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画質は悪く、使い勝手もダメ…  撮ってもEG

 リサイクルデジカメ「撮ってもEG(イージー)」の詳細インプレッションをお届けします。
 先に結論を書いておきますが、画質は事前の想像以上にひどく、プリント端末の利便性も悪く、ほとんど使いものにならないシロモノでした。明暗差がある被写体はまともに撮れず、ストロボも役に立ちません。
 緊急に写真を撮りたいときには、「写るんです」や「撮りっきりコニカ」などの使い捨てフィルムを買うべきです。


■操作性

 「撮ってもEG」には、電源スイッチとシャッターボタンしかありません。撮影にあたって、設定したり操作したりする部分はなにもありません。電源スイッチを入れて、被写体にカメラを向けてシャッターを押すだけです。
 そのシャッターボタンの感触は、よくありません。押したのかどうかよくわからないので、いちいち背面の液晶表示で撮影可能が減ったことを確認する必要があります。最初の頃は何度も、同じショットを2枚撮ってしまいました。スライド式の電源スイッチは固く、感触はよくありません。背面の液晶表示部(撮影画像モニタではありません)で、残り撮影枚数が減ったことを確認できます。シャッターを切ると、すぐに電源がOFFになります。
 さらに大きな問題は、ファインダーの視野率が低いことです。具体的な数字は不明ですが、70〜80%程度でしょう。ファインダーから覗くと、非常に狭い範囲しか見えません。レンズの画角も問題がありそうです。概ね45ミリ(35ミリ換算)を超えるあたりだと思います。この手のカメラにしては焦点距離が長すぎるように思います。風景を撮影しようと思うと、非常に狭い範囲しか写りません。個人的には35ミリぐらいが使いやすいのですが、せめてWS30 SLIMと同じ40ミリ程度にして欲しいですね。

■画質は?

 プリントされた写真をイメージスキャナ(Canon N640P)で取り込みましたので、画質を確認してください。あまり高い解像度でスキャンしても仕方がないので400dpiで取り込みました。特に補正はしていません。
 はっきり言って画質は非常に悪いですね。解像度が低いのはよいとしても、特に問題なのはラチチュード(ダイナミックレンジ)の狭さです。ほぼ確実に明るいところは白飛びし、暗いところはツブれます。
 まずはサンプル写真をご覧下さい。これは晴天の日中(午前11時頃)に、近所の公園で撮影したものです。直射日光が当たっているビルの壁面は真っ白に飛んでしまっています。これって、一般の人がよく観光地などでカメラを使うシチュエーションのはずですが、晴天の屋外で直射日光が当たっている明るい色の建物や看板、洋服などは概ね白飛びしてしまい、まともに撮れません。

 次のサンプルは屋内撮影です。かなり光を通す薄いブラインドが閉まった窓を背景にした、軽い逆光状態です。人物の周囲にある紙の書類や液晶モニタのフレーム、パソコンのキーボード、そして窓のブラインドなどの明るい色の部分は、やはり完全に白飛びしています。逆に左上に写っている黒い部分はテレビなのですが、完全に黒くつぶれています。
 階調表現も全くダメで、単一色の絵の具を塗ったようなのっぺりとした感じです。人物の顔や服の質感などは全く表現されていません。

 お断りしておきますが、わざわざ写りの悪い画像を選んだわけではありません。もっとひどい画像もたくさんありました。CMOSを使った30万画素のデジカメの基本的な性能はこの程度…と言ってしまってはそれまでですが、それにしても事前の予想よりも悪いものでした。

