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デジカメの動画機能を考える      2002/3/25

 今回、購入したばかりの「DSC-MZ1」で、何点かの動画クリップを撮影してみました。バッテリーの消耗が早いという欠点はあるものの、非常に高品質の動画クリップを撮影することが可能です。
 同じように動画を撮影可能なデジカメにシャープのインターネットビューカム「VN-EZ5」があります。この2機種は、「動画も撮影できるデジカメ」としては対照的な製品です。
DSC-MZIは、静止画の画質と各種静止画撮影機能面ではVN-EZ5を圧倒的に凌駕しています。動画に関しても、"画質"だけをとればDSC-MZ1の圧勝でしょう。
では、「動画も撮影できるデジカメ」としてVN-EZ5はDSC-MZ1よりも機能が低いのか…というと、私は必ずしもそうとは思っていません。それは、DSC-MZ1で撮影可能な動画がQuickTime Movie(AVI)であり、VN-EZ5はMPEG-4動画が撮影できるからです。
 DSC-MZ1で撮影した動画を見ながら、「デジカメで高品質の動画が撮影できる」ということの意味をあらためて考えてしまいました。
 というわけで、今回は「動画も撮れるデジカメ」の存在価値について、少し考察してみようと思います。



■動画撮影の目的
 よくあるシチュエーションで、海外旅行先で動画を撮影したい…というケースを想定してみます。例えば、私は先般の海外旅行で200点ほどの動画を撮影しました。短い作品で15秒程度、長い作品は2〜5分程度までです。5日間で合計2.5時間分ほどの動画クリップを撮影しました。また、静止画は300枚ほど撮影しました。
 こうした用途で使うケースでは、DSC-MZIは適したカメラとは言えません。1日あたりの動画撮影時間が30分〜1時間になると、CFカードでの撮影は不可能に近い部分があります。128MBのCFカードを数枚持って歩くのは現実的ではなく、MicroDriveを利用することになります。すると今度はバッテリーの問題が生じます。DSC-MZ1は、それでなくとも比較的バッテリー寿命が短いカメラです。MicroDriveを使うとさらにバッテリー寿命は短くなります。1日街を歩くために、スペアのニッケル水素電池をたくさん持っていかなければならないでしょう。なんとなく面倒です。
 同じシチューエーションでVN-EZ5ならば、128MBのスマメを入れておけば、60分以上の動画と100枚以上の静止画が撮影できます。バッテリーもフル充電したリチウムイオン電池1本で、ほぼ1日まかなうことが可能です。予備のリチウムを1本持っていけばさらに確実です。この場合、動画も静止画もDSC-MZ1よりもかなり画質が落ちますが、かと言って、旅の記録用途に全く役立たないレベルではありません。目的さえはっきりしていれば、必要にして十分な画質レベルは確保しています。

 次に、撮影した動画ををどうするか…という目的の問題があります。私は、自分自身の記録用にも動画を撮影しますが、Webサイトで公開することも目的としています。この場合、DSC-MZ1で撮影した320×240dot、15fps以上のQuickTime Movieは事実上Webサイトで公開することができません。また、ホームページでの公開を目的とする場合、QuickTime MovieはWindows Media Playerで再生できないというのも不利な点です。

■データサイズ

 ここで、動画のデータ量を考えてみましょう。DSC-MZ1で撮影するQuickTime Movieの場合、320×240dot、15fpsの10秒の動画で、約3MBの容量となります。これはVN-EZ5で320×240dotのFINEモードで撮影したMPEG-4動画よりも滑らかでかなり見栄えのする動画です。ただし128MBのCFカードを使っても、この画質では7〜8分しか撮影できません。
 さらにDSC-MZ1は、VGA(640×480dot)、15fpsのVHSビデオ並みの動画が撮影できますが、この場合64MBのCFカードなら1分半、128MBのCFカードでも3分弱しか撮影できません。
 結局のところ、長時間の動画を撮影するためには絶対にMicroDriveが必要です。1GBのMicroDriveを使えばVGA(640×480dot)、15fpsの動画を24分撮影することが可能ですが、後述するようにこれだけのコストをかければDVを購入できるのです。
 また「VHSビデオ並み」とは言っても、TV出力に十分に耐える動画かどうかという点では、判断が微妙です。DSC-MZ1で撮影した動画を実際に大画面TVに出力して見てみたところ、かなりアラが目立つ画像でした。レンタルビデオでおなじみのVHSのNTSC動画ほどの滑らかさはありません。
 現実的には、こうした「中途半端な高品質動画」をどのような場面で何のために使うのか…と考えてしまいます。
 DSC-MZ1の動画機能は、128MBのCFカードを使ってもVHSよりは品質の落ちる画像を数分しか撮影できない…と考えるのか、MPEG-4よりもはるかに優れた画像を10分近く撮影できる…と考えるかによって、価値は変わってきます。
 逆にVN-EZ5やeggyの場合には、判断の基準が明快です。DSC-MZ1で撮影するQuickTime Movieより品質は悪いが、PC上ではそこそこに楽しめる動画を、ビデオカメラ並みの長時間撮影できる…のです。要するに、MPEG-4記録ならば、純粋な「動画カメラ」となり得るのです。

