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究極のスナップデジカメ、CASIO「EXILIM EX-S20」     2004/1/5

 初代「EXILIM EX-S1」から数えると4代目にあたるEXLIMです。単焦点、しかも固定焦点(パンフォーカス)のEXILIM初代機は、発売時に一世を風靡しました。しかし私は、デザインもコンセプトも好きではなかったので購入しませんでした。
 4代目になったところで、私には絶対必要なマクロが装備されたこと、そしてレンズにシャッターがついて裸で持ち歩けるようになったことで少し興味を持ちましたが、発売直後の購入にまでは至りませんでした。
 そんな私が今頃になって購入しようと思ったのは、店頭でレッドとイエローのカラーバリエーションを見たからです。従来のEXLIMはシルバー、ホワイトともに、「大人の使用を意識したカチッとしたイメージ」があって、それが何となく嫌いだったのです。ところがレッドとイエローのカラーバージョンは、非常にポップで楽しくスナップできそうな雰囲気です。しかも、手にとってみるとカラー塗装も質感があって悪くありません。発売後かなり経ったので実売価格も下がり、2万円程度です。そんなわけで今回、イエローカラーの「EX-S20」を購入しました。


■まずは感想…

 「EXILIM EX-S20」は、既に皆さんがご存知の通り、200万画素のパンフォーカスカメラです。同じ200万画素ながら、旧機種と較べてCCDが1/2.7インチに小型化されたことに不満を訴えるユーザーも多いようですが、私にはどうでもよいことです。むしろ、旧機種よりもさらに小型化されたことがうれしいですね。
 パンフォーカスのカメラには、まあ慣れているつもりです。メリットもデメリットも承知しています。私は銀塩カメラ時代に、例えばマニュアルコンパクトであるオリンパスの「XA」を「絞りF8、焦点距離3m」あたりに固定してスナップ用に使っていました。また、私の好きなオリンパスペンは、パンフォーカス専用機ながら、非常に優れた画質でした。
 「EX-S20」は、35ミリ換算で約37ミリ相当のレンズは、この手のカメラとしては標準的な画角です。しかし絞り値はF3.5固定ですから、パンフォーカスとは言ってもどうしても遠景描写は甘くなるでしょう。
 重さは本体のみで約78グラム、バッテリーやSDメモリーカードを含めても100グラム以下と、相変わらず小型軽量ぶりは際立っています。特徴的な名刺サイズの薄型デザインは、ジャケットのポケットに入れておいても全く邪魔になりません。背面の1.6インチTFTの液晶モニタは、明るさも十分でなかなか視認性がよいものです。
 そしてまずは使ってみての率直な感想ですが、まさに「爆速」です。電源ボタンを押した瞬間に撮影スタンバイ状態に入り、シャッターボタンに触れた(押したというよりは触れた)瞬間に撮影できる…この感覚は非常に新鮮なものです(レリーズタイムラグは0.01秒)。なんだかんだと言いながら最近はAF機ばかりを使っており、シャッター半押し状態に慣れているので、最初は半押ししたつもりでシャッターを切ってしまう…という失敗を何度かやってしまいました。
 ともかく「ポケットからサッと取り出し、電源を入れてパッと撮れる」…、この「爆速」である点に付いては、無条件で賛辞を述べておきます。とのかく気持ちよくスナップが撮れるデジカメです。
 記録メディアはSDメモリーカードで、10Mbyteの内蔵メモリも搭載しています。64MbyteのSDカードの場合、最高画質では53枚しか撮影できないのは不満です。最高画質で撮った画像は、1MB近いデータ量があることになります。圧縮率が低いのはわかりますが、「DSC-U30」があの高い圧縮率でそこそこの画質を実現しているのですから、後述する「EX-S20」の画質でこのデータ容量は大き過ぎる感じがします。