●レンズ付きフィルムとの比較

 「写るんです」や「撮りっきりコニカ」などのレンズ付きフィルムの方が、比較にならないほどきれいな写真が撮れます。撮影画象を見れば一目りょう然です。
 まずはラチチュードが勝負になりません。レンズ付きフィルムは、はるかにラチチュード広く、逆光などの悪条件下でもそこそこの画像が撮れます。「撮ってもEG」は直射日光下の明るい屋外というだけで、順光の条件でもまともな写真はなかなか撮れません。逆光での撮影なんてもってのほかです。
 階調表現の差も非常に大きいです。「撮ってもEG」のプリントを見ると、白飛びや黒つぶれしていない部分でものっぺりしていて、ほとんど階調を表現していません。レンズ付きフィルムは、もっときちんと質感を表現します。
 もともとレンズ付きフィルムの画像は、条件がよければ200万画素のデジカメよりもよい写真が撮れるのです。「撮ってもEG」のひどい画像と比較する方が間違っています。
 CMOSを使ったVGAデジカメを使って楽しいのは、ある意味で「プリントしない」からなのです。枚数を気にせずにバンバン撮影して、パソコン上の画像としていろいろと遊べるからです。撮影枚数が24枚に限定され、しかもプリントするのなら、30〜35万画素のデジカメを使う意味なんか全くありません。

●デジカメとの比較

 「撮ってもEG」の画像を、同じCMOS30万画素の「WS30 SLIM」の画像と比較してみます。…とは言っても、一方はデジタル画像、一方はプリントなので厳密な比較はできません。WS30 SLIMの画像をプリントしてみようとも思いましたが、「撮ってもEG」の方は印画紙に近い用紙に出力する昇華型熱転写プリンタで、WS30 SLIMの画像を同じ条件のプリンタでは出力できません。従って、片や画像、片やプリントという変則的な比較となります。
 明るい部分の白飛び、暗い部分のつぶれ、さらには近距離のストロボ発光による真っ白な画像…こうした点は、WS30などのCMOS採用30〜35万画素機と全く同じ傾向です。あえて比較すると、明るい被写体に対する画像の破綻はWS30よりも大きく、しかも階調表現もWS30と同等かそれ以下ですね。
 さらに、WS30ならばマクロもあるし、ストロボをOFFにもできます。近距離の被写体をきれいに撮れます。その意味では、「撮ってもEG」はWS30よりも圧倒的に使い勝手が悪いカメラです。
 はっきり明示しておきますが、私はCMOSを使ったVGAデジカメの画質を肯定的に見ているものです。トイデジカメは、「画質は悪いがそこそこ遊べる」と思っています。だから、ここで「撮ってもEG」の画質が悪いと言っているのは、メガピクセル以上のデジカメと比較して言っているのではありません。30万画素機としても決してよくはないし、ましてや一般の人が「簡単にそこそこよい写真を撮る」という視点から見ても、ひど過ぎると言っているのです。

●ストロボ

 ほとんど役に立たないストロボです。夜間に2m程度の距離で使えば、うまく撮れることもありますが、このストロボできれいな写真を撮ろうとは考えない方がよいと思います。
 まず、第一に昼間でもちょっと暗い屋外や屋内撮影ではすぐに発光します。光量調節機能がないので、屋内で50〜60cmの距離にある近い被写体に対して必ずフル発光してしまい、その結果は真っ白の画像が撮れるだけです。
 サンプル画像をご覧下さい。これは約50cmの距離でパソコンのマザーボードを撮影したものです。かなり明るい室内でしたが、ストロボが強制発光して、その結果は「真っ白」な画像になりました。プリント端末で暗く補正しても写っていませんでした。ひどいものです。ストロボがOFFにできないこのカメラでは、光量不足の場所での近距離撮影はできません。


 夜間の屋外撮影でも、うまく撮れることは稀です。光量不足のために、夜間2m以上はなれた被写体に対しては全く光が回りません。逆に70〜80p離れた人物の顔をアップにしようとすると、真っ白に写ります。明る過ぎるか、暗過ぎるか、どっちかの画像しか撮れないのです。

 こんなストロボなら、ない方がはるかにマシです。ともかく、ちょっと光量が足りない場所での近距離撮影が出来ないのには閉口しました。
 最近では、「写ルンです スペシャルEye800 Flash40」のように、光量調節可能なストロボを搭載したレンズ付きフィルムがある時代です。
 初心者でも撮れることを目指すカメラなら、このストロボはひど過ぎます。

■即時プリントの利便性は?

