■ブルージュ(ブルッヘ)

 今日はブルッヘ行く。日本では、「ブルッヘ」というオランダ語表記よりも「ブルージュ」という呼称の方が馴染みがある。ブルージュはブリュッセルから北へ約120q、中央駅からICに乗ればわずか1時間と簡単に行ける。

 ちょっと早起きして朝の8時頃にホテルから徒歩で中央駅へ。30分ほどでブルージュ行きに乗れた。それにしても、鉄道の沿線の光景を車窓から眺めていると、ベルギーの田舎の風景はのどかだ。レンガ造り、石造りの農家が点在し、いたるところに牧場があって牛がのんびりと草を食んでいる。途中、ゲンクという駅を通過したが、これはワールドカップで活躍した鹿嶋アントラーズの鈴木隆行選手が移籍したチームがある町だ。駅から見える教会の尖塔が印象に残った。
 まだ10時前にブルージュの駅に到着し、駅構内にあるインフォメーションで地図を入手して(無料ではなく1ユーロだった)、歩き始める。目指すは、市庁舎のある中心部だが、市庁舎前の広場まで歩く間に、ブルージュの名所はだいたい回れそうだ。別に予定もなく、適当にのんびりと歩くつもりである。

ブルージュ行きの列車
   
車内の様子。結構混んでいました。

途中で通ったゲント駅
   
ブルージュ駅

ブルージュ駅構内
   
ブルージュ駅舎

ブルージュ駅前広場。何もないです。
   


 ブルージュは9世紀頃には都市の体裁ができたヨーロッパでも有数の古い街の1つである。運河で北海とつながり、12〜15世紀にかけてはハンザ同盟の中心的な都市としてギルドが力を持ち、毛織物の交易などで栄えた。全盛期に、ブルゴーニュ公国からハプスブルグ家へと支配者は移っている。堆積する土砂で運河が埋まり、船が出入りできなくなったので衰退したと言われているが、産業や交易の中心がアントワープへと移ったのが急激な衰退に繋がった…ということらしい。そんなわけで、中世の雰囲気をそのまま残す、運河の都として化石のように生き残ったわけである。ファン・アイクやメムリンクなどの作品がたくさん残っている町としても知られている。
 このブルージュは、「中世ヨーロッパのテーマパーク」という言葉がぴったりである。旧市街地全体が世界遺産になっており、世界中から観光客が押しかけてくるのである。

 駅前広場を歩き出して運河を渡ると、すぐに世界遺産に指定されているベギン会修道院(Begijnhof)がある。ブルージュのベギン会は13世紀に設立されたとのことだが、現在の建物は17世紀以降のものでベネディクト会女子修道院として利用されているとのこと。
 運河を渡って門をくぐると、木立の中に佇む白い建物が目に入ってくる。静謐なたたずまいが、よい雰囲気だ。建物の中には入れないので、入り口近くの小さなミュージアム(当時の部屋を再現)を見て、中心部へと向かう。

ベギン会修道院
   


 まもなく、ノートルダム教会(聖母教会)の塔が見えてきた。ここら辺になってくると、観光客だらけだ。道沿いには土産物屋が並び、さしづめ「京都の三年坂」に近い風情である。観光シーズンを少し外れた、秋の平日とは思えないほどの観光客の群れで、フランス語を話す団体客が多い。ブリュッセルの中心部もそうだが、日本人、中国人、韓国人以外の西欧人でガイドが引率する団体旅行客の群れをこんなにたくさん見たのは初めてだ。
 正直言って、興醒めである。

 聖母教会の122メートルの塔を見上げながら歩くと、すぐにグロート・マルクトに到着する。ここが市の中心となる広場で、西フランドル州庁舎とともに有名なギルドホールと鐘楼(Halle en Belfort)が威容を見せている。13世紀に建設されたもので、鐘楼は高さが83メートル。ちょうどカリヨン(4オクターブ47個の鐘)が音楽を奏でていたが、すごい音だ。
 マルクト広場は、青空マーケットで賑わっている。マーケットをひやかしながら広場に面したカフェでコーヒータイムだ。