■意外に多機能

 スナップ用デジカメながら、機能はかなり豊富です。まず、露出補正は±2段まで1/3段ステップで変更できます。しかし、メニュー画面からの設定になるので、この手のスナップ用速写デジカメではほとんど使う場面がありません。せめてプラス1.5EVのボタンでも装備して欲しいところです。
 なお、左右キー、上下キーに機能を割りあてる「キーカスタマイズ機能」を使うと、左右キーに「EVシフト」を割り当てることができるので、露出補正に利用すると便利です。
 ISO感度は64から500まで4段階まで変更可能ですし、ホワイトバランスも標準的なプリセットメニュー以外にマニュアルホワイトバランス機能も備えています。いずれもメニュー画面から設定することになります(キーカスタマイズ機能を使うとホワイトバランス変更を左右キーまたは上下キーに割り当てることができます)。まあ、スナップ用カメラにマニュアルホワイトバランスが必要かどうかを考えると、個人的にはまず使わないでしょう。
 そしてカシオのデジカメにお馴染みの「ベストショット機能」も備えています。また、液晶画面へのリアルタイムヒストグラム表示機能を備えているのには驚きました。…というよりもこんなスナップ用カメラに必要な機能とも思えないので、愛嬌でしょう。  動画撮影機能も備えていますが、AVIだし、個人的にはまず使わないものです。あくまで緊急用でしょう。

■使用感と操作性

 全体的に見て、操作性は悪くありません。電源ボタンの位置もシャッターの位置や感触も、慣れれば問題なし。マクロへの切り替えも容易です。メニューボタンからの各種設定もわかりやすいもので、特にマニュアルを読まなくても素直に使えます。ただし、前述した露出補正だけでなく、ストロボのON/OFFまでがメニューに割り当てられているのは、大いなる不満です(キーカスタマイズ機能を使って上下キーに割り当てられますが、例えばホワイトバランス機能を割り当てると使えません)。これではせっかくの「爆速スナップデジカメ」が台無しです。
 さらに、使い勝手の面で不満があるのがクレードルです。ともかくクレードルを使わないと充電できないというのは最悪です。せっかくの小型カメラなのに、海外旅行などに携行するときには、かさ張るクレードルもいっしょに持っていかなくてはなりません。ACアダプターはかなり小型で240Vまでの海外対応なのですから、せめてクレードルを使わずに本体に直接ACアダプターを接続できるようにして欲しいものです。また、個人的には画像転送にもクレードルは不要です。クレードルを使うたびにUSBポートに差し込むのは面倒だし、接続しっ放しにして数に限りがあるUSBポートを塞ぐのも嫌です。複数のデジカメを使っているユーザーには全く不要なものでしょう。このデジカメのコンセプトは「2台目用」…と考えるのは、私だけでしょうか。
 バッテリーの持続時間はEX-S2に比べて約2倍になった(連続で700枚以上撮影可能)とのことですが、購入してまだ200枚ほどしか撮影していないので、実際の持続時間はわかりません。ただ、フル充電して5日間で200枚を撮影した状態でも、電池マークは半分ほど残っていました。日常のスナップ撮影では予備電地を必要としない、十分な持続時間と言えます。
 SDメモリーカードスロットが底面にありますが、カバーがないという仕様は気に入りました。ただ挿し込むだけというのは面倒がないし、開閉部が壊れる心配がなくていいですね。

■画質は?