 さて、私は現在下り1.6MBのADSLを使っていますが、この程度のブロードバンド環境を前提としてもホームページで公開する動画は5MB以下のサイズが限界だと考えています。ストリーミング再生なら、データ量よりもビットレートが問題ですね。それにしても、MPEG-4ならばQuickTime Movieの1/3程度のビットレートを実現できます。現在、まだまだISDNレベルの環境のユーザーが多い現状を考えれば、320×240dotという大画面のQuickTime Movie、しかもそれが30秒以上あったとすれば、到底Webサイトで公開できるデータ量ではありません。結局、QuickTime MovieをWebサイトで公開するならば、160×120dotの10fps程度のものにならざるを得ないでしょう。そうなると、DSC-MZ1にフィーチャされている動画機能は中途半端にオーバースペックです。

■小型化、低価格化が進むDVの位置付け

 比較が難しい問題ですが、DSC-MZ1+MicroDriveの価格合計は約8万円です。昨今、7〜8万円出せば安価なDVカメラが購入可能な状況を考えれば、高品質の動画を長時間撮影したい場合、私はDVを選択するでしょう。
 デジカメがDV並みの高品質動画撮影機能を持つことは、基本的に賛成です。というよりも、デジカメのオマケの動画機能が高画質化することに反対する理由はありません。しかし、現時点で動画撮影のためにDVではなくデジカメを使うアドバンテージが、DVよりも小型・軽量である点、高品質の静止画撮影と兼用できる点にあるとしても、現在のDSC-MZ1の動画は安価なDVの画像よりもかなり品質が落ちる上に、撮影時間が短かくて中途半端過ぎます。ならば、いっそのこと「低品質ではあるがDV動画とは別の目的で使える動画が長時間撮れる」方が、使い途があります。
 DSC-MZ1の動画機能は、静止画デジカメのオマケとして撮れる動画機能と考えれば格段に優れていますが、動画メインでは到底使えません。
 反面、VN-EZ5の動画は、最初からDVの動画とは比較対象になりません。TVで再生するなどもってのほかです。しかしMPEG-4動画は、データ容量が圧倒的に小さく、そのままWebでのストリーミングが可能です。編集、保存などのハンドリングも簡単です。画質はDVよりもはるかに落ちますが、DV画像では絶対に不可能な「そのままストリーミング用にWebにアップ」することが可能です。そんな便利な動画を、DV並みの長時間撮影することができるとすれば、これはやはり画期的といわざるを得ません。

■DSC-MZ1の動画機能は本当に優れているのか?

 あくまで高品質の静止画撮影がメインで、本当にごくたまに動画を撮影するというシチュエーションならば、DSC-MZ1の動画機能は非常に有効です。でも、その「たまに撮る動画」の撮影時間やバッテリーの問題を気にするのであれば、VN-EZ5の方が使えるような気がします。
 DSC-MZ1を「動画カメラ」として評価する人はたくさんいるようです。でも私は、動画カメラとしては非常に半端で評価できません。記録時間の面からも、バッテリー寿命の面からも、納得できる機能ではありません。MPEG-4と比較しての画質面のアドバンテージは、実際の利用を前庭に考えるとあまり役に立つものではありません。動画撮影カメラを購入するのなら、MPEG-4フォーマットで撮影可能なVN-EZ5の方があらゆるシチュエーションで有用です。

 さて、DSC-MZ1の動画機能を以上のように評価した上で、なおかつDSC-MZ1は非常に魅力的なカメラです。それはやはり、静止画撮影カメラとしての機能の部分です。スチルカメラとしてのDSC-MZ1は、ここ数年で最も魅力あるカメラの1つです。私は、DSC-MZ1をあくまで「小型軽量の高画質スチルカメラ」として評価します。


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