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Kodak「DC3800」購入記   2001/4/9

 久しぶりにちょっと考えてデジカメを選びました。ここ数年は半年に1台くらいのペースでデジカメを購入してきましたが、いつもあまり考えずに「欲しい!」と思った機種をパッと購入してきました。今回は、めずらしくちょっと悩みました。それは、私自身が非常にお気に入りの日常記録用デジカメ「FinePix1500」の代わりになる機種を探そうと思ったからです。何をどう考えてデジカメを購入したのか…個人的な経緯と、実際に購入したデジカメ「DC3800」のインプレッションを書きます。


■機能や解像度なんてクソ食らえ
 日常持って歩くデジカメとしてのVGA機(WS30等)の面白さは、「低機能カメラゆえの面白さ」だと思います。つまり、「限られた機能を工夫して使い切る」「低解像度、低いラチチュードのカメラでよい写真を撮る」ことの楽しみです。
 また、ここまでデジカメの高機能化、高解像度が進む中、あえてVGA解像度のカメラで得る画像について考えることは、大げさに言えば「写真の本質」を問いかけてくれます。だって、写真が「現実に存在するモノや風景をそのまま写し撮る」ものだとすれば、解像度が低い画像は「写るべき視覚情報が欠落しており、見たそのままを写し撮っていない」ことになります。つまり、見えているものが写っていないわけです。
 でも、写真を撮る目的が「子供の生き生きとした表情」であったり「ある場所の雰囲気」であったりする場合、細部の視覚情報が欠落していても写真を撮る目的が十分に達せられることもあります。銀塩フィルムで撮るポートレート写真などがよい例です。中望遠レンズなどを使って被写体の顔だけにフォーカスを当て背景をボカす…これってポートレートの常套手段です。背景をボカすことで、余計な視覚情報を整理することで、見せたいものをより浮かび上がらせるわけです。つまり、写真というものは、画像情報の量が多ければ多いほどよい…わけではありません。人間の目も、視野内の何かを注視するときには、注視している対象以外の周囲のものは見ていません。
 …ということで、解像度や機能の充実度で選択するのではなく、「いつも持ち歩いて撮りたいものをパッと撮れる」ことを第一に機種を考えることにしました。

■デジカメ選択の経緯
 例えばWS30は、日常持ち歩いてすごく面白いカメラです。でもWS30では、どうやっても撮れない画像も多い。もう少し「簡単によい写真を撮る」「情報量の多い画像を得る」ことを目的とする場合、やはり解像度が高くダイナミックレンジが広いデジカメも必要です。典型的な使い方が、国内外の旅行時の記録撮影。見知らぬ場所や文化の記録としての画像を撮る場合には、後で見た時に、より多くの情報が写っていて欲しいと思います。遠くのビルの看板の文字も、読めた方が楽しいわけです。
 でも、だからといって大きくて重いカメラは問題外。手持ちのデジカメで言えば、いくら画質がよいと言っても「FinePix4900z」などを持って歩く気にはなりません。場所によってはカメラを持っていることがわからない方がいいし、そのためにはポケット入る大きさでなくてはなりません。バッテリーの持ちがよいこと(できれば汎用電池が使えること)、面倒な手順なしにすぐに撮影スタンバイ状態に入れること…も大事な条件です。そしてこれは重要なことなのですが、「単焦点」であること。ズームは不要です。大きくなるのもイヤだし、カメラを構えた状態でズーミングについて考えたくないのです。
 こうした海外旅行記録用途、日常記録用途に、私は最初はFUJI「DS-10」を使い、次にSANYO「DSC-X100」を、次いでここ2年間はFUJI「FinePix1500」を使ってきました。しかし、ここへ来て何となく「FinePix1500」に代わる新しい日常記録デジカメが欲しくなったのです。そこで、選定に入りました。…なんて書くと、すごく真剣に考えたみたいですが、実は仕事をしながら30分ほど悩んだ程度です。