 年末からお正月の間に撮った実写画像を公開します(クリックするとオリジナル画像を表示)。
 歯切れの悪い言い方ですが、画質への評価は微妙です。「悪い」とは言えませんが「良くもない」と思います。なかなかシャープで発色もよいのいですが、「ちょっとタイトで、ぎすぎすした感じ」が残ります。青空部分などにノイズはありますが、このカメラの用途を考えれば、気になるほどではありません。PCのモニタで見る限り、SVGA程度にまで縮小した画像の方が実用的に使えそうです。また、2Lサイズへのプリントなら全く問題ないでしょう。
 冬の晴天下の明暗差が激しい場所での撮影が多かったのですが、明暗差のある被写体にもそこそこ強いことは確かです。だから「レンジ感がない」とは言えません。しかし、マルチパターン測光が採用されているとのことですが、露出は画面中の明るい場所に引っ張られる傾向にあります。全般的に日陰部分のトーンが沈み過ぎのような気がします。また、「明暗差をより強調して表現してしまう」といった感じもあります。晴天の屋外撮影では、なんとなくコントラストが強調された雰囲気の画像になります。さらに、冬の太陽と大気がもたらすブルー系の色温度も強調されます。むしろ、日陰で撮影した画像の方がナチュラルな発色でした。
 パンフォーカス機であり、遠景画像の解像度が低いのは当然です。画面中の文字などを読んで見るとわかるのですが、最も解像感が高いのが3〜5m前後の距離の被写体を撮影した時です。
 解像度、発色、レンジ感、ノイズ…などを総合して、「カメラの用途とリーズナブルな価格、優れた携帯性」を前提とすれば、合格点をあげられる画質です。同じ超小型機でも、比較的トーンを抑え気味の「DSC-U30」の撮影画像とは対照的な雰囲気の画質ですね。



■マクロ、室内撮影、夜景撮影

 EX-S20にはマクロモードがあり、撮影距離は約30センチ固定です。30センチというマクロ距離は、かつて愛用した銀塩コンパクトに多かったので、私は慣れています。例えば優れたAFコンパクトであったコニカ「ビッグミニ」は、最短撮影距離が30センチでした。だいたい目分量で30センチを測るのは、自信があります。とは言え、一般的には30cmの距離を測るのはそれほど容易ではなく、従ってマクロ撮影時にはかなりの確率でピントがボケた画像になることを覚悟しておいた方がよいでしょう。
 夜景画像は、けっこういけます。「EX-S20」は、晴天下・順光で撮影した画像にはさほど感銘を受けなかったのですが、室内撮影や夕景・夜間撮影の画質は、予想よりもよい結果でした。

 まずはストロボ撮影です。ガイドナンバーが小さいのでちょっと離れた場所には光が回りませんが、人肌の色などなかなかよく撮れていると思います(ハルピン水餃子の金さんです)。


 次いで、マクロを2枚続けます。1枚目が屋外、2枚目が屋内です。ホワイトバランスをオートのままで撮った居酒屋でのマクロ画像は、意外とよい画質でした。


 かなり暗くなってから手持ちで撮った夜景(夕景)の画像です。ベストショット機能は使っていません。2枚目の自販機の画像などは雰囲気が出ています。


■総論

 起動は瞬時、シャッターのタイムラグもないので、ともかく気持ちよくスナップ撮影ができます。薄くて小さいイエローのボディとあいまって、「愛すべきスナップ用デジカメ」というのが結論です。画質はこんなものでしょう。ホワイトバランスはちょっと不安定な感じがしますが、屋内外を問わずたいていのシチュエーションで、「シャッターを押すだけ」でそこそこきれいな画像が得られます。30cm固定のマクロも予想外に実用的に使え、日常用途には十分です。ともかく「即写が命」のスナップデジカメだと考えれば、たいていの欠点には目をつぶれます。なんたって、実売価格が2万円程度のデジカメですから…
 そしてこれはまったく個人的な意見ですが、レッドかイエローのボディを購入しましょう。ポップな雰囲気が、画質や機能に対する多少の不満を和らげてくれるでしょう(笑)
 この「EX-S20」、しばらくは愛用の「DSC-U30」とともに毎日ポケットに入れて持ち歩くつもりです。


■追加情報

 2004年2月2日に「ファームウェア 1.01」が公開されました。1.01へのバージョンアップ後に撮影した画像のサンプルを挙げておきます。ホワイトバランスの精度アップが図られたとのことですから、昼間のオート撮影時の画質傾向に変化はありません。やはり、「青味」が強い画像になります。




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