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ひと月50冊の本を読む方法     2003/9/10

 文芸評論家で大学助教授の福田和也氏が、「ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法」と言う本を上梓しています。内容は知りませんし、福田和也という評論家に興味がないので今後も読む気はありません。
 私も読書好きですが、毎日仕事が多忙なために、さすがに1ヶ月に100冊の本は読めません。過去1年間の平均となると、だいたい1ヶ月に単行本を40〜50冊のペースで読んでいます(雑誌や技術資料を除く)。そんなわけで、福田和也氏に習うわけではありませんが、私も「ひと月50冊の本を読む方法」を書いてみたいと思います。いたって個人的な手法で、万人向けの読書法ではないことを、あらかじめお断りしておきます。
 まあ、文芸評論家、大学助教授などという職業は、ある意味で本を読むことが仕事です。だから、例え多忙ではあっても昼夜を問わず日常生活の中で時間を見つけて読書をすることが可能です。しかし、多忙なビジネスマンは、さすがに会社で仕事中に本を読むことができません。私も同じです。自営業ではありますが、オフィスにいる朝10時から夜8時頃までの間は、お昼休みを除いて読書はできません。こうした私の読書法は、もしかすると多忙なあなたには多読実行の参考になるかもしれません。でも、たいていの人には、単なるバカ話に過ぎないとは思いますが…


■速読は絶対的な解決法ではない

 さて、書籍をたくさん読むためには、たくさん時間を遣う…と言う点が、多読実行のための大きなネックとなります。限られた時間でたくさんの書籍を読むためには「速読を身に付ける以外の方法ない」との結論に至る人も多いかもしれません。確かに、速読は多読のための大きな武器になります。本を読むというのは、かなり高度な「視覚作業」です(こちらを参照)。しかし、こうした視覚作業は「慣れ」によってある程度習熟度合いが高まります。要するに、ある程度の情報処理能力(アタマ)さえあれば、大量に本を読んでいるうちに一定レベルまでの速読術は自然に身に付くものです。
 さて私もかなり速読できる方だと思いますが、本稿で書こうとしている多読法は、速読技術に重点を置いた話ではありません。多読のためには、読書時間を作る…以外に様々なポイントがあります。一言でいうと「面白い本を効率よく読む」ということです。ここでは、多忙な人がたくさん本を読むための方法を、書いてみるつもりです。ただし、内容は至って個人的な読書術であり、万人に実行可能であるかどうかはわかりません。また「面白くない本を勉強のために読む」というケースでは、あまり役に立つ方法ではありません。

■書籍購入に惜しみなくお金を遣う

 書籍をたくさん読むためには、書籍を購入しなければなりません。購入するにはお金がかかります。文庫本だって、最近は平均800〜1000円近くします。文庫本だけを月に50冊購入しても、4〜5万円は必要です。加えて時々ハードカバーを購入し、さらに雑誌も購入するとなると、月に最低でも7〜8万円の書籍代が必要です。
 書籍代を節約するために、図書館で借りるとか古本屋で購入する…というのは、選択肢に入りません。まず図書館は、暇がある人じゃないと行けません。また新刊書が遅い、文庫本がほとんどない…などの点で、「面白そうな本を見つけたらすぐ買う」…という購買行動には全く向きません。古書店もほぼ同様の理由で×です。結局、多忙なビジネスマン生活をしながら、「面白そうな本を片っ端から読む」ためには、新刊書中心に書店で購入する以外に方法がありません。それには、お金がかかるのです。
 よい給料をもらっているビジネスマンでも、月に7〜8万円なんてお金はとても出せない…という方もおられるかもしれません。でもそういうあなたは、もしかすると住宅ローンなんかを払っていませんか? 子供が2人いて、授業料の高い私立学校に通わせていませんか? 毎晩仕事の帰りに飲み屋で一杯やっていませんか? 全部やめましょう。人生は、何かにお金を遣えば、代わって何かをあきらめなければならないのです。私のように借家生活・預貯金ゼロで、書籍にお金を注ぎ込みましょう。
 もし、持ち家にも、子供の教育にも十分なお金を遣い、なおかつたくさんの本を読みたいのなら、もっと働いて稼ぎましょう。