■選択結果
 で、小型、軽量、バッテリーの汎用性、一定レベルの解像度(150万画素以上)、一定レベルの画質、使いやすさ、単焦点…という基準でデジカメを選ぶことにしました。そこで最終候補に上がったのがFUJI「FinePix4500」とKODAK「DC3800」の2機種です(SANYO「DSC-SX560」と安くなったCASIO「XV-3」もちょっと考えましたが…)。
 サイズ・重量は、「FinePix4500」「DC3800」の2機種ともに甲乙つけがたい。バッテリーもどちらも単三型ニッケル水素2本で使えます。機能と画質は…、これは少なくとも解像度は「FinePix4500」の方が上でしょう。その上、設定項目が多く多機能です。「FinePix4500」はマクロもいいですし…。「DC3800」には露出補正すらありません。マクロもダメ。スタイルと外観、これは「DC3800」の方が好みです。画角、これは33ミリと広角の「DC3800」が断然魅力的です。
 結論は…、「DC3800」にしました。まず、FinePixは既に1500と4900zを持ってるし、なんか面白くないって感じがしたのです。次に「画角」の問題です。「DC3800」の広角寄りのレンズは魅力的です。そしてデザイン。どっちかって言うと「DC3800」の方が好きです。そんなわけで、今回は「DC3800」でいくことにしました。
 ちなみに、ここで「IXY」なんかは絶対に候補に挙がりません。ズーム付きはイヤだっていう以前に、私は「IXY」が嫌いですから…(笑)。



■DC3800ってこんなデジカメ
 「DC3800」というデジカメ、ある意味で最近のデジカメの中では「異端」かもしれません。広角系の単焦点機というだけでも珍しいのに、露出補正やホワイトバランスの設定すらついていない。要するに、シャッターを押して撮るだけ。ここまで割り切ったシンプルなデジカメは、かえって珍しい。ストロボ発光モードで停止と強制発光等が選べるくらいで、他の設定はなにもなし。メニュー画面から設定できることも少なく、画像サイズの設定やビープ音のON/OFFなど数項目だけ。なんてシンプルなカメラなんだろう…。
 200万画素デジカメにしては、パッケージングもシンプルそのもの。箱の中にはパソコン接続キットやら画像処理ソフトやら、余計なものは一切入っていない。薄いマニュアルとストラップ、ソフトケースが入っているだけです。
 この「ユーザーに媚びない」姿勢(?)は非常に気に入りました。

■液晶モニタ
 液晶モニタは画面が小さく、解像度や明るさも不満です。といっても、このカメラのコンセプトからすれば、液晶モニタの品質なんかどっちでもいいって感じです。私は、液晶モニタを見ながら撮影することはほとんどないですし、撮影画像確認のために再生することも非常に少ないですから。というわけで、この項目は特に評価点はありません。再生モードで分割サムネイルが出ないとか、そういったことは欠点には入らないと思っています。
 それと、背面の左寄りにある液晶モニタの位置はよいと思います。小さいカメラなのに、右手でグリップした時、液晶モニタに手がかかりません。

■操作性
 操作性については、基本的に不満はありません。第一、撮影するにあたって「操作」することがほとんどないですから(笑)。モードセレクト用のダイヤルボタンも使いやすいですし、液晶モニタ横のボタンで画面のON/PFFができるのも悪くありません。
 特に気に入ったのが、電源をOFFにしてもストロボ発光モードの設定を保持する点。これなら間違ってオートストロボが光ったりしません。
 シャッター半押しでAFとAEがロックされます。ということは、露出補正をしたい時には、画面上で好みの明るさの部分を探してそこでAEロックしてからシャッターを切ればよいわけですね。しかし実際に撮影してみると、測光は中央部重点測光とはいいながら、広い範囲の画面全体の平均値を取っているようで、AEロックもあまり効果がない場合が多い。当たり前ですが、完全な逆光には弱いです。これは、レタッチで補正するしかありません。うーん、難しいカメラだなあ(笑)

■起動時間/記録時間
 電源ON後のスタンバイにかかる時間も、画像の記録時間もはっきり言って遅いです。特に画像の記録時間がかかり過ぎ。連写機能を使うと標準画質になっちゃうし。これが最大の不満点。まあ、遅いとはいうものの「FinePix1500」とおなじくらいかも。まあこれでよしとしましょう。

■バッテリーの持続時間
 1600mAのニッケル水素電池(単三型2本)を使って、液晶OFFならば64MBのCFいっぱい(最高画質で100枚以上)の撮影が可能です。一日中撮影するのなら、予備のバッテリーを持っていく方がよいでしょう。ただし、アルカリ電池は持ちませんね。50カットぐらいが限界ですから、あくまで緊急用です。

■ホールディング
 「DC3800」はその大きさの割には、ホールドしやすい形状のカメラです。右手だけで構えても、手ぶれはしにくいとようです。ただし、カメラを顔から離してモニタ画面を見ながら撮影すると、手ブレする確率がうんと高まります。だから、液晶モニタを見て撮影する…ということがどうでもよくなるカメラです。ファイダーを覗いて撮影する方が、なんとなくしっくりくる。極論すると、「DC3800には液晶モニタは不要では…」とも思っています。
 だからこそ、ファインダーの視野率を上げて欲しかったと思います。「DC3800」のファインダー視野率は90%、これは適当に撮る分には問題はありませんが、厳密なフレーミングを必要とする写真では不満が残ります。また、一眼レフではないので、ファインダー内に近距離・マクロ時の補正枠を設けて欲しかったですね。

