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Nikon「COOLPIX7600」の私的レビュー   〜700万画素のコンパクトデジカメ入門機   2005/5/17

 ひょんなことから、Nikon「COOLPIX7600」を入手しました。「実売価格3万円の700万画素機」です。とりあえず、300枚ほど撮影してみましたので、インプレッションを書いておきます。


■700万画素の入門機!?

 Nikon「COOLPIX7600」は700万画素、光学3倍ズームのコンパクトデジカメ入門機です。画面内の人物の顔を自動的に検知しピントを合わせる世界初の「顔認識AF」、逆光や光量不足の際に暗く写った部分を明るく補正する「D-ライティング」機能を備えているのがセールスポイント。基本的にはCCDや光学系などは同じ入門機である「COOLPIX7900」と同等の機能を備えていますが、「7900」が備えている「ISO感度設定」や「階調補正」「AFエリア設定」など一部の設定機能を備えていないこと、そして「7900」が充電式のリチウムイオン電池を採用しているのに対して、「7600」は単三型電池2本の仕様となっている点、内臓メモリ(14MB)を供えていることなど、「7600」の方がさらに初心者向けという位置付けです。液晶モニタも一回り小さい1.8型です。

 いや、このCP7600はなんとも妙なコンセプトのデジカメです。機能面で見れば確かに入門機です。マニュアル機能どころか、絵作りの面でほとんど何も設定できないプログラムAEのみのフルオート機、しかも昨今のデジカメから見てISO感度も低い(最高で200、しかもオート)。にも関わらず、700万画素というCCDを搭載し、EDレンズを採用しているのです。カメラ・デジカメのマニアはむろん、少なくとも「デジカメ好き」「いろいろと楽しんでみたい」という人には、ほとんど魅力的な部分がありません。ただ「撮るだけ」のデジカメに700万画素が本当に必要なのか…という疑問が、当然沸いてきます。おそらくあまり売れないだろうと思われますし、今日現在でWeb上にもレビュー記事はまったくありません。誰も興味を持たないような、中途半端なコンセプトのデジカメだと思われてるんでしょうね。

■使用感

 この「COOLPIX7600」、実際に使ってみてさほど悪い印象はないのですが、先に「欠点」「悪口」を書きます。
 「完全なオート機」というコンセプトは結構、しかし、だからこそ露出補正がメニューからしから出来ないのは気になります。絞りは2段で制御されています。フルオート機なので別に細かい絞り設定は不要ですが、それにしてもF2.8、F4.8の2段階の絞りでは被写界深度などが気になります。
 暗所の撮影に弱いのも嫌ですね。取扱説明書を読むと、ISO感度は200までとなっています。しかも増感はカメラ任せ。「7900」の方は400までで設定も可能ですから、「7600」のISO200はちょっと厳しいですね。実際に暗所の撮影には弱いです。かなり手ブレすることを覚悟しなくちゃなりません。そうなると、夜景や室内撮影はストロボを活用する必要がありますが、ストロボのチャージ速度は遅いです。2400mAのニッケル水素電池を使っているのですが、チャージには5秒以上かかります。
 そして、ニコンのコンパクトデジカメに共通するグリップしやすい形状についてですが、グリップがよいのは確かですが、つい片手のホールドに頼ってしまいます。結局両手でしっかりと構えにくいので手ブレしちゃうんです。言いがかりみたいですが、ホントの話。
 そして、あまりにもチープな外装はいただけません。プラスチッキーな雰囲気でいっぱいです。デジカメに「モノ」としての存在感を求める人は、買うと後悔します。
 起動はまあまあ。起動時間が短い機種が増えた現在ではけっして速い方ではありませんが、起動時のロゴを消せば2秒程度で起動します。でも、もう少し速くなって欲しいことも確かです。
 広角側が38mm(35mm換算)からというのも寂しい。38mmでは"広角"とは言えません。ちょっと画角が広めの標準レンズです。
 各種単三電池が利用できるのはOK。前述した2400mAのニッケル水素電池2本で、200枚以上撮影できました。まあ、こんなものでしょう。
 ボタンの位置は使いやすいですね。ズームボタン、シャッター、十字キーなど、オーソドックスな配置で、いずれも右手でグリップした状態での片手操作が快適です。