ブルージュの街並
   
グロート・マルクト

グロート・マルクトに出ていた市場
   
植木市も


 カフェで一休みした後は、ブルグ広場(Burg)へ向かう。ここは、かつてのフランドル伯の館(ブルグ)があったところで、ゴシック様式の建物(市庁舎、古文書館、裁判所、聖血礼拝堂)に囲まれたこじんまりした広場だ。ここにはツーリストインフォメーションがあり、両替所やトイレも使える。

ブルグ広場(拡大)
   
聖母教会(拡大)


 さて、ブルグ広場からさらに適当な方向に歩き出す。運河に出たので、運河沿いの道を歩く。時々ベンチなどに座って町の雰囲気を楽しみながら、ゆっくりゆっくり歩く。
 運河は満員のお客を乗せた、たくさんの観光船が行き来している。魚市場(と言っても小さなものだが)を見物し、救世主大聖堂(St.-Salvatorkathedraal)へ向かう。聖堂の中を見学していたら正午の鐘が鳴り、昼休みということで追い出された。

市内を流れる運河
   
しょぼい魚市場


 朝が早かったので、そろそろお腹が空いてきた。昼食は、少し駅の方に戻り、ド・ハルヴ・マーン(ハーフ・ムーン:Huisbrouwerij De Halve Maan)醸造所に併設されたレストランで摂ることにした。ここでは、1856年から「ストラッフェ・ヘンドリック(Straffe Hendrik)」というビールを醸造しており、見学ツアーもできる。
 見学ツアーはパスして併設されたレストランに入ると、広くてなかなかよい雰囲気である。ハムの盛り合わせと出来たてのビール「ストラッフェ・ヘンドリック」を注文した。普通のビールとブロンズタイプの両方を飲んだがいずれも美味しい。食事も美味しく、お勧めのレストランである。

醸造所のシンボルマーク(拡大)
   
レストラン(拡大)


 …と、ここまででブルージュ観光は終わりである。のんびりと2〜3時間歩いただけだが、一通り市内を見物して「もう十分…」という感じだ。街の雰囲気は悪くないが、やはり観光客の多さと俗っぽさが面白くない。でも、生まれて初めてハンザ同盟の都市を訪問したことには、十分な感銘を受けた。美味しいビールも飲んだし…
 2時頃の列車でブルージュを後にし、午後も早い時間にブリュッセル南駅へと帰ってきた。

ハムの盛り合わせ
   
シーフードスパゲティ。量多すぎ。

ストラッフェ・ヘンドリックのブロンドタイプ
   


 この日も夕方までホテルでゆっくり休憩し、ネットに接続して少し仕事だ。陽が落ちてからは、街へとビールを飲みに出かける。
 今日はまず証券取引所の近くにあるビアカフェ、ル・シリオ(Le Cirio)へと向かう。名物ベルギー料理のシコンのグラタンを注文、メニューからまだ飲んでいないビールを物色して注文する。
 食べて飲んだ後は、グランプラス界隈をお散歩。いろいろなお店を覘いて回る。歩き疲れた頃に、ア・ラ・ベカス(A La Becasse)へと向かう。このア・ラ・ベカスは、ブリュッセル滞在中に何度も訪れたビアカフェだ。ここのランビックは、まさに絶品。陶器のボトルに入って出てくるが、シャンパンともワインともつかない、まろやかな味と香りで、すっかりファンになってしまった。
 それにしても、賑わっているのはイロ・サクレ地区など観光客が多いグランプラス界隈だけではない。夜、ホテル近くのSt CATHERINE大聖堂の近辺を歩いても、もうビアカフェやブラッセリーでたくさんの地元の人が飲んでいる。老いも若きも、女性も男性も、みんながビールを飲んでいるのだ。それも外のテラスで…。私は、こんなにたくさんの人が一日中ビールを飲んでいる国があるなんて、想像もできなかった。ベルギーは、ビール好きには天国だ。ホントにいい国である。

シコンのグラタン
   
ローストビーフサンドイッチ

St. Feuillien
   
Affligen


本日のビール
・Straffe Hendrikブロンド(Straffe Hendrik醸造所)
・Straffe Hendrikブラウン(Straffe Hendrik醸造所)
・St. Feuillien(ル・シリオ)
・Affligen(ル・シリオ)
・ランビック(ア・ラ・ベッカス)
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