■毎日書店に立ち寄る

 本をたくさん読むためには、「面白い本」を読まなければなりません。「我慢して読む」とか「勉強のために読む」というスタンスでは、本を多読することは不可能になります。そして面白い本を読むためには、面白い本を探さなければなりません。そのためには、高い頻度で書店を訪れる必要があります。まずは、「行きつけの書店」を作ることです。毎日立ち寄る書店ならば、書籍の配列やらジャンル別の書棚の位置などがわかっています、新刊書も素早く探すことができます。
 とは言っても、多忙な毎日の中で書店回りに時間を割くのは大変です。私の場合、通勤途中のターミナル駅の構内にある2軒の小型書店が、もっとも高い頻度で文庫本の新刊書と雑誌を購入する場所となっています。この2軒の書店のどちらかには、ほとんど毎日朝夕の2回は訪れます。だいたい5分ほどです。ハードカバーや専門書を見る場合は、オフィス近くの「芳林堂」という大型書店が行きつけです。ここは夜10時まで営業していますから、週に数回オフィスからの帰りに訪れます。
 その他、仕事で都内各所を回っている時でも、駅構内または駅周辺の大型書店に、かなり頻繁に立ち寄ります。ともかく「ちょっとでも時間があれば書店に立ち寄る」という習慣を身に付けることです。

■まとめて購入する

 面白そうな本があれば、1冊ずつではなく数冊まとめて購入しましょう。その時点で読みたい本ではなくても、いずれ読みたくなりそうな本なら、前もって買っておきましょう。仕事が多忙な時など、いつも書店に立ち寄れるとは限りません。そんな時、オフィスや自宅に、まだ読んでいない本のストックが大量にあれば安心です。私は、未読本のストックが常に数十冊はある状態を維持し続けています。
 また、本は購入した順に読んでいく必要はありません。次々と新刊書が出る中、面白そうな本から読んでいけばいいだけです。

■面白さそうな本を探し出す嗅覚を身につける

 ともかく本は、ジャンルを問わず内容が面白くなければ読む気がしません。
 読み慣れた作家の新刊書以外で、「読んで面白い本」を見つけるには、一種の「嗅覚」が必要です。私は他人の書いた「書評」をほとんど読みませんし、ベストセラー書も無視します。タイトル、帯、後書きの立ち読み、書店の店頭でパラパラとめくった内容…などから、素早く面白そうな本を探し出すには、年季が必要です。すれからしの読み手である私ですら、3冊に1冊は失敗します。  こればかりは、かなりの金額の無駄な出費という痛い目にあって身に付けるものかもしれません。

■通勤時間を含む交通機関に乗っている時間を活用

 これはもう、当然のことです。私は、朝夕30分ほど(電車に乗っているのは20分強)の通勤時間ですが、この往復時間は貴重な読書の時間です。合計40分ほどの時間で、ちょっとしたミステリーや新書なら読了することが可能です。さらに私は、週に数回は、打ち合わせなどの目的で都内中心に外出します。これまた貴重な読書時間であり、電車や地下鉄に往復1時間も乗れば、やはり1冊読了することが可能です。
 遠距離出張となると、もう読書三昧です。新幹線で大阪まで往復すれば、片道3時間弱の時間で難しい本を1冊、軽い文庫本なら2〜3冊は読むことができます。出張帰りの新幹線で缶ビールを飲みながらミステリーを読む…、これは至福のひと時です。

■ながら族…に徹する

 TVを見ながら、音楽を聴きながら…本を読みましょう。むろん、面白い映画やドラマを見ながら読書するのは無理です。しかし、民放TVで放映する映画やドラマなら、CMの時間があります。2時間の放映枠の映画には、合計すると15分以上のCM放映枠があります。その時間を有効に活用しましょう。
 野球中継なんかは、最初から最後まで真剣に見る必要はありません。贔屓のチームが守備側に回ったときや、だらだらと試合が続く時には、すかさず読みかけの本の続きを読みましょう。ともかく、ちょっとした時間を見つけて、本を読むのです。

■つまらないものは読まない、途中でもやめる

 タイトルを見て面白いと思って買った本、後書きを立ち読みして面白いと思って買った本、いつもの作家の新刊なので絶対面白いと思って買った本…、こうした本を読み出しても、何となく興が乗らないことがあります。半分ほど読んだところで、先が読めてしまうこともあります。
 こうした場合には、あっさりと放り出しましょう。1冊の本を終わりまで読む…ことにこだわる必要はありません。例え冒頭から10ページしか読んでいなくても、あと30ページで読み終わるところまで来ていようと、ともかく「つまらん」と思った瞬間に、読むのをやめることをお勧めします。人生は短い。しかし、読まなければならない面白い本は、きっと何百万、何千万冊も残っています。仕事の合間の貴重な時間を割いて本を読むのです。つまらない本を無理して読んで、時間を無駄にすることはありません。高いお金を出して購入して読み出した本を、「いつでもやめる勇気」を持ちましょう。