■気になる機能

 なんと、741万画素(有効画素数710万)の1/1.8型原色CCDを搭載しています。記録画素数は最大3,072×2,304ピクセルに達します。個人的にも、コンパクト機では初めての700万画素体験です。
 EDレンズ1枚、非球面レンズ2枚を含む6群7枚の3倍ズームEDニッコールレンズ7.8〜23.4mm(35mm換算で38〜114mm)を搭載しています。F値はF2.8〜4.9。撮影距離は通常モードで30cmから、マクロモード時は広角端で約4cmからです。通常モードで30pから撮影できるとなると、日常のスナップではマクロはほとんど不要ですね。むろんマクロ撮影時は、被写体に相当に寄ることができます。
 入門機ですから記録フォーマットはJPEGだけ。FINEモードの圧縮率が約1/4圧縮、NORMALモードが約1/8圧縮とのことです。
 16種類のシーンモードを搭載しているのは、以前からのニコンのお家芸。私がよく使うのは夜景モードとBSS(ベストショット・セレクター)ぐらいかなぁ。BSSは、COOLPIX2500の時代から屋内撮影などで重宝してます。
 セールスポイントの顔認識AFは、アシスト機能付きシーンモードのポートレートの中から設定できますが、使うことはまずないし、別に興味がある機能ではないのでコメントしません。まあ、AFロックを使えば十分です。「D-ライティング」機能も個人的には不要な機能なので、コメントはしません。

■気になる画質

 画質は、思ったよりずっといいですね。まずは、コンパクトデジカメにしては気持ちがよいほどの高い解像度に感心します。これは確かに700万画素の解像度だと実感できます。EDレンズのおかげ…かもしれません。この解像度感を体験すると、「極小画素CCD」なんて批判はバカバカしくなります。明らかに500万画素機よりも解像度感が高く、しかもノイズも少ないシャープな絵。そして、サンプル画像を見て頂ければ判るとおり、収差がほとんどないことも特筆すべきでしょう。これもまたEDレンズのおかげかもしれません。ともかく、700万画素という高解像度CCDに対応する十分な特性を持った高性能の光学系が使われていると思います。こんな安価な入門用フルオート機でこれほどの画像が得られることには、かなり感心しました。
 発色についても、不満はありません。何を撮っても非常にナチュラルな色で、いわゆる「偽色」のようなものもほとんど出ません。ホワイトバランスもオート設定でよく働き、なおかつ午前中と午後の撮影時刻の違いによる空気感や色温度の違いも、きちっと表現してくれます。ノイズも少ない。昼間、一般的な被写体を撮影している範囲ではノイズはほとんどありません。ちなみに、夜景撮影モードでは自動的にノイズリダクションが働きます。
 マルチパターン測光もかなり正確なように思います。明暗の差がある被写体でも、特に考えずにシャッターを押せます。
 定評あるグリップも、それなりにいいことは確かです。片手だけに頼りがちなのでかえってブレる…という部分はあっても、慣れさえすれば問題はありません。要するに、明るい場所ではあまりグリップを気にせず気軽に撮って、ブレそうなシチュエーションでのみグリップに気を遣えばよいのですから。

 サンプル画像を掲載します。シーンモードは使わず、全ての画像は通常のオート撮影です。どれも最高画質の700万画素、圧縮率の低いFINEモードで撮影したもので、原画データそのままで、Exif情報も付いています。データ量がかなり大きいので、開くときにはご注意下さい。



遠方のビルの細部や看板の文字に注目

遠景の解像度はかなり高い

遠景の細かい描写はさすが

遠方のビルの壁面を緻密に解像

収差はあまり感じません

故意に直射日光を入れました
大きな破綻はありません

明暗の差が大きい被写体
左のエプロンの模様の解像に注目

明暗の差が大きい被写体
細かい文字も解像

手持ちの夜景
少し手ブレしてます

発色はいいですね

7p程度のマクロ撮影です

正体不明の揚げ物 in バンコク路上

遠くの果物の種類が識別できる

手持ちで1/12秒ならまぁまぁ…


■総評

 あらためて、「高解像度」はそれなりに「高画質」と同義だということを認識しました。
 入門機ゆえの数々の不満点はありますが、この700万画素機を日常のスナップに使えば、文句なしの高画質ショットが得られます。考えて見れば、700万画素CCDとEDレンズを入門機用として使うのも、悪くないかも知れません。私はプリンタで出力しませんが、モニタで見ている限り、大判への出力にも十分に耐えられるものと思います。
 さて、夜景と室内撮影に弱いのが、最大の欠陥かもしれません。富士写真フィルムの「F10」のような高感度デジカメや、手ブレ補正機能を搭載した松下電器のコンパクト機などは、やはり便利です。でも考えようによっては、晴天時のお散歩スナップカメラと割り切れば、「7600」で得られるスナップショットの画質には十分に満足するでしょう。
 もう1つ、広角側が38mmから…というのは大きな問題です。せめて広角側を35mmにして欲しかった。でもまあ、これも考えようによっては、かつて私が好きだったPENTAXのパンケーキレンズの40mmに類似した画角です。日常の視線をそのまま再現してくれる画角に近いとなれば、広角側固定でスナップに使うことに、そう大きな不満はありません。

 Nikon「COOLPIX7600」は、デジカメをいろいろ操作して楽しみたい…という人には向きません。作画派には、もってのほかです。でも、日常スナップの中で、被写体をより美しく撮りたい…というユーザならば、かなり満足できるかもしれません。
 この画質と操作性、私は結構気にいりました。


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