です。
 マクロ撮影時のストロボ光量が、比較的よく制御されているのも特筆すべき点です。さすがに最短撮影距離に近いところでは厳しいですが、30センチ程度の距離ならばストロボをを発光しても極端な白飛びはしません。
 オークション出品用の画像などを撮影するには、非常に適したデジカメだと思います。

■個人的評価

 「EXILIM」は固定焦点でマクロ無し、「DSC-U20」は小型・軽量とのトレードオフによる画質面・機能面での一定の妥協を余儀なくされる…という状況の中で、「F402」は「小型・軽量」という命題と「機能・画質」という命題を非常に高次元なところでバランスを取ったデジカメです。
 この「バランス」を考えると、「F402i」は「常時携帯デジカメの標準」になり得るだけの実力を十分に備えています。F3.2と暗めのレンズ、また光学レンズの口径が小さい点、ハニカムCCD固有のノイズなど、細かい点を気にするユーザーもいるかもしれませんが、高度な携帯性を持つ他の現行機種と較べれば、少なくともDSC-U10/20よりは高画質で多機能だし、Exlimに対してはマクロ機能面での大きなアドバンテージがあります。
 また、320×240dotで約60秒、160×120dotで約240秒、10フレーム/秒の音声付き動画(MotionJPEG)が撮影できますが、MPEG-4動画カメラを愛用する私は、こうした動画を使わないので特に評価はしません。
 ともかく、初めてデジカメを使う人、1台だけ所有する人でも、多用途で十分に実用的に使える点において、万人向けに仕上がっている製品と言えるでしょう。まあ昨今の風潮から見ると、ズームを搭載していないこと自体が、万人向けとは言えないかもしれませんが…
 販売価格も適正です。私はこのデジカメを3万円以下で購入しました。小型、軽量で画質もよく、バッテリー寿命が長い、しかも安価…となると、特に致命的な欠点が見つからない製品です。

 だからと言って、「手放しで絶賛する」というほどの、魅力がある製品ではありません。やはり「DSC-U10/20」や「Exilim」の方が、コンセプト面で尖がっている分だけ魅力的だし、これらの機種と比較すると逆に「F402i」の半端なコンセプトが意識されます。「機能を削ってもよいから、もっとコンパクトに…」「このサイズならもっと高度なマニュアル撮影機能を…」等々、不当な要求を言ってみたくなります(笑)
 また、個人的に苦言を呈したいのはデザインです。光沢感が強すぎる点、余計なことだと思わせるスライド部の青い発光など、個人的には好きではありません。さらに、スクエア・デザインも好みではなく、もう少し横長の方がよかったと感じます。
 さらに、ここまで薄型AFを採用するとなると沈胴式レンズの採用もやむを得ないでしょうが、レンズシャッターを含む可動式のギミックは、できれば使わない方がよかったと思います。こうした余計な可動部やギミックは、故障の原因となるだけでなくシンプルさを損ないます。この手の常用カメラは、シンプルであればあるほどよい…と考えています。最後に、F値もやはり2.8が欲しかったですし、35mmカメラ換算39mm相当の画角はもう少し広角寄りにして欲しかったというのが本音です。
 しかしながら、こうした苦言は全て個人的な好みの問題であり、現行の機能やデザインが多くのユーザーから支持されるのならばそれはそれで問題はないと思います。


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