 撮り終わったので、購入した「ヤマザキ・デイリーストア 西池袋店」に持っていきました。
 まず店員に撮影済みの「撮ってもEG」を渡すと、マイナスドライバーでボディ横にあるプラスチックのツメを折って、そこにUSBケーブルをつなぎます。コネクタの形状は、通常のUSBとはちょっと違うようです。あとは液晶モニタを持つ専用プリント端末の前に立って、画像が読み出されるのを少し待ちます。

  

 画像が読み出されると、端末の液晶画面には全画像のサムネイルが表示されます。ここで、プリントするカットと捨てるカットを選択します。24枚までのプリントは、購入料金に入っています。24枚を超える焼き増しは1枚50円です。だから、失敗画像は捨てて、よい画像を数枚プリント指定するなどして、合計で24枚に収めればいいのです。



 サムネイル上の画像を選択して「拡大」ボタンを押すと、画面いっぱいに表示されます。そこで、画像の補正ができます。RGBの各色ごとに補正できるのですが、画面のメニューはわかりやすいものではありませんでした。

 今回、おおざっぱな時間を測ってみましたが、店員の準備に数分、読み出しから画像チェック、数枚の補正に要した時間が約10分、24枚のプリントアウトに約7分と、合計で20分程度かかりました。



 補正が終われば、あとはプリントボタンを押すだけで印刷がスタートします。印画紙タイプの用紙にサービスサイズの画像が全部で24枚プリントされてきます。最後にサムネイルが印刷されます。

■結論は…「魅力なし」

 結論ははっきりしています。「撮ってもEG」は購入すべきではありません。もし、カメラがない場所で緊急に撮影する必要があるのなら、「写るんです」などのレンズ付きフィルムを購入しましょう。
 現時点で、こんな画質が悪く使い勝手も悪いデジカメを、「レンタル」という形で普及させる意味があるのでしょうか?
 たしかにコンビニの数は多く、地方も含めて全国津々浦々で24時間営業をしています。仮に全コンビニの1/3〜半分にまでこのカメラとプリンタが置かれたら、利便性は高いような気もします。でも、まず第一に、そこまで普及するのはかなり先でしょう。現時点ではDPEショップの普及も侮れません。私のオフィスのある池袋では、オフィスから駅までの10分間の距離に、「写真屋さん45」やら「フジカラー」やらDPE専門店が4軒あり、その上、駅前のビックカメラと「カメラのきむら」、さらに普通の写真屋が2軒あるのですから、DPEができるところは合計8軒あります。同じ距離の間にコンビニも5〜6件ありますが、DPE屋の方が多いですね。  第一、コンビニにはどこでもレンズ付きフィルムを売っていますし、DPEも受け付けています。


 「デジカメだからその場ですぐにプリントできる」というのも微妙な話です。私は撮影済みの「撮ってもEG」をコンビニに持ち込んで、店員にカメラを接続してもらい、端末を操作して全画像のサムネイルを表示させ、24枚の画像を1枚1枚拡大して画像を確認し、数枚に補正を施し、その上で全部をプリントアウトするまでに、20分以上の時間を要しました。丁寧に個別画像を確認し、さらに10枚以上の画像補正を行ったら、30分以上はかかるでしょう。
 もしこのカメラが普及したら、誰かが前にプリント端末を使っている間、ずっと待っていなければなりません。そうなるとDPEの方が早いでしょう。
 それに較べて、このコンビニから歩いて5分以内のところににある2ヶ所のDPEショップでは、1軒は45分、もう1軒は最短30分で仕上がるDPEを受注しています。
 こうなると、デジカメである「撮ってもEG」の「その場でプリントできる」というアドバンテージは、ごくわずかなものです。

 さて、コンビニの数とDPEショップの数の比較、そしてDPEとのプリントまでに要する時間の比較をすると、将来的には「撮ってもEG」に多少のアドバンテージがあるかもしれません。
 しかしこのささやかなアドバンテージに対して、「レンズ付きフィルム」との画質面での差はあまりにも大き過ぎます。現状では、「撮ってもEG」でまともな画像が撮れる確率は非常に低い。私は、あまり失敗したくない画像を「撮ってもEG」で撮影する気はしません。

 メディア持ち込みの形で、せめて画像データを落とせれば、パソコンユーザにはメリットがあるでしょう。でもそれでは、この「撮ってもEG」の想定ターゲットユーザーの使い方とは違いますし、ビジネスモデルとしても合わなくなります。
 ただ、プリント端末で「RGB補正」ができるのには、笑っちゃいました。それもすごくわかりにくいメニューなんです。「撮ってもEG」の想定ユーザー層は、こんな補正を簡単にできるのでしょうか? 「ちょっと明るく」とか「ちょっと暗く」といった感じのメニューにすべきでしょうね。このあたりがターゲットを絞り切れていないし、ビジネスモデルとして完成されていない部分だと思います。

■ビジネスモデルとしても問題が…

 「撮ってもEG」は値段も高いと思います。24枚のプリント料金を入れて1,980円。銀塩タイプの「写るんです」の24枚撮りを購入して安いDPE屋でプリントするよりは高いですね。
 さらに最近では、1万円前後で「スマートメディア付きデジカメ」が購入できます。パソコンを持っていないユーザをターゲットとするデジカメビジネスを行うのなら、こうした安価なデジカメを対象に、スマートメディアを持っていくとプリントできる端末だけを各コンビニに設置してくれる方がずっと便利です。実際にこうした汎用プリント端末は、オフィスの近所のファミレス(ジョナサン)に設置してあります。

 以上が「撮ってもEG」の撮影・プリント体験でした。画質の悪さと使い勝手の悪さ、さらにコストパフォーマンスの低さ、そしてビジネスモデルとしての完成度の低さなどを強く感じました。はっきり言って、2度と使うことはないでしょう。
 パソコンもデジカメも知らないユーザーが「レンズ付きフィルム代わりに使う」ことを目的とするデジカメのレンタルシステムなら、もっと誰でも簡単によい画像が撮影でき(せめてレンズ付きフィルム並みに…)、しかももっと使いやすいプリントシステムを用意すべきでしょう。

 それにしても、あまり画素数にこだわらない渋いコンセプトのデジカメを作る三洋電機と旭光学が手掛けて、この程度のデジカメとは情けない感じがします。
 「誰でもどんな条件でもそこそこ撮れる」という「レンズ付きフィルムのようなデジカメ」に必要な仕様面の条件を、もう一度見直した方がよいと思います。画素数が問題なのではありません。例えば同じ35万画素でも、ダイナミックレンジが広くノンストロボでそこそこ撮れるeggyのような性格のカメラの方が使いやすいはずです。このままじゃ、画素数を130万にしても同じでしょう。MPXのようなレンジ感がないザラ付いた画質の130万画素機なら、CCDの35〜80万画素の方がマシだと思います。
 あとはストロボを考え直してください。光量調節機能を付けるか、さもなくば発光タイミングをもっと暗くして下さい。  またビジネスモデルとしても、もう少し考え直した方がよいと思います。デジカメをリサイクル利用することから「循環型社会への対応」とか「エコロジー」などと謳っているようですが、個人でデジカメを所有することと比較して、どこがエコロジーなのかよくわかりません。また、あえてカメラの利用回数が少ないユーザーへの対応を考えるのなら、普通のデジカメをレンタルすればよいだけだと思いますが…。
 まあ、今回の発売は試験的なものだそうですから、今後の改善に期待しましょう。





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