■結末を先に読む

 途中まで読んで、どうしても面白くないと思ったら、そこで投げるのが一番です。が、しかし…、もしかすると最後に劇的な結末が待っているかもしれません。そんな時には、ミステリーだろうが冒険小説だろうが、思い切って結末を読んじゃいましょう。結末を読むことで、途中で投げた本のストーリーの概略もわかるし、もしかすると意外に面白い結末で、いったん投げた部分から読み出す気力が沸いてくるかもしれません。
 気が短くなった私は、最近ではミステリーや小説の結末を先に読むことが非常に増えました。それはそれで、構わないと思っています。本当に面白い本はそんな読み方をしないし、結末を先に読む本はしょせんはその程度の本…と割り切ればよいのですから…

■同時に何冊も平行して読む

 1冊を読み終わるまで次の本は読まない…と決め付けることはりません。ある本を読んでいる途中でも、もっと面白そうな本を購入したら、そちらの方から先に読みましょう。
 私なんかは、毎月順次刊行される本で楽しみにしている本が出た時など、その時に読んでいる本を途中でやめても、そちらの本を読むことがよくあります。読み終わったら、また、前の読みかけの本を読了すればいいのです。
 だいたい3冊ぐらいまでなら、同時並行で読むことが可能なはずです。別に、内容がゴッチャになったりはしません。

■瞬時に意味がわからない部分は飛ばす

 これは一つ間違うと誤解を受けそうな話です。だって、意味がわからない部分を飛ばして読んだら、本全体の内容を理解できないではないか…という反論を受けそうです。
 確かに、ウィトゲンシュタインやチョムスキー、ソシュールなんて著者が書いた本を読むとなれば、じっくりと読まなければその内容は理解できないかもしれません。しかし、段落レベルでの文意・文脈をある程度掴んだ上で、1つ2つの単語や短いパラグラフの意味が瞬時にわからなかったからと言って、そこにこだわっていたら、先に進むのが遅くなります。学術論文を書くために読んでいるのでなければ、「いつでもやめる勇気」と同時に「適当に飛ばす勇気」が必要だと思います。

■本は捨てない、売らない

 読み終わった本はむろん、途中で読むのをやめた本があっても、捨ててはいけません。読み終わった本の中にはもう一度読みたくなる本があるかもしれないし、途中で読むのをやめた本でも、何かの拍子にもう一度続きを読みたくなるかもしれません。本は、処分しないでひたすら溜め込む…これが正しい愛書家のとるべき道です。
 むろん、本を溜め込むには場所が必要です。都会においては、保管場所の確保にはお金が必要です。これもまた、読書ライフにどうしても必要なコストと考えて、あきらめましょう。

■身の回りを本で埋め尽くす

 自宅はもとより、オフィスでも、その他の立ち寄り先でも、本で埋め尽くすことが大切です。一般的なサラリーマンが会社に大量の本を保管するわけにはいかないと思いますが、それでも机の引き出しの2つぐらいは本で埋めておきましょう。机の上にも文庫本数十冊ぐらいなら、積み上げ置けるはずです。
 自宅はもう、本で埋め尽くすのみです。収容力のある使いやすい書棚を活用すれば、8畳間ぐらいの部屋の壁の2面を天井まで本で埋めることで、文庫本なら3〜5千冊ぐらいはストックできるはずです。また、リビングなど自分がいつも座る場所の周囲にも、大量の本を置いておきましょう。もし、同居の家族から苦情が出たら…、そんな家族とは別れましょう。
 こうして身辺を本で埋め尽くすことで、読書量は必然的に増えるはずです。

■出来る限り小型の本を読む

 私が趣味で読む本の70%以上は、文庫または新書サイズの本です。ハードカバーを読む割合は、全体の20〜30%に過ぎません。理由は簡単です。お金の問題ではなく、小さくて軽い本ならいつも数冊をカバンに入れて持ち歩けるからです。カバンを持たずに歩く時でも、文庫本ならポケットに入ります。最近は、文庫や新書の種類が急激に増えました。ハードカバーが文庫化されるまでの期間も短くなりました。また、学術書の文庫化も進んでいます。文庫本だけを読んでいても、十分に読書対象は広いと思います。
 ともかく大量の本を読むためには、常時数冊の本を携帯していることが必要です。電車の中などで1冊読み終えた時には、すかさず次の本を読み始めなければなりません。また、電車で吊革に掴まって立って読んでいる時など、大きくて重いハードカバーは読みにくいですね。移動中に快適に読書をするためには、小さめの本がいいのです。

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