■ラチチュードが広い
 快晴の日中に、かなり明暗のある光景を撮影しても、暗部がつぶれたり明るい部分が白飛びしたりすることが少ないようです。逆光の黒くつぶれた画像でも、レタッチで確実に救えます。これは画素が大きいCCDを使っているせいもあるでしょうね。あと、200万画素のカメラにしてはノイズも少ない方だと思います。



 画面内に点光源が多い夕方の光景や夜景もけっこういけます(サンプル画像は手持ちなのでちょっとブレてますが)。夜景の撮影画像では、ある程度にじみやノイズはありますが、気にするほどのことはありません。ただ、シャッター速度の最低が1/2秒というのはちょっと不満。せめて1秒が欲しかったですね。



■画角
 35oカメラで33o相当の画角とのことですが、これは自然でいいなぁ。風景写真には最適に使い画角だと思います。また、人でも物でもアップで撮りたい時には、被写体にうんと接近して撮ると、けっこうパースが効いたメリハリのある絵作りができます。被写界深度があって、なおかつマクロがダメなので、背景をボカして整理した写真は絶対に撮れませんが…。でも、33oで撮るパースの効いた画像、これは今までの単焦点デジカメには無かった感覚ですね。この「画角」だけでも使う価値あり…です。



■画質
 実解像度はわかりませんが、最高解像度の画像でもそれほどシャープさを感じません。200万画素にしては解像度は低い感じ。ただ、メリハリはあります。階調もよく出ていると思います。
 発色はいいですね…、というか、やはりこれは好き嫌いがあるかなぁ。私はDC3800の発色でOKです。感覚としては銀塩フィルムのネガカラーの発色に近い感じです。まあ、噂どおりと言うか想像どおりのKodakの絵ですね。ただし、数年前に使ったKodak「DC210」あたりと比較すると、それほどこってりした色ノリでもない。うまく抑えてある感じもします。こんなもんでしょう。
 あと、ストロボ画像は悪くありません。思ったよりも自然な発色で、これは使えます。

  

■気になること
 実際に使ってみて、1つ大きな欠点に気が付きました。それは、付属のケースから出し入れするたびにケースにこすれて「モードダイヤル」が回ってしまうことです。通常撮影モードにしておいても、取り出した時にはマクロモードになっていたりします。取り出してパッっと撮影したい時など、なんとも厄介です。私は、撮影時にモードダイヤルの位置を確認する習慣がつきましたが、初めのうちは戸惑いました。
 モードダイヤルの位置はけっして使いにくいわけではないのですが、抵抗が少なく回りやすいことと、ケースのサイズが比較的ピッチリしているのが原因でしょう。もう少し抵抗かクリック感があるダイヤルだとよかったのですが…。
 あと、右手のグリップ部分に滑り止めがついているとよかったと思います。特にフロント部分にゴム状の滑り止めが欲しいところです。

■総合評価
 小さくて、ホールドしやすく、シンプルな機能…、それゆえに状況によっては意図どおりの写真を撮るためにはちょっとした工夫が必要。でも、とりあえずはシャッターを押すだけでそこそこきれいな写真が撮れる。「DC3800」は、そんなデジカメです。言ってみれば、「WS30の兄貴分」みたいなもの。最近の高機能デジカメとは、明らかに違います。
 私にとっては、サイズ、デザイン、重量、機能など、ほぼ理想に近いデジカメです。銀塩コンパクトカメラとほぼ同じ感覚で使えます。特に旅行に持っていくには最高です。
 わかって購入したとは言え、これでスタンバイ時間と記録時間がもう少し短くなれば…と、思わず愚痴が出てしまいそうですね。
 狙って作画したい人には、不向きです。パソコンの周辺機器として、いろいろなデジカメの機能を楽しみたいと考えている人にも不向きでしょう。でも、完全に初心者向けかと言えば、そうとも言い切れない。私は、それなりに個性のある面白いデジカメだと思いました。

 最後に、「DC3800」の購入価格は33,200円でした。発売後半年以上は経過しており、特に人気機種でもないのにあまり値下がりしませんね。でも、この値段なら妥当だと思います。

※ 2001年7月末現在、2万円台の半ばで購入できます。


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