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D-snap(SV-AV10)の評価    2002/2/3

 D-snapは、非常に評価の難しい製品です。パソコンユーザーが、パソコン上でMPEG-4動画を編集してネットで利用することを前提に購入を考えるとすれば、パッケージングにも機能にも問題はあります。あまりお勧めできないと言ってもよいでしょう。
 反面、友人や仲間内で気軽に動画を撮って楽しむことが目的なら、非常に面白いツールになる可能性があります。要するにD-snapを「デジカメ」の枠で考えるかどうか…という問題です。各種機能の優劣や動画・静止画の画質だけでこの製品の価値を判断するのでは、面白みがありません。
 いずれにしても、この「コンパクトさ」や「スタイリッシュなデザイン」にどこまで魅力を感じるか…が、評価の分かれ目になるでしょう。


■製品コンセプトの確認

 メーカーが打ち出しているD-snapのコンセプトは「SDマルチカメラ」…、言ってみれば「全く新しいハンディビデオカメラ」的なものであって、「パソコンとリンクしてネット上で動画を楽しむMPEG-4動画デジカメ」ではないのです。松下電器はおそらく、パソコンユーザーをターゲットにしてこの商品を投入したわけではありません。「若い世代を中心とする一般の人」に、小型動画カメラ兼動画ビュアーを持ち歩く新しいライフスタイルを提言しているわけです。
 こうしたメーカーの企図を考えてみると、D-snapにパソコンとのインタフェースも添付ソフトもなく、逆にハードウェアエンコーダとAV入力端子は装備している…という製品コンセプトがよく理解できます。
 それゆえに、パソコンと連携して使うためには、オプション機器を買い揃えなければなりません。デジカメユーザーが、「動画デジカメ」の一種と考えて購入すると、機能やパッケージングには納得できないでしょう。

■操作性

 あまりにも小さいカメラですから、操作性が良いとは言えません。ボタンが少ないため、基本的には全ての操作・設定をメニュー画面から行う必要があります。これは、ある意味で非常に面倒です。
 ただ、比較的機能がシンプルなので、慣れれば操作は苦にならなくなります。
 むしろ、電源投入後に即撮影スタンバイに入れない点が大きな問題です。せっかくコンパクトなカメラなのですから、ポケットから出したらすぐに撮影したいわけで、最初に撮影モードを選択するのではなく、電源OFF直前の状態を記憶してスタンバイ状態に入ってくれると、非常に使いやすくなるはずです。

■機能と価格のバランス

 D-snapの実売価格はいまのところ4万円前後ですが、パソコンやネットで動画を楽しむためには、新たに大容量SDカード、SDカードリーダー、動画編集ソフトなどを揃える必要があります。こうなると2万円近い追加出費を強いられます。さらに、使い方によっては予備バッテリーも必須で、さらに高いものにつきます。実質的には6〜7万円になるかもしれません。
 D-snapがこれだけの出費に見合った機能を持つかどうかということにですが、個人的にはそこまで出費する価値は見出せません。というのも、パソコンと連携してデジカメ的に使うのであれば、VN-EZ5あたりの方が使いやすい感じはします。また、パソコンとは無関係の「小型ビデオカメラ」として利用するのなら、高性能のDVカメラが7〜8万円で買えるのです。どちらと比較しても、D-snapの機能は少し中途半端です。

■静止画撮影機能

 静止画デジカメとしての機能・画質には、期待してはいけません。はっきり言って、トイデジカメ並みの画質です。それどころか、同じVGAのトイデジカメの中でも、画質は悪い方でしょう。
 しかも、タル型の収差はかなりひどいものです。周辺部は完全に歪みます。これは、ちょっと他のデジカメでは経験したことのないものです。私が撮影した個体だけの問題という可能性もありますが、これが市販品の全てに共通の現象ならば、ほとんど使いものにならないような静止画です。
 また、ストロボも当てにしない方がいいですね。3m以上の距離は光が届かず、1m以下は白飛びします。1〜1.5mあたりの距離の人物を撮影する時ぐらいしか使えません。
 デジカメとしての静止画撮影機能は、まぁ「オマケ」程度に考えておいた方がよさそうです。

■動画撮影機能

 動画デジカメとしては非常に面白いものです。ともかく、このサイズでMPEG-4動画が記録できる…という点だけでも、高く評価したいと思います。
 ただし、使い勝手や機能面だけで比較すると、eggyよりも性能は下かもしれません。特にCMOSを採用しているせいで最低撮影照度が高く、暗い場所での撮影が難しい点は致命的です。昼間か、明るい室内しか撮影できないと思ってください。ちょっと暗めの居酒屋やバーなどでは使えません。例え撮影可能な照度でも、暗い場所での画像はノイジーです。

■動画記録機能

 MPEG-4リアルタイムエンコーディングによる動画記録機能については、申し分ありません。当サイトの各所で述べているように、現在アナログ動画像(NTSCビデオ信号)から直接MPEG-4動画に変換しながら記録できるレコーダーは、「VN-EZ5」と「CE-VR1」しかないのです。同じ動画カメラである「VN-EZ5」と比較すると、D-snapはタイマー予約機能がついている分、使いやすいと言えます。
 さらに、D-snapは「携帯用動画ビュアー」としても非常に優れています。ともかく図抜けた携帯性を持っていることは確かです。ただし、オーディオプレヤーとしての利用も含めて、こうした「携帯型コンテンツ再生機器」として使うには、バッテリー持続時間に難がある点を指摘しておきます。

■個人的評価

 「優れた動画カメラ」とは評価できません。画質も機能も操作性も不満だらけです。特に撮像素子も含む光学系は、よくないと思います。しかし、「面白い動画カメラ」とは評価できます。このサイズとデザインは魅力です。
 例えば「海外旅行にD-snapを持っていくか?」と問われたら、私は持っていきません。画質も悪いし、バッテリーの持ちが悪い点も気になります。やはり、eggyかVN-EZ5を持っていきます。両製品ともに、D-snapよりも暗い場所での動画撮影に強く、静止画の画質がよいので、使いまわしが効きます。
 でも、デートやパーティに持っていくならD-snapでしょう。カッコいいですから。実際にD-snapを見た知人の女性(eggyも所有)は、「かわいい! 欲しい!」と言っていました。

 この「小さくてカッコいい」という部分に、5〜6万円(本体実売価格4万円+各種オプションや大容量SDカード等)を出せるかどうか…それは、個人の判断によると思